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地球に帰らせていただきますっ! ~2~

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 叔父への報告
 
 
 
 地球への里帰り、となればその大半は実家に向かう。
 けれど御凪 真人(みなぎ・まこと)の場合は違った。
 セルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)との契約を機に、実家を飛び出すようにしてパラミタに渡った真人には、次期当主と言われていようが、実家に帰る気は更々ない。向かっているのは叔父、御凪真矢の家だ。
 パラミタでの事を話すという約束で、真人は真矢に生活費や学費の援助をしてもらっている。約束したからには報告をしに行くのが筋だろう。
 幸い、叔父は変わり者で通っている所為か、御凪家の人間の中では一番話しやすい相手だ。実家に行くような気の重さは無い。
 
 叔父の家を訪れると、すぐに良く来たなと中に通された。
 フィールドワークを中心としている叔父だから、家を留守にすることも多い。けれど、真人からの訪問の連絡を受け、予定を変更してこの年末年始はゆっくりと自宅で過ごすことにしたらしい。
 まずはとパラミタの様子を話して聞かせると、真矢は興味深く耳を傾けた。真矢は都内にある大学の教授をしているのだが、現在の研究対象はパラミタと地球文化の交流などについてだ。
 いくつか質問を差し挟み、真人からの話をメモに取ると、真矢はありがとうと礼を言った。
「いいえ、こちらこそ。この程度の事で援助していただけるのには、本当に感謝しています」
 素直に礼を返す真人を、真矢は面白そうな目で見る。
「随分丸くなったな。それに実家に居る時より良い顔をしている」
「そうですか?」
 真人自身には自覚はないが、昔から知っている叔父がそう言うのならそうなのだろうと真人は思う。
「ああ。相変わらずの堅苦しさとかは変わらないが、諦めて極端に冷めた昔の印象はなくなったな」
「実家に居る時は言われるままに行動すれば良いだけでしたが、パラミタでは自分で考え行動しなければいけません。しかしそこには、自らが選択するという自由があります。……決してあの家という籠の中では得ることはできませんでしたよ」
 諦めていたら、パラミタでは前には進めない。そして、指示をする人がいないからこそ、自分の足で進んでいける。
「それと、あのお嬢ちゃんの影響も、かな」
「お嬢ちゃん……そうですね、確かに俺に一番影響を与えたのはセルファでしょうね」
「もう恋人同士になったのかな?」
 思ってもみないことを言われ、真人は戸惑った。
「え? セルファとですか? 確かに気になる異性ではあると思いますけど、恋人にしたいかと言われるとどうでしょう……」
 もちろん大切な存在だし、セルファだって真人のことを気に入ってくれているのだろう。どきっとすることがないとは言わないけれど、それが恋愛感情なのかどうかと言われると、何か違う気がする。
「ほっとけない異性と言ったところだと思いますよ」
 その辺りが一番自分の感覚に近い、と真人が説明すると真矢は朗らかに笑った。
「今はそういう事にしておこうか」
「そういう事って……本当にそうなんですけれどね」
 本心からそう言って、真人は叔父への報告を終えたのだった。