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【ザナドゥ魔戦記】憑かれし者の末路(第2回/全2回)

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【ザナドゥ魔戦記】憑かれし者の末路(第2回/全2回)
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(3)集落入り口

「(凱旋……というわけでも無いようですね……)」
 目の端に見えた光景にリリィ・クロウ(りりぃ・くろう)はそう呟いた。…………いや、際には呟いてもいなければ見てもいない。何しろ彼女は、つい先刻に{bold死亡したのだから。
 だからこれは彼女の思念、無意識化の中での意識、しかし実際には何も覚えていないし何も感じていないし何も見えていない、だって彼女は死んでいるのだから。
 イコン『サタナキア』の拳撃を受けて圧死した後、リリィは悪魔兵によって肉体、つまり死体を回収された。その死体というのが……世にも惨い、そのままコネてハンバーグにされてしまうかのような、はたまた箸でツツかれ食べ散らかされた焼き魚のような。そんな状態であるので、今回は無意識化における有意識状態で語っていただく事としよう。
 集落外での戦、マルドゥーク率いる「カナン軍」が撤退した直後のこと。悪魔兵を引き連れた魔神 パイモン(まじん・ぱいもん)ペオルの集落内に入る所であった。ちなみにこの時、ミンチなリリィグリフォンの背で干されていた。
「お待ちしておりました、パイモン様」
 悪魔兵の一人が頭を下げて跪く。幾つか言葉を交わしているが、どうにも会話が聞き取れないが、動くことはままならないのでそのまま聞き耳を立てる事にした。まぁ実際には死亡している訳なので、立てる耳も無いのだが。
 悪魔兵は集落内の現状について報告をしているようだった。イコン『サタナキア』の強制起動と強制停止、魔鎧専用武器の幾つかを契約者たちに奪われた事などが報告されていた。
紫銀の魔鎧はどうなりました? バレませんでしたか?」
「それが……手筈通り幾つかは奪われる形で奴らの手に渡ったのですが……」
「えぇ、装着している者と手合わせました。しかし、わずか2名でした」
「はぁ。発見しても手を付けない者も居たようですし、去る時にも誰一人として持ち帰る者は居なかったようでして……」
「なるほど。意外と慎重なようですね」
 紫銀の魔鎧を装着したばっかりに、完全に我を忘れてた者がいる。発見された魔鎧の全てを契約者が装備していたのなら……混乱はこんなものでは済まなかったかもしれない。
「えっ…………奪われたままで良いのですか?」
「構いませんよ、そう簡単に添えるものでもありませんし。能力が上がると言っても、たかが知れています」
 集落に入りてからもしばらくの間リリィはこれまで聞いていた。しかしそれでも全く理解できなかった。そもそも彼女は『紫銀の魔鎧』の存在すら知らないのだ、理解できるはずがない。
 理解できない話を聞かされ続けると人はどうするか、
「(はっ!! カセイノの元に戻らないと……)」
 そう、「妄想の世界に逃げ込む」か、リリィのように「全く違う話題を自分自身に投げかける」である。
 死んでもこの定理の通りに行動したというのは驚きだ。彼女はパートナーであるカセイノ・リトルグレイ(かせいの・りとるぐれい)の元に帰ろうとした、無論彼女は死んでいるためそれは決して叶うことはない。
「それよりも研究の成果を聞かせて頂けますか? 『サタナキア』と『魔鎧専用武器』の開発はどこまで進んだのでしょう」
「はっ! 直ちに!!」
 両兵器は共に未完成なまま、とても戦場で使える状態ではない。しかしここにパイモン本人からの叱咤とプレッシャーが当てられたなら―――
 実装された両兵器と出会うのは次の戦場…………となるかもしれない。

担当マスターより

▼担当マスター

古戝 正規

▼マスターコメント

 
 おはようございます。ゲームマスターの古戝正規です。

 「【ザナドゥ魔戦記】憑かれし者の末路(第2回/全2回)」如何だったでしょうか。
 お楽しみ頂けたなら幸いです。

 まずは補足を。
 カナン軍撤退の際の『ジバルラ』と『サタナキア』周辺の描写はありませんが、契約者たちは全員無事に脱出できております。
 気を失ったままの『ジバルラ』を連れて、また保管庫内の『紫銀の魔鎧』には手をつけずに撤退しています。
 『サタナキア』は起動できない状態ですので、泣く泣く集落内に放置、といった状態です。
 「撤退時における(契約者の)死亡者は居ない」と解釈して頂ければと思います。

 とは言っても50名いたカナン兵のうち、生存帰還者は15名。マルドゥークも重傷を負いましたし、見事な敗戦になってしまいました。
 思っていた以上に『パイモンと戦う』や『悪魔兵と戦う』といったアクションが少なかった事には驚きましたが、考えてみれば『ジバルラ』や『サタナキア』、そして『魔鎧専用武器』など、今回は要素が盛りだくさんでしたので、それも当然かなと反省しております。
 私個人としては要素がたくさんあって楽しかったのですが、皆さんは如何だったでしょうか。

 『魔鎧専用武器』に関しましては、その一部を地上へ持ち帰る事に成功しています。
 リアクション内では「機晶技術を用いれば或いは〜」といった描写があるのですが、実際には「機晶技術」では完成しません。「機晶技術の応用」自体が出来ないからです。
 ただ検体はすでに手の中にありますので、解析、研究を行う事は可能です。
 次回のシナリオ内でそれを行うか、それともキャラクエでの放出になるかは未定ですが、今後の展開にもご期待下さい。

 さて、本シナリオの西カナン(北カナン)以外の地でも魔族との熱い戦いが繰り広げられています。
 【ザナドゥ魔戦記】シリーズもいよいよ佳境へと突入してゆくことでしょう。
 次の機会にもお会いできることを心より祈っております。