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忘新年会ライフ

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忘新年会ライフ

リアクション

(少し前……。)
 最大巨獣のイーグルの衝撃波をマトモに食らった絶影の中、唯斗が目を覚ますと、空を舞うイーグルと翔と美羽のイコンの姿が見えていた。
「く……エクス、無事か?」
 銀色の長い髪を垂らしてシートに倒れていたエクスが唯斗の呼びかけに目を覚ます。
「何とかな……」
「あの巨獣に……一泡吹かせに行くぞ。絶影は?」
 起き上がったエクスがコンソールを操作する。
「無事だ。思った以上にダメージはない……猛禽類の分際でわらわ達を吹き飛ばすとは……」
 起き上がった絶影が上空を見上げる。
「翔!」
「唯斗、起きたか?」
「ちょっと手伝え! 年末年始の大盤振る舞い魅せてやろう!」
「……いいぜ!」
 翔と唯斗の通信にアリサが割り込む。
「待て! 唯斗のイコンでは空中戦は無理だ」
「……飛翔は出来なくても跳躍は出来るんだ……エクス! 鬼苦無とアダマントの剣を捨てる、軽量化だ!」
 武装を外した絶影が膝をグッと曲げ……。
「リアリティを超えてやる!!」
 唯斗の言葉と共に絶影が大跳躍する。


 翔のジェファルコンに抱えられた絶影は、ドンドン高度を上げていき、投げ飛ばしたイーグルを追い越し、雲海を抜けて大気圏付近まで到達する。
「年の終わりにこんなトコまで来るとは思わなかった……」
 無重力にフワリと髪を浮かせたエクスが窓の外を見て呟くが、唯斗は真下から上がってくるイーグルの影を見て気勢を上げる。
「んじゃ、打ち合わせ通りだ。やるぞ、翔!」
「おう!」
 ジェファルコンに離された唯斗の絶影が、ゆっくりと落下を始める。
「全加速器最大展開! 『九重』集中加速形態! 最大出力で行けええええええっ!」
「だああぁぁぁぁっ!!
 投げ上げられた最大巨獣を真上から蹴りつける絶影とジェファルコン。

 グラディウスの中で美羽が見上げると、空から一筋の流星が落ちてくる。
「あ、流星だよ、ベアトリーチェ!」
「いえ、恐らく……あれは……!?」
 グラディウスの傍を猛スピード降下する物体。

「てぇぇーーいっ!」
カキーンッ!!
「うわああぁぁぁーー!」
「クゥエエーーー!」
 下ではビームキャノンのエネルギーが尽きた理知のヒポグリフが、空を舞うイーグル達相手に、イコン用まじかるステッキを使って、千本ノックの真っ最中だった。
「ほらほら! 智緒のノックでヒィヒィ言ってちゃ、予選大会でコールドゲームだよ!」
「智緒。 私達、いいのかなぁ……こんな事して」
「理知、智緒達はお店を守ってるんだよ? それのどこがいけないの?」
 ヒポグリフが落ちてきた『玉』を手にして、またステッキでかっ飛ばす。
「うおおおぉぉ!?」
「えーとね……私が言ってるのはアキュートさんとウーマさんの事なんだけど」
「それにしても枕ってフルスイングしてもなかなか飛ばないよね?」
 ヒポグリフが打っているのは、アキュート達の『凄まじい枕』であった。
 意外にも、地上からランダムに飛ぶ凄まじい枕にイーグル達は店に近寄れずにいる。
「まったく……」
 理知が溜息をつくと、上空から赤い塊が急スピードで落下してくる。
「何だろう?」
 智緒が叫ぶ。
「チャンスボールに決まってるじゃない!!」
「え……」
 ヒポグリフが上空へと浮き上がる。
「さぁ、9回裏2アウト満塁。一発が出れば大逆転のチャンス! 智緒選手がステッキを持ち、打席に入りました!!」
「じ、自分で実況するの!?」
「理知! 星はお空にあるからこそ美しいの……目指せホームラン!!」
 ステッキを構えるヒポグリフ。
 やがて雲を突き抜け、見えてくる物体。
「結構、大きい……」
「まだよ……腕を畳んでコンパクトに振るのよ……フンッ!!」
 どう見てもヒポグリフより大きな塊に向かって、ステッキを振るヒポグリフ。
「翔、離脱するぞ!」
「つかまれ! 唯斗!!」
 絶影が一発蹴りを入れ、ジェファルコンに手を引かれて急速離脱していく中……。
「葬らぁぁーーー……」
 智緒の叫びと共に、イーグルの落下スピードに力負けしたヒポグリフが地面に落ちていく。
「だから私言ったじゃないーーッ!!」
ズゴオオオォォォーーンッ!!
 着弾の衝撃の余波で周囲一帯が吹き飛んでいき、地面が水の様に波打つ。

「やったか……?」
 絶影を大地まで運んだジェファルコンの中で翔が呟く。
「これで倒せない奴とかいたら困るぞマジで」
「地震みたいになっているが、店は大丈夫なのか?」
「……花火みたいなもんだと思って我慢して……ほしいなぁ」
 大技を決めた充実感を漂わせる唯斗が、巻き起こる煙が収まるのを固唾を飲んで待つ。

 やがて、煙が収まったクレーター内には、イーグルとその下敷きになったヒポグリフが倒れていた。
「ク……エエェェ……」
 イーグルがボロボロになった頭を少し持ち上げる。
「驚いたな……まだ生きてる……」
「理知の方もな……」
「……やるか」
 ビームサーベルを抜くジェファルコン。
と、そこに。
「みんな、待って!!」
「ピー! ピィー!!」
「あれは……ノーン?」
 ノーンが白い鳥に乗ってやって来る。
「この子のお母さんを倒しちゃ駄目だよー!!」
「……え?」
 一同は、イーグルが卵を盗まれたためにトロールを追っていた事をノーンから説明される中、美羽のグラディウスは、『限界』を迎えつつあったセルシウスを乗せて、蒼木屋へ急降下していく。
 彼らはこの後、竜司の無罪もノーンによって打ち明けられ、翔と唯斗は理知の機体回収と、竜司とトロール達の救出に向かうことになった。空ですっかりイーグル達の玩具にされていたアキュートとウーマの凄まじい枕が救出されるのは、その後の話である……。