リアクション
●最初の一日はかく更けゆく……(3)
教導団に戻る。
懇親会は終わった。テロや襲撃もなく、こうして無事に全行程が終わったということになる。
だがクレーメック・ジーベックの任務はまだ終わりではない。すべての出席者が会場を後にしてようやく完了なのである。
敬礼をして、出ていく客人や団員を見送る。酔って上機嫌の者がいる。クレーメックに気づいて「任務、お疲れ様です!」と敬礼をする者もいる。まあその敬礼が、酒のせいか肘が肩の下に来る不正確なものになっているのはご愛敬だろう。
俯瞰するにほとんどの者が、満足そうな表情を浮かべているのはクレーメックにとっても喜びであった。
されど一方、やはり閲兵式・懇親会に参加できなかっことはいささか残念である。
(「……まぁ、金団長のことだから、閲兵式に参加したかどうかにかかわらず、すべての教導団員を常に公平な視点から評価して下さっているのは間違いないだろう。それが救いと言えば救い、かな?」)
このとき、
「中尉」
金鋭鋒団長、さらに羅英照参謀長が揃ってクレーメックの前で足を止めた。
「我々が最後の退場者だ。これをもって任を解く。一日、ご苦労であった。疲れただろう」
話しているのは英照だ。
「お言葉、ありがとうございます。疲れはありません。これが自分の任務ゆえ、務め上げるのは当然であります!」
鋭鋒が言った。
「結構。さて任務が終わったのだ。中尉、きみの新年の抱負を聞こう」
ほとんど酒は口にしなかったのだろう。鋭鋒の顔色は平常通りで、鋭い眼光も同じである。だがその目元が、わずかに弛んでいるようにも見えた。
「抱負……自分が、でありますか」
「島津、島本、三田の三名も呼ぶといい」
ごく当然のように英照が告げた。
鋭鋒が提案する。
「これより諸君の閲兵式を行いたいと思うが、どうか。命令や強制はしないが、応じる気なら三名に招集をかけよ」