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四季の彩り・魂祭~夏の最後を飾る花~

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四季の彩り・魂祭~夏の最後を飾る花~
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 一方、望と別れたアーデルハイトは、レストゥーアトロに到着していた。待ち合わせ場所には、誘いをくれたザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)の他にルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)、そしてエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)が立っていた。4人は共に浴衣姿で、エリザベートはアイスクレープを食べていた。この暑さのせいか、少々不機嫌に見える。
「大ババ様、遅いですぅ〜」
「すまんのう、して、なぜエリザベートがいるんじゃ?」
「私が誘ったの。家族一緒に過ごすの久しぶりでしょ? ザナドゥから帰還したアーデのお帰りなさいを兼ねて、皆でお祭りを楽しみたいと思って」
「アーデ……とは、私のことかの?」
 アーデルハイトは目を瞬き、発言したルカルカと、そしてザカコを見る。彼からはアーデルさんと呼ばれているし、それがうつったわけでもないだろう。
「そうよ、アーデ。ザナドゥぶりね」
「……変な挨拶だな」
 笑顔のルカルカに、ダリルが呆れ顔になる。いつものことでも突っ込まずにいられないらしい。
「私もエリーって呼ばれたですぅ。まあお祭りですし、友人ですから今日くらいはいいですけどぉ〜」
 エリザベートの言葉に、アーデルハイトはほう、と呟く。
「まあ、祭りじゃし、無礼講ということにしておくか」
 ルカルカの言う通り、エリザベートとこうしてパラミタの上を散策するのも久しぶりだ。今日はのんびりした気分でもあったし、気にしないことにして歩き出す。その表情から寂しい気持ちがあったのだろうと感じたザカコは、彼女にそっと微笑みを向けた。
「アーデルさんがザナドゥに行っている間、校長も寂しかったんだと思います。今日はその分、笑って楽しく過ごしましょう」
「エリザベートが……?」
 アーデルハイトは少し驚いたようにエリザベートを見る。それから、ふっと目を細めた。
「……そうじゃな」
「花火までまだ間があります。屋台を見て回ったりして、軽く遊びましょう」

 時刻は午後5時。太陽が傾き始め、暑さもピークを過ぎる時間。歩きながら、ザカコはアーデルハイトに嬉しそうに言う。可愛い、というと怒られるかもと言葉を選んで。
「アーデルさん、今日は浴衣なんですね。似合っていますよ」
「うむ、たまにはこういうのも良いものじゃな」
「私達も着てきたのよ」
 このお祭りでアーデルハイトともいい友人になりたい。そう思いながら、ルカルカは袂を広げてみせる。
「ダリルのも私が選んだの。今日は一緒出来て嬉しいわ。じゃあ、色々買い食いしながら回ろうか。エリーも私もお菓子大好きだし沢山買おうねっ」
「…………」
 ルカルカ達の会計を管理しているダリルは、彼女達の隣で、何となく沈黙した。ルカルカはエリザベートと仲良く綿菓子を食べている。それは、早くも無くなりそうだ。
「チョコクレープの次はわたあめか……」
 そこで、ルカルカは残った棒を手に持ったまま「あ」と言った。
「射的があるわ。どう? 射的勝負と行かない?」
 1人10発撃ち、落とした個数を比べる。ルカルカの提案したルールは解りやすかった。
「私とエリーのチーム、ザカコさんとアーデのチーム。ダリルはソロよ」
「なんで俺だけソロなんだ」
 確かに、5人を2人ずつに分ければ1人は余るが。
「だってダリルは射撃のプロだもの。ハンデよハンデ」
「……ハンデにも程があるだろ」
 即答したルカルカに、やれやれ、とダリルは呆れた笑みを浮かべた。

「エリーは何が欲しい?」
「そうですねぇ〜、あのお菓子なんかいいですぅ〜」
「あれね!」
 ルカルカは自分の分の弾を使い、棚の中段にあるお菓子セットを撃ち落とした。渡されたそれを、「はい」とエリザベートにプレゼントする。それから、準備の整った彼女の背後に移動し、片手で背を支え、もう片方を射的銃を構えた小さな手にそっと添えた。
「いい? 力を抜いて、落ち着いて」
 簡単に射撃の手解きをして、穏やかに言う。
「銃身支えておくから、ゆっくり狙ってね」
「はい、ありがとうございますぅ」
 エリザベートは、中段にあるオブジェに狙いを定める。
「射的は、真ん中よりも少し上の方を狙うと落としやすいですよ」
 隣ではザカコがアーデルハイトにアドバイスをしていて、彼女にもそれが聞こえてくる。試しに、上の方を狙ってみた。おしい。
「上の方にあるぬいぐるみは耳の辺りを……」
 そう聞こえて、2個あるうちの白いぬいぐるみを狙ってみる。少し、下の方だった。どこにでもありそうなぬいぐるみだが、負けず嫌いのエリザベートは外したのが悔しくて何度もそれに挑戦している。
(アーデルさん達だと身長的にむずかし……)
「自分が落としましょう。任せて下さい」
 アーデルハイトだけではなく、何気にエリザベートにもコツを伝えていたザカコは、苦笑してまず、アーデルハイトの狙っていた桃色のぬいぐるみを獲った。次に、隣の白いぬいぐるみを獲る。これで、お揃いだ。
「やったですぅ〜!」
 エリザベートの歓声が上がる。直後、一番端で淡々と射撃をしていたダリルが景品を一気に棚から消した。弾が少ない彼は最初は計算された位置にずらし、最後の一発で落下連鎖の雪崩を起こしたのだ。結果として、獲得した数は10個以上になった。
「スキルを使いましたねぇ〜。魔法を使っていいなら私だって簡単ですよぉ〜」
 スナイプを使ったことが直ぐに分かってエリザベートはふくれる。その彼女達に獲った景品の殆どを渡し、ダリルはベビー用品とキャラメルだけを手中に収めた。
「それだけでいいの?」
「これは、ファーシーと赤子に持って帰る。他はお前達で分けろ」
「ファーシーさん達にですか」
 得心を得たザカコが言う。彼女の出産に、ダリルは直接的に関わっていた。ザカコもその日、立ち会おうとヒラニプラに行った。
「ああ、そうだ。あの日……」
 再び屋台通りを歩きながら、ダリルはその時の事を話し始めた。