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2023年ジューンブライド

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リアクション

 九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)は、長曽禰 広明(ながそね・ひろあき)を誘って神社にお参りに来ていた。
「凄い賑わいですね!」
「この時期は模擬結婚式のイベントで人が出ているとは聞いていたが、相当な人数だな」
 喧噪の中を歩きながら、ローズは広明をちらりと見た。
 ローズはこの神社にお参りして「広明さんの良いお嫁さんになれますように」と願うつもりでいた。未来はどうなるかはまだ分からないけれど、願掛けするくらいなら、と。
 だが、そんな願いは広明には秘密である。ということは、会話の種になり得ないということに他ならず。
 今日は、広明と付き合ってから最初のデートということもある。ローズは何を話せば良いのか、と考え込む。
「……広明さん今日は良い天気ですね」
 とりあえず、無難に天気の話から始めるローズ。
「ああ、そうだな」
 広明は、空を見上げて眩しそうに目を細めた。
「お仕事の調子はどうですか?」
「まあ、順調だな。ようやく、やりたかった仕事も進み始めたし」
「それは良かったです。体調は崩されていませんか?」
「大丈夫だ。ま、若干徹夜の仕事が続いてはいるが、どうってことはねえ」
「そうですか……やはり軍人のお仕事は大変ですよね。貴重な時間を割いて頂いて、ありがとうございます」
 二人はそんな話をしながら、お参りをした。礼をしてから、ニ拍手。
(神様、広明さんのお仕事が順調にいきますように。健康でありますように……)
 そう祈ってから、ローズは本来の目的ーー広明さんの良いお嫁さんになれるように、という願いを頼み忘れたことに気付いた。
 まあ、いいか。広明さんが元気ならそれで良いんだから。ローズはそんなことを思いながら広明の方を向く。広明もちょうどローズの方を向き直ったところだった。
「どうする? 神社の様子も一回り見てみるか?」
「--はい!」
 広明に促されて、ローズは人ごみの中へと足を向けた。来年は照れずに、せめてウェディングドレス姿を見せられるようになるといいな、と思いながら。