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リアクション
6月の良く晴れた日。今日はこの教会で、風祭 隼人(かざまつり・はやと)とルミーナ・レバレッジ(るみーな・ればれっじ)の結婚式が執り行われる。
昨年のクリスマスにプロポーズして婚約者になった隼人とルミーナだったが、今回改めて隼人がルミーナに結婚の申入れをし結婚式を挙げることとなったのだ。
「いよいよですね」
ルミーナが緊張した面持ちで隼人に言った。隼人は白いタキシード、ルミーナは純白のウエディングドレスを着ている。
後は、式場に入場するばかりだ。否が応でも、緊張が高まる。
「ああ--目一杯幸せな結婚式にしような」
隼人はルミーナに笑いかける。ルミーナは隼人に微笑み返して、そっと隼人の腕に自分の腕を絡めた。
「行きましょう」
隼人たちは寄り添って、式場に入った。瞬間、二人を出迎えたのはたくさんの参列者からの祝福の視線だった。
「おめでとう、緊張してミスするなよ」
「二人ともおめでとう!」
隼人の父である風祭 天斗(かざまつり・てんと)と、隼人のパートナーでありルミーナの友人であるアイナ・クラリアス(あいな・くらりあす)は、真っ先に祝福の言葉をかけた。
「ご結婚おめでとうございます!」
晴れやかな表情で新郎新婦を祝福する御神楽 陽太(みかぐら・ようた)。本当は夫婦で出席したかったのだが、陽太も環菜も用事があり、どうにか陽太だけは出席できたのだ。陽太は二人分、お祝いをしようと思っている。
「結婚おめでとう! お幸せに!!」
風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)は、弟の隼人の結婚式だということで、テレサ・ツリーベル(てれさ・つりーべる)とミア・ティンクル(みあ・てぃんくる)、鬼城の 灯姫(きじょうの・あかりひめ)を連れて出席していた。--のだが。
「もちろん、次は私と優斗さんの番ですよね?」
テレサが問う。
「優斗お兄ちゃんも、早く僕にウェディングドレスを着せたいよね?」
ミアが問う。
「私との結婚式は神前式が良いと思うが、どうだろうか?」
灯姫が問う。
……自分の弟の結婚式の真っ最中に修羅場だなんて、絶対にまずい。優斗はひたすらに、三人の言葉が聞こえていないフリをしながら、隼人とルミーナの式が進んで行くのを見ていた。
隼人はウェディングドレス姿のルミーナの隣に立つと、これからルミーナと夫婦になるのだという実感が湧いてきた。隼人は、今、人生で一番幸せだと--世界で一番幸せだと、確信する。
「汝、その健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しき時も、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、固く節操を守ることを誓いますか?」
「誓います!」
そう誓いの言葉を述べながら、隼人は心の中でルミーナと永遠に愛し合う事を--そして必ずルミーナを幸せにする事を誓った。
「汝、その健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しき時も、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、固く節操を守ることを誓いますか?」
「誓います」
ルミーナも誓約を交わして--そして、隼人に向き直る。
そして隼人とルミーナは皆が見守る中、長くし合わせな誓いのキスを交わしたのだった。
無事に式を終え、場所を変えて披露宴に入ろうとした時。
「遅くなってごめんなさい」
そう言って隼人たちの前に現れたのは--御神楽環菜だった。環菜は結婚式には間に合わなかったが、どうしても披露宴には出たいと、急いで駆けつけたのだった。
「二人のこと、どうしても祝福したかったから」
陽太は環菜の元に駆けつけ、そして二人で改めて隼人たちの結婚を祝福したのだった。
披露宴の中で、隼人とルミーナは皆のテーブルを回って挨拶をして回った。
陽太と環菜の元に行った隼人とルミーナは、先輩夫婦としての結婚生活の素晴らしさや、ラブラブな夫婦生活の惚気を聞いた。若干惚気交じりのアドバイスを受けながら、隼人は笑った。
「ご新居には必ず妻と2人で訪問させていただきますね」
「はい! 是非、遊びにきて下さいね」
ルミーナは嬉しそうに答えた。
幸せそうな隼人たちを見ていると、陽太と環菜も嬉しくなってくるのだった。
「ようやく隼人も結婚だな」
天斗がしみじみと隼人を眺めて呟く。
「人が人を好きになるということは素晴らしいことね。--まあ、修羅場になることもあるけど」
アイナは、天斗に同意しつつも、やや後方のテーブルにちらりと視線を送る。
「ねえ、私たちはいつごろ結婚式をすることにする?」
「……」
「ボクのウェディングドレス、一緒に選びに行こうね?」
「…………あ、こっちに二人とも来るよ」
「白無垢での結婚式も、雰囲気があって良いのではないか?」
「うん、そうだね」
優斗は三人を怒らせないように肯定の相槌を打ちながら(といっても言質を取られないように細心の注意を払いつつ)、挨拶回り中の隼人たちに助けを求める視線を送った。
「皆さん、来てくれてありがとうございます」
その視線に気付いたルミーナが、優斗たちの元にやってきて微笑みかけた。優斗の目には、明らかに「助かった……」という安堵が浮かんでいる。
そんなような様々な場面を、陽太と環菜は余すところなくビデオカメラで録っていた。後日、2人でイチャイチャしながら鑑賞しよう、なんて思いながら。
会場内では、皆を隼人とルミーナの幸せな雰囲気が包み込んでいる。
皆がそれぞれの思いを抱えつつ、新しい夫婦の誕生をいつまでも祝福していたのだった。