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お月見の祭り

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お月見の祭り
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 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は、高原 瀬蓮(たかはら・せれん)瀬蓮と一緒にお揃いの浴衣を着て、たいむちゃんがお餅をついている池の畔へと向かっていた。
 美羽と瀬蓮の浴衣の柄は同じひまわりの柄だ。美羽はオレンジ色の、瀬蓮はピンク色の浴衣を着ている。
「み、美羽ちゃん……これ、可愛いけど、ちょっと短くないかなぁ?」
 瀬蓮はモジモジと浴衣の裾を気にしている。美羽が選んだ浴衣はミニスカート丈の短さの、可愛いデザインのものだ。
「大丈夫だよ! 瀬蓮ちゃんすごく似合ってるし、可愛いよ!」
 美羽にそう言われてからも、瀬蓮は時折、裾を気にするようにチラチラと裾を見ていた。

 美羽と瀬蓮がやってきた池の畔では、既に浴衣姿の佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)が、たいむちゃんの餅つきを手伝っていた。
「まだまだニルヴァーナはやらないといけないことばかりで、校長さんやポムクルさん達も毎日大変ですけど、この日くらいは校長さん達も息を抜いてもらわないとですねぇ」
「ありがとう。皆が手伝ってくれるから、こうしてお月見の祭りも上手くいっているわ」
 ルーシェリアは、たいむちゃんに変わって杵を持ち、お餅をついていく。たいむちゃんはタイミングを見計らってお餅を返している。
「そんなわけで、私でもできることはこちらで引き受けるですから、校長さん達も気楽にいくといいですよぅ」
 ルーシェリアの近くでは、浴衣を着た佐野 悠里(さの・ゆうり)がポムクルさんたちと遊んでいる。
「次は何をして遊ぶ?」
 悠里の言葉を聞いて、ポムクルさんたちが顔を見合わせる。
「かくれんぼをするのだー」
「隠れるのだー」
「それじゃあ、悠里が10数えるね。1、2、3……」
 ポムクルさんたちは、池の畔に生えたススキの間や、たいむちゃんの足元など、思い思いの場所に走っていく。
「……9、10! もういいかーい」
「まーだだよなのだー」

 楽しそうに遊んでいる悠里とポムクルさんのそばを通って、美羽と瀬蓮はルーシェリアの元までやってきた。
「私たちもお餅をつく手伝いをするね!」
「助かるのですぅ、よろしくお願いしますぅ!」
 ルーシェリアと場所を交換した美羽は、杵を持って臼の前に立った。ルーシェリアはたいむちゃんと位置を代わる。
「ほら、こうやってやるんだよ」
 ぺたん、と音を立てて、杵がお餅をついた。ルーシェリアがお餅を返して、またひとつぺたん。
「わぁー、凄いねぇ」
 瀬蓮は、美羽とルーシェリアの手際の良いつき方に思わず感嘆の声を上げた。
「瀬蓮ちゃんもやってみようよ!」
「何事も挑戦ですぅ」
「え、ええっ! お餅ついたら、見えちゃうよ」
 瀬蓮は少し顔を赤らめて、浴衣の裾を慌てて手で隠した。
「大丈夫ですよぅ、今はまだ、お餅をもらいに来る人もそこまで多くないですぅ」
「見ーつけた!」
 悠里に見つかったポムクルさんが、臼の方へと走ってきた。
「ポムクルさんも手伝ってくれると嬉しいな!」
 美羽はポムクルさんを呼び止めて、瀬蓮の餅つきを手伝ってもらうことにしたのだった。

「美味しそうなお餅ですねぇ」
 つきたてのお餅を前にして、ルーシェリアが嬉しそうに笑った。
「せっかくだし、あんころ餅にして食べようよ!」
「いいですねぇ」
「あんこはこっちにあるよー」
 瀬蓮の指差した先の台には、あんことポムクルさんが乗っている。
「それじゃあ、ポムクルさんに作ってもらおうかな!」
 そう言って美羽は、ポムクルさんの前でお手本を見せ始めた。
「手に餡を取ったらちょっと潰して、ここにお餅を乗せて、ポンポンって形を整えるんだよ!」
「ポムクルさんもがんばるのだー」
「コロコロするのだー」
 ポムクルさんたちは美羽が作ったものを真似して、あんころ餅を作り始めた。

 ルーシェリアと悠里は池の畔に並んで座り、できあがったあんころ餅を食べている。
「甘くて美味しいですぅ」
「ポムクルさんも、頑張ったね」
 悠里に褒められたポムクルさんたちも、小さなあんころ餅を食べている。
「美味しいね」
「美味しいねー」
 美羽と瀬蓮は、一緒についたお餅を食べながら空を見上げた
「ホント、きれいなお月様だね!」
「お月見するの、とっても楽しいね」
 皆があんころ餅を食べ終わる頃、お餅をもらいに来る人が少しずつ増え始めた。
「休憩を終えたら、またお餅つきを始めましょうねぇ」
 ルーシェリアは張り切って、再び臼の方へと向かった。
「食べ終わったら、何をして遊ぶ?」
「鬼ごっこをするのだー」
 悠里とポムクルさんのやりとりを、たいむちゃんが微笑ましそうに見つめていた。