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リアクション
ようやく出揃った本選出場者。
「えーここからは一戦ずつ休憩をとり、万全の状態で試合を行っていきます。
リングは一生懸命直しました。補修係りに拍手を！」
泪は本選出場者、並びに観客たちへそう説明した。
その記念すべき第一戦は、
ルカルカ・ルー（るかるか・るー）vs酒杜 陽一（さかもり・よういち）
「よろしく」
「こちらこそ、よろしくね！」
互いに礼を尽くして、愛武器を構える。
「それでは、僭越ながら私卜部泪が、合図させていただきます。
……はじめっ！」
いち早く動いたのは陽一。
開幕からソード・オブ・リコを横に一閃する。
ルカルカは飛び上がりこれを回避する。
そのまま飛行して、陽一の頭上を取ろうとするルカルカだが、陽一も見ているだけではない。
再度武器を構えなおして、今度は空を駆けるルカルカを迎撃しようと一閃。
卓越した空間認識能力により、その太刀筋にブレはない。
「なら、今度は受けるよ！」
その一撃を自分の武器、『創世』で受け、受けた状態で陽一に接近する。
（速いっ……！）
スピード自慢の契約者が多い中でも、それに負けず劣らずの速さであるルカルカ。
陽一は思考する。
このまま様子を見るのは失策。
かと言って、一度引こうとしても武器を構えなおす前に仕留められる。
ならば。
「このまま押し切るっ！」
力をこめ、ルカルカをリングの地面へと叩きつけようとする。
「そうするしか、ないよね！！」
ルカルカはその力からするりと抜けるようにして、横へ移動する。
ソード・オブ・リコはリングを破壊し、陽一は完全に無防備に。
そこへルカルカが火門遁甲を放ち、陽一を焼き尽くす。
「お、みごとっ……」
陽一はその攻撃を防ぐことができず、そのまま意識を失った。
勝者、ルカルカ・ルー！
注目の第二戦は、
遠野 歌菜（とおの・かな）vsリネン・ロスヴァイセ（りねん・ろすヴぁいせ）
共に蒼空学園の契約者の二人。
どちらも物怖じ消せず、歌菜は楽しそうに、リネンは鋭い目つきで相手を見る。
「それでは、はじめっ！」
泪の言葉と共に歌菜とリネンが空へと移動する。
「ここまで来たら奇策は種切れよ。あってもどうせ、通じないでしょう？」
己の潜在能力を解放して、一心不乱に歌菜に向かい、まずは一突き。
それを堂々と、二つの槍で受け止める歌菜。その顔は未だに笑顔だ。
「避けるのだってもったいない……ぶつかり合って、戦うのが楽しいよね！」
片方の槍でリネンを押して、もう片方の槍がリネンを狙う。
その攻撃に対して、リネンも一歩も引かずに、受ける。
「お相手仕るわ！」
ペガサス、ネーベルグランツからも降りて、歌菜に真っ向から斬り合う。
二人が繰り広げる、突きと斬り。そのいれずもが致命傷になりえる一撃だ。
その攻防に終止符を打つため、二人は同時に距離を取る。
「私の歌を、そして一撃をっ！」
「こちらもよっ！」
歌菜はエクスプレス・ザ・ワールドで槍を具現化、更に自分も一本の槍の様になり突進。
リネンは飛来する槍を無駄のない動作で避け、一際巨大な歌菜の槍を睨む。
「今っ！」
歌菜が自分に迫りきる前、リネンはアクロバディックな動きで空中を泳ぐ。
そして、歌菜の背後を取り、槍を突き出す。
歌菜も攻撃体勢を解除しすぐさま防御に移るが、隙をつかれた後の猛攻を耐え凌ぐことができず、
そのまま押し切られてしまいダウンとなった。
勝者、リネン・ロスヴァイセ！
勝負も半ばの第三戦は、
紫月 唯斗（しづき・ゆいと）vs緋柱 透乃（ひばしら・とうの）
こちらも同じく学園、葦原明倫館の二人。
お互い何も言わず、目を閉じている。
「えっと、いいんですよね？ ……で、では、はじめっ！」
その合図を切っ掛けに両者猛進。
お互いの利き手を、お互いの利き手にぶつけ合い、
開幕、初手に重過ぎる一撃が炸裂する。
「これこれ、こういう戦いを待ってたんだよねぇ」
「真っ向からの殴り合いか？ 確かに、嫌いじゃねぇよ」
そのまま二人は、拳打の嵐を互いの急所めがけて打ち合う。
「見たところ忍者っぽいけど、速さで勝負してもいいんだよ？」
「なら遠慮なく――」
言葉を置き去りに、唯斗の姿が消える。
持てる技術の全てを駆使し、世界から受ける干渉を限界まで低減、
自身の能力を最大限強化することにより、その速さは他者から知覚不能の領域となる。
技の名を「縮界」。
観客の目にはもう唯斗は見えない。
「……こりゃ速い」
さすがの透乃も認識が追いつかない。思わず身構える。
「お褒めに預かり恐悦至極っ！」
唯斗が透乃の側面から近づき、乱打を放つ。
それだけで決まる、かに思えた。
透乃はまったく動じない。
「……終わり？ ならこっちの番だ！」
特殊な防御姿勢、その防御は全身を極めて頑丈にし、威力に応じて自身のスキルポイント消費し、を如何なる攻撃にも耐えることを可能とする。
技の名を「極硬透心身」。
「さあ、一撃、屠るよ！」
「面白い、受けて立つ」
再度ぶつかり合う両者の拳、
透乃が一生をかけて磨き上げている、『最強の一撃』と成る予定の必殺技である透破裏逝拳。
唯斗の掛け値なしの全身全霊、乾坤一擲の一撃はあらゆる障害を貫き魂にすら届く我が一撃。
一歩も譲らぬ互いの大技。その威力の軍配は、透乃。
だが、唯斗も秘策を発動していた。
陰陽道における根源の力、太極の力を引き出し、その無尽蔵の出力を利用する事で非常に強力な封印を施せる森羅封印・万象回帰。
一か八かであったが、これを透乃に発動させることに成功。弱体化させるとともにスキルを封ずる。
「悪いな！ そのままリングアウトだ！」
唯斗が一撃をいれ、そのまま透乃はリングアウト後、着水し敗北となった。
勝者、紫月 唯斗！
