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記憶が還る景色

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記憶が還る景色

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■蒼空



「え? 観光案内?」
 朝早く突然に言ってきた佐野 和輝(さの・かずき)アニス・パラス(あにす・ぱらす)は首を傾げた。
「急遽で悪いが」
 たまたま連絡をしたら、破名・クロフォード(はな・くろふぉーど)達が空京に遊びに来ると聞いて、どうせ今日は暇だったなと空京大学に籍を置き周辺地理をあらかた把握してる和輝はアマチュアレベルでいいならと観光案内役(ガイド)を引き受けたのである。
「う〜、別にいいけ……」
 和輝が居るのならと同じく暇なアニスは了承しようとして、はた、と気づいた。
「待った!」
「ん?」
「もしかして……じゃなくて、もしかしなくてもあの子も来るの!?」
 天子爛漫で自由奔放なれど極度の人見知り。そんなアニスだが、何度か交流を持つことで同世代の同性であれば系譜の子供達とは会話ができるまでになったものの、例外があった。
「まぁ、いつものメンバーだろうな。全員って言っていたから」
「ちょっと待って! 今、(むしろ、撒き餌ようとして)間食用の何かを作るから!」
 アニスは言うが早く台所へとすっ飛んでいく。
 見送った和輝はもう一人くらい声を掛けようかと考えて、そう言えば適任者が居たなとスノー・クライム(すのー・くらいむ)の元へと向かう。



…※…※…※…




「″あっち系″の問題か?」
 シェリー・ディエーチィ(しぇりー・でぃえーちぃ)と同じく破名を見送った側の和輝はそっとキリハに聞く。
 小声に「そんな所ですね」とキリハは答えた。
 問題無いと言って、発生した問題に巻き込まれたこと数回。和輝は破名の問題無い発言はあまり信用していない。落ち着き払っているキリハのが余程信用できるというもので……、
「様子を見てこよう」
「様子、ですか?」
やっぱり少し信用できない。
「合流場所、決めてないだろう?」
「何かあればお知らせ下さい」
 わかりやすい和輝の口実にキリハが僅かに頬を緩めた。
「和輝ぃ〜」
「餌には食いついてくれたんだろ?」
 お菓子を用意し、盾(これは和輝とスノーのことだ)の位置を確認し、いざ待ち合わせ場所で子供達を待っていたアニスは、
「これで大丈――」
「アーニースー様ぁー!」
「にゃああっ、やっぱり無理!!」
と、例によって赤髪のヴァルキリーヴェラの強襲を受け、今はスノーの影に隠れている。ヴェラは大食漢ではなく、美味しいものを誰よりも早く口にしたい一心で襲ってくるだけであって、食べられたらすぐに満足する。アニスが反射的に投げつけたお菓子を食べた現在至って普通だ。アニスの撒き餌作戦は成功をおさめている。
 脅威はあるのかと逆に問う和輝にアニスは「スノ〜」とスノーを呼び寄せた。
「いってらっしゃい」
 観光案内ということで女の子が好きそうな場所をいくつかピックアップし、子供達とどこに行きたいか再アンケートを取っていたスノーはアニスに呼ばれ、別行動を取る和輝にアニスが居れば精神感応も使えるし問題無いだろうと判断する。
 快く送り出したスノーに、アニスも見送る側で留守番を引き受けた。



…※…※…※…




「あーいーすー」
 フェオルが鳴く。
「あーいーすーーーーー」
 おねだりに鳴く。
 アイスを買うことが決定したものの、ではどこの店のアイスを食べるかで話が止まり進んでいないのだ。
 話はわかった。少し待ってと言われて待てるものの、落ち着いて待てないのが子供である。フェオルくらいの年齢なら尚更か。アイス早く食べたいコールを耳にいれつつスノーはさてどこがいいかしらとキリハに予算はいくらかと質問する。
「あれ、系譜の皆じゃない」
「美羽!」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)の声にシェリーは声を上げた。
「小鳥遊、アイブリンガー、七夕以来ですね」
 頭を下げるキリハにベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)も「お久しぶりです」と挨拶を返す。
「みーわー、あーいーすー」
「フェオルはアイス食べたいの?」
 甘えてくるフェオルに美羽は首を傾げた。頷かれて美羽はキリハを見た。
 スノーとキリハの話を聞いて、美羽はそれなら、と提案する。彼女も王 大鋸(わん・だーじゅ)の福祉活動を手伝っている関係で空京の地理には詳しい。
「それならいいお店知ってるよ。しかも、この近くなんだ!」
 とお店を紹介し、皆でアイスを食べ始めて暫く、
「遅い……」
 アニスの声に、
「じゃぁ、ちょっと様子見に行ってくるね!」
 破名は勿論、合流場所をと探しに行った和輝も戻ってこない事に、確かに遅いねと美羽は迎えを名乗りでた。