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【未来シナリオ】大切な今日

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【未来シナリオ】大切な今日
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リアクション


久しぶりに2人で

「あ、鈴子さん待ったー?」
「遅いです、リナさん。またイケメンに気を取られていたのですか?」
 それは、数年前には良く見かけた光景。
 和服美人の桜谷 鈴子(さくらたに・すずこ)と、イケメン好きな雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった)といった、外見も性格も全く違う2人が、待ち合わせをして一緒に歩く姿。
「声かけられてないですからあ、イケメンのせいじゃないですよぉ。でも、3分しか遅刻してないですよお、鈴子さん一体何時から待ってたんですかあ?」
「ふふ、5分前に来たばかりです」
「ひっどーい、殆ど待ってないじゃないですかあ」
「でも、遅刻は遅刻です」
 笑いながら、2人は歩き出す。
 どこに行こうなんて、約束していなかったけれど、2人の足は自然と同じ方向へと向かっていた。
 百合園女学院の裏側の通りの、2階にある喫茶店。
 共に百合園で活動していた頃、一緒によく行った場所だ。

「リナさん、イメージチェンジしたのですね」
 喫茶店に入って、注文をした後で。
 鈴子がリナリエッタの髪を見て言った。
「へへ、髪型変えたんですよー気づきましたあ?」
 パーマはそのままだが、ツインテールからは卒業していた。
「気付きますよ。落ち着いた雰囲気ですね、髪も、服装も」
「そうそう、昔も今もスタイルには自信あるからセクシーなワンピース! を着たい気持ちもあったのだけど、そういうわけにはいかないのよねえ。仕事の都合上、こんなかっちりした服着ないと駄目だったりで、ホント鈴子さんと会うのに、こんな格好で申し訳ないわあ」
 到着した紅茶を飲んで、リナリエッタはふううとため息をついた。
 リナリエッタは現在エリュシオン帝国第七龍騎士団に所属している。
 マイペースでいたいところだが、最近、部下も出来て、責任も増えてきたため、見本となる振る舞いが求められている。
 ということで、今日はつまらない地味なパンツスーツ姿だった。
「素敵なお洋服は偶に着るから良いのですよ。リナさんはスタイルがよろしいので、そのスタイルの良さを武器できなくて残念だとはおもいますけれどねぇ」
「あ、なんか嫌味が込められてるきがするわあ。鈴子さんは今でも十分綺麗な姿見せびらかしているのに」
「うふふ。今日は久しぶりにリナさんにお会いするので、昔の和服を着てきたのです」
 百合園女学院で生徒会長として活動していた頃、行事の際によく来ていた和服を、鈴子は来ていた。
「んー、なんだかなつかしいわねえ……」
 鈴子を見つめながらしみじみと言った後、リナリエッタはにこりと笑みを浮かべる。
「で、鈴子さん……結婚相手の方、どうなりましたあ?」
「……まだ結婚までは考えていませんわ」
「ん? なんだかそのニュアンス……お付き合いしている人いるんですかあ?」
 リナリエッタが問いかけると、鈴子は少し恥ずかしげに頷いた。
 相手は、空京で働いている日本人の男性とのことだ。
「ライナがミルミの家で暮らすようになりましたので……私もそろそろ、身を固めたいと思っているんです」
「鈴子さん、百合園辞めちゃうの?」
「いえ、もし彼と一緒に暮らすことになった場合は、空京の専攻科の方で働かせていただけたらと思っています」
「そっかあ……これは一度、空京に顔を見にいかないといけませんわあ。私の拳とどっちが強いのか決着をつけてから話」
「リナさん、彼は契約者じゃありませんので。私が守りますよ」
 にこっと鈴子が微笑む。
「わわ、鈴子さん相手じゃ分が悪いわあ」
「いえ、元々リナさんの方が力は強かったですし、今では総合的な能力もリナさんの方が上だと思います。それでも、負けていない面もあるつもりですが」
「それはそうですわあ……鈴子さんには適いません」
「それで、リナさんは? 何人の方とお付き合いしてるんです?」
「鈴子さん、このこの格好で全て解るでしょお」
「ふふ、遊んではいないのですよね」
「そーですよお……なんだか最近部下の育成みたいな感じで、恋愛というよりか教育ばかりでつまんないですよー」
 そしてまたリナリエッタは大きくため息をついた。
「はー今日は久しぶりに休みとってきたんで鈴子さんとここでご飯食べて、学校にOG訪問して夜はどこか夜景の綺麗な場所でケーキとか食べましょうよ、ね?」
「ええ、朝までお時間があるようでしたら、私の部屋に泊ってくださっても構いませんわ」
「ホントですか! 鈴子さんのお部屋〜。変わってないんでしょうねえ。懐かしいわあ」
「明日も空いてるのでしたら、昔のリナさんのコスプレをして、2人で街を歩いてみたいですね」
「本気ですか……!?」
「ちょっと言ってみただけです」
 くすっと鈴子は微笑んで、サンドイッチを口に運ぶ。
「んー、いいなー、そういうことして遊びたい〜」
 しかし、明日は仕事なので、そう長くはヴァイシャリーに留まっていられないのだ。
「はーやっぱり私は白百合の園の女、なのかしらね?」
「そうですね。いつかは、ここに戻ってくるのかもしれませんわね。
 そしてまた数年後に、旅立ってしまいそうです」
 鈴子の言葉に、ため息をつきながらリナリエッタは頷いた。
「さ、ご飯を食べ終えたら、学院に顔を出して。
 その後は、レストラン、ですよね?」
「はい、ため息ついてる時間、もったいないですよねえ」
「久しぶりの休日を、満喫してくださいませ」
 食事を終えた後は、百合園女学院に顔を出し、恩師や知り合いに挨拶をして。
 それから、ヴァイシャリーの街を散歩して、懐かしい場所や変わった場所を観て回り。
 夜にはヴァイシャリーの夜景が見下ろせるレストランで、リナリエッタは懐かしい味の料理を味わいながら、鈴子と素敵な時間を過ごした。