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【四州島記 外伝 ニ】 ~四州島の未来~

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【四州島記 外伝 ニ】 ~四州島の未来~
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【西暦2035年 某月某日】  〜四州の天才〜

『おお、コタロー。どうだ、元気にしてるか?』
「ひさしぶりれす、おたーたん。こたは元気ですおー」

 久方振りの緒方 樹(おがた・いつき)からのテレビ電話に、緒方 コタロー(おがた・こたろう)は元気よく応えた。
 モニターに映った樹の顔を見るに、向こうも元気でやっているようだ。

「ちみたん達は、元気れすか?」
『お前の弟と妹か?今、後ろで大ゲンカしているぞ』
 
 樹は、今から10年前に、男女の双子を産んでいる。
 コタローと樹はあくまで義理の親子だが、だからといって樹はコタローと自分の実の子供達の扱いに、差をつけたりはしなかった。

「またケンカれすか。こまりまちたね〜。ちょっとおせっきょうしますから、ちみたんたちに変わってくらさい」
『おい、お前たち!ケンカしてると、コタねーにまたお説教されるぞ!!――ハハハ、途端に静かになって、部屋に引っ込んでった。よっぽど、コタの説教がイヤなんだな』

 コタローの説教は、うっかりすると延々1時間以上に及ぶ。
 しかもその間中正座させられ、迂闊に足でも崩そうものなら更にその事を叱られて、説教が伸びるのだから、それは子供達も大人しくなろうと言うものだ。

『そうそう、コタ。例の、地域発電所の方、上手く行ってるか?』

 地域発電所というのは、村単位で電力を自給する事を目指してコタローが開発した、温度差発電を使用した発電所の事である。
 この温度差発電というのは、北嶺から南濘まで地脈を通じて運ばれている、白峰輝姫(しらみねのてるひめ)の氷の力を利用して触媒を冷やし、触媒と周囲の気温との温度差を利用して発電するシステムである。
 大きな触媒を作るには莫大なコストがかかるため、大規模な発電所を作るには適さないが、地産地消を目的とした小規模発電所であれば、充分採算が取れる。
 しかも、白姫輝姫の力は無尽蔵に湧いてくるため、環境への負荷が全くないという利点がある。
 白姫輝姫の力を使うとなると、それによって火山の冷却に問題が発生するのではないかと考えがちだが、火山の冷却にかかる力と比べれば、発電に使用する力の量はまことに微々たるものであるため、その心配はない。
 欠点があるとすれば、『地脈』とか『道』とか呼ばれている、機晶鉱脈の周辺でしか導入出来ない事だろうか。

「あい、じゅんちょーれすお!あれから、色々みんなとお勉強してんれすお!それでまず、発電所の『めんてなんす』を、できるだけ村の人たちにしてもらうようにしたんれす。自分たちで直せるのが、一番いいとおもうんれすお。そうすれば『いじこすと』も下げられるし、地いきのこようにもつながるし、何より、発電所を大切にしおーと思うようになると、思ったんれす」
『そうかそうか!発電所は順調か!しかし、雇用の事まで考えるようになるとはなぁ……。コタローも、大きくなったなぁ』
「こたは、天才れすから!」

 コタローは、モニターに向かって胸を張る。

『それはそうとコタロー、お前、今年で何歳になる?』
「え?二十さいれすお?」
『そうか〜。もう二十歳か〜……。それじゃ、振り袖を作った方が良いな……。それとも、花嫁衣装の方が良いか?』
「花よめいしょーなんて、こたはいらないれす。こたは、まだいーぱいやりたいことがあるおで、けっこんしにゃーれすお!」
『そ、そうか……。なら、やっぱり、振り袖だな』

 もしコタローが、もう少し人の感情の機微に敏いタイプであるなら、モニターの向こうの樹が、わずかながら残念そうな表情をしたのに気付いただろう。
 樹は「コタローにも、そろそろ好きな人の一人くらい……」という淡い期待があったが故に、カマを掛けてみたのだが、生憎コタローは、よくも悪くもそういうタイプではない。

「そうそう、およめしゃんと言えば、おたーたん!『たい』のおよめしゃんが、今、お家で『じゅく』を開いてるんれすお♪」

『たい』というのは、未来から来た樹の息子、緒方 太壱(おがた・たいち)の事である。
 7年前から、コタローと一緒に暮らしている。

「ん?こた姉、俺がどうした?」
「あ、たい!うわさをすれば、ですお!」
「なんだよ噂って――って、ああなんだ。お袋と話してるのか。おう、お袋。元気そうだな」
『元気そうだな、じゃない。全く、ろくに連絡もよこさないで』
「ああ、わりいわりい。なんだかんだと、結構忙しくてさ――あ、こた姉、もういいの?」

 樹と太壱の話が長くなりそうだと見て、コタローが太壱に席を譲る。
 太壱は、「どっこらせ」と、オッサンのような声を出して、モニターの前にどっかと座った。

「尾上さん……だっけ?その人が結婚するっていうから、そこにお世話になってたコタ姉を引き取って、俺の嫁さんと一緒に住んで、ガキ産まれて――」
『おのうえさんじゃない。みかみさんだ。自分の住んでる国の外務大臣の名前くらい、覚えておけ』

 この頃御上 真之介(みかみ・しんのすけ)は、それまで外務大臣を務めていた水城 隆明(みずしろ・たかあき)が西湘共和国首相に転向した事から、その後を継いで外務大臣になっていた。
 この人事の背景には、四州の教育制度改革が一区切りついて、御上以外の人間にも任せられるようになったという、南臣 光一郎(みなみおみ・こういちろう)大統領の判断がある。

「え……?あれ、『おのうえ』って読むんじゃないの?」
『……太壱。少しは、コタローの爪の垢でも煎じて飲んだらどうだ?』
「――ま、まぁそれは置いとくとして。イヤー、それにしてもコタ姉はスゴいね!」
『話を逸らすな』
「い、いや!話を逸らすとかじゃなくて!親父の遠隔診療が出来るようにポケットマネーでインフラ整えたのはコタ姉だし、昔作った機晶トラクターとかだって四州の人たちにバンバン寄付しちゃって。ホントコタ姉、人間出来過ぎだよ」
『まぁコタローは、金には興味が無いからな』
「ホント、ああいうトコロは真似出来ないわ」
『それはそうと太壱。お前の嫁、塾開いてるそうだな?』
「ああ、うん。まだまだ四州には、家の仕事の手伝いとかで、学校に行けない子供も多くてさ。そういう子供達のために、読み書きとか、あと四州の歴史とか教えてるんだよ」
『四州の歴史?』
「そう。嫁さんがさ、コタ姉から、尾上……じゃなかった。御上さんとか、親父とかお袋の話とか聞いたら、『それは絶対に子供達に教えるべきだ』とか言っちゃって。読み書きの合間に教えてるんだよ」
『……太壱』
「な、何?急に改まって」
『お前、嫁を大切にしろよ』
「な、なんだそりゃ?」
『まあいい。とにかく、もう少しマメに連絡いれろ。それじゃな』
「え?お、おい!――切っちまいやがった。なんだ、ありゃ」

 この時太壱は、よもや電話の向こう側で、樹が感動の涙を流しているとは、思いもしなかった。
 太壱の嫁が、自分達のした事をどれだけ大切に思ってくれているかを知って、つい感極まってしまったのだ。

「……やれやれ。最近は妙に、涙腺が緩くていかん」

『景継の災い』から、既に十年あまり。
 樹達の『想い』は世代を越えて、確実に受け継がれていた。 

担当マスターより

▼担当マスター

神明寺一総

▼マスターコメント

 皆さん、こん○○は。神明寺です。
 とうとう最後まで……、遅れてしまいました。

「もしかしたら、イラストとか発注する人がいるかもしれないから、余裕を見て11月10日を公開日にしよう!」
 
 と意気込んでみたはいいのですが、感染性胃腸炎で寝込んだりとか色々ありまして、結局今になってしまいました。
 もしイラストを発注したかったのに発注出来なかったとか、希望の絵師さんに発注出来なかったとかいう方がいらっしゃいましたら、それは全面的に私のせいです。ゴメンナサイ……。

 という訳で!
 最後です!
 四州島記も、蒼フロも最後!
 あんまり最後最後言ってると、なんだか世界の終わりでも来そうな気になって来ますが(笑)、もちろんそんな事は無く、皆さんも、私も、余程の事が無い限り、この後も日常が続いていく訳です。
 そうして日常が続いていくと、やがて蒼フロも、四州島の事も忘れられていくのでしょうが(←既に書いた本人が、細かいコトをわすれつつある)、どういう形でもいいので、この先この作品が、皆さんの記憶の中に残っていくようであれば、物書きとしてこれに優る幸せはございません。

 兎にも角にも、皆さんには最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
 もうこれ以後は皆さんと連絡を取る手段も無くなりますので、よろしければ、感想掲示板に一言頂けると嬉しいです(汗)

 今のところ、今後のどうするかとかは全くの白紙なのですが、どういう形であれ、物書きは続けていくつもりです。
 もしこの先、『神明寺』というけったいな(笑)名前を目にする事がありましたら、その時はまた、ご贔屓に願います♪

 では、いずれまた、何処かでお会い出来る日を楽しみに……。 


 平成甲午  秋 霜月


 神明寺 一総


 もー1回くらい、オフイベやんないかな〜!