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【蒼フロ2周年記念】未来の君へ

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円形性技場の戦い

『リバティ・ベル』の近くにあるシックなバー『夢幻』。

「いらっしゃいませ、ごゆっくりどうぞ」

透き通るかのような白い肌が美しいマスター神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)が出迎えてくれる店だが、裏のベッドの上では……。

「ん? いきなりですか?」

「フフ、今日は先手を打たせてもらうわよ」

「駄目ですよ、昼間から。店の準備もあります……」

パートナーにして店員のフォルトゥーナ・アルタディス(ふぉる・あるたでぃす)は問答無用で翡翠をベッドに押し倒すと、キスをし、舌を絡ませる。

そう、毎日こんな調子なのだ。

「相変わらず隙もねえな。
お前だけに、良い思いさせる訳ねえだろ?」

やはりパートナーにして裏方のレイス・アデレイド(れいす・あでれいど)も負けじと翡翠の体を愛撫し始めた。

「ん!! そ、そこは弱いと前から……」

大事故にあったために思うように身動きの取れない翡翠は、
二人の執拗な責めに喘ぐしかない。

と、その時『夢幻』の扉がノックされた。

「ここ、揃え屋『K』さんですかぁ?」

その言葉を聞いて先ほどまで濡れ場に興じていた3人の表情が一変した。
依頼があれば武器でも人でも揃える揃え屋。それが夢幻の真の姿であった。

フォルトゥーナ・アルタディス(ふぉる・あるたでぃす)が脱ぎかけた服を整えて外にでる。

「あなた、空京商事の部長さん?」

「ああ。●もつけてねえのに、なんでこんな目にあうんだか」

男、弥涼 総司(いすず・そうじ)は頷く。

空京商事セクハラ部長として名を馳せていた総司は
OLである南條 琴乃(なんじょう・ことの)の尻を触ろうとした。

結果、「君の今後を決めなくてならない」
と『K』へ向かうことを命じられたのだ。

「南条さんは東京に専用の劇場もある
『四季〜季節を楽しもう〜』の管理者だからしかたありませんね」

「それは別の“四季”だ」

翡翠のボケにレイスが突っ込む。
ともかく多数の契約者が所属する四季を敵に回した(?)とうことらしい。

「フフ。まあ、“円形性技場”の準備は出来ているわ。こっちよ」

総司はフォルトゥーナの案内でドワーフの作った地下道を下っていく。

■□■


揃え屋『K』の地下には地下闘技場のような空間が広がっていた。
特異な性癖を持った金持ちのためにこのような施設が作られ、
昨日は“エリュシオンの性騎士”と“マホロバの太夫”の対決が行われたという。

「今宵の対決この“裸王”が見届けるぜ!」

性技場の中心に仁王立ちする全裸の男天空寺 鬼羅(てんくうじ・きら)が宣言した。
10年の歳月を経て、パラミタ全土の変態から注目される男である。

「オレには服を着た上に
股間にぶっといコテカをつけた紳士にしか見えないがな?」

総司の言葉に鬼羅は笑った。

「てめえもコンジュラーということか。

服を“非物質化”し股間にフラワシ“第三の足(ザ・サードレッグ)”を
装備していることを見抜くとはな」

鬼羅は服を物質化した上で今度は本当に脱いだ。

身につけている(?)のは
イコンほどの大きさもある棒状のフラワシだけである。

(やれやれ。
……あのド変態フラワシ、どんな能力を持ってる?)

と警戒している総司の心を読むかのように鬼羅は続けた。

「お前の“まぐわい”の相手、オレじゃあないぜ」

性技場の一方の門が開いた。
そこから出てきたのは檻に入れられて責められている、
二人の女性であった。

「はぁんっ……も、もっとくださいませぇ」

「はあ……ひぎぃ……いいのぉ……もっとぉ」

秋葉 つかさ(あきば・つかさ)ヴァレリー・ウェイン(う゛ぁれりー・うぇいん)であった。

「ほらよう、もっといい声で泣けよ、メスブタどもがあっ!」

二人のパートナーである蝕装帯 バイアセート(しょくそうたい・ばいあせーと)は檻を引きながらも、二人に鞭をくれていた。

つかさは総司の姿を認め、表情を変えた。

「ぶ、部長!……見ないで、お願いっ、みないで!」

「そう言いつつ、興奮してんじゃねえっ!」

「ひいっ!」

総司はかつてのぞき部の部長だった。
そしてつかさは女子のぞき部の部長だったのだ。

その二人が10年の歳月を経て性奴とセクハラ部長という形で再会した。
皮肉な物だと総司は笑いながら言った。

「で、どんな対決をすればいいんだ?」

「簡単だぁ。この二人を満足させてやってくれねえか?」

バイセアートは語った。10年間の責められたつかさとヴァレリーは、
どんな責めに対しても心の底から反応しなくなったというのだ。

「このままじゃあよ、こいつらスポンサーから捨てられちまうのよ。
……この二人を満足させりゃ、おまえもあいつらも助かる。

悪い話じゃねえだろ?」

バイセアートは粗暴な態度をとりながらも二人の事を心配しているらしい。
とはいえ。

(この二人を満足させる?
ありとあらゆる責めを受けた二人をどうすれば……そういうことか)

総司はヴァレリーに近づいて、尻を触った。
相手が裸である事を除けばいつものセクハラと大差ない。

しかし。

「ひい……俺様に何を…ひっ」

ヴァレリーはこれまでに感じたことない性感に悶えていた。
どのような触り方をすればここまでの快楽をと考える暇もなく……。

「くふぅ……もう、だめえええ」

絶頂に達し気絶した。

「な、何をしやがった!」

「……フラワシか」

バイセアートが戸惑う中、鬼羅の目だけは光っていた。
総司は黙ったまま、つかさに近づく。

「悪いな、セクハラするぜ」

「お、おやめください! やめてくださいませ……ああっ!!」

総司はつかさの胸を触るとつかさは悲鳴をあげて気を失った。
バイセアートはますます理解出来なかった。

「二人とも精根尽きたように寝てる……何しやがった!」

「“時間を止めて触った”」

総司は時間を止めるフラワシを得ていた。それを使ったのだ。

これまでありとあらゆる責めを受けたつかさとヴァレリーとて、
時間をとめて愛撫は受けた事がなかったのだ。

「本来ならあり得ない“時を超えた快楽”ということか……」

「時間を止めたセクハラなんざ、セクハラにもなりゃしねえ。
邪道だよ」

それだけ言うと、総司は性技場を後にした。

「あんな変態(おとこ)もいるとはな」

鬼羅は全裸で見送った。

その後総司は空京商事の社長に就任。
セクハラ社長の誕生であった。