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リアクション
「そちらは社長自らお出まし……だけど、優勝はあたしの『JEWELS/RAW』で決まりじゃん!」
「いやいや、【846プロ】の一大プロジェクトを担う『Flowers』には、優勝の二文字が一番お似合いや!」
楽屋にて、『JEWELS/RAW』のプロデュースを担当するメトロ・ファウジセン(めとろ・ふぁうじせん)と、【846プロ】社長兼プロデューサーの日下部 社(くさかべ・やしろ)が激しく火花を散らし合う。
両者ともこの『アキマス』に向けてアイドルを育成してきたこともあって、思い入れは人一倍強いようであった。
「うわー、なんだかすごいなー。どっちもいい歌を聞かせられるといいね!」
「そうですねぇ〜。皆さんに楽しんでもらえればいいですねぇ〜」(……はう〜、ボクも栄光の舞台に立ちたかったですぅ〜)
メトロの下で雑用係として働いてきたイヴァン・グロムベル(いばん・ぐろむべる)と、社長直々に846プロのマスコット役に指名された望月 寺美(もちづき・てらみ)が、互いのアイドルグループの成功を祈願する。
「お互いに気合の入れようが凄いな……これは私たちも、下手な真似は出来ないな」
「そうですね」
二人のぶつかり合いを目の当たりにしたレーゼマン・グリーンフィール(れーぜまん・ぐりーんふぃーる)とイライザ・エリスン(いらいざ・えりすん)が、そんなことを呟きつつ、同じ目的で集まった生徒たちの下へ登場の順番を知らせに行く。
「うわー、強敵ぞろいとは予想してたけど、思った以上だわー。……でもね、たとえソロだって売れっ子になれるってこと、あたしが証明してみせるわ! タンタン、行くわよっ! ……あ、歌うのはあんたで、あたしは見てるだけだけどねっ!」
「? ふわぁ、眠いのです……」
同じく二人のぶつかり合いを目の当たりにした氷見 雅(ひみ・みやび)が、自ら立ち上げた【381プロ】の実力を世界に知らしめる壮大な目的を掲げて、のんびりと欠伸をするタンタン・カスタネット(たんたん・かすたねっと)の準備に取りかかる。
「流石『アキマス』、これだけのアーティストが集まるとは、話題性も十分。……つまり、ここで優勝を果たすことは【ネネモモ。】、そして『ニャーク・オフィス』の知名度向上に大きく貢献するはず! さあお二方、心の準備はよろしいですか?」
「ええ、よろしくてよ。……うふふ、面白いことになってきたわね」
「あの、お姉さま、本当に出られるのですか……?」(どうしてこういうことになったのでしょう……)
また、楽屋の一角では、ダイソウ トウ(だいそう・とう)が設立した芸能事務所『ニャーク・オフィス』所属のアイドル、キャノン ネネ(きゃのん・ねね)とキャノン モモ(きゃのん・もも)、【ネネモモ。】の姿もあった。
彼女たちのマネジメントを務めるファトラ・シャクティモーネ(ふぁとら・しゃくてぃもーね)に続いて、ブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)とステンノーラ・グライアイ(すてんのーら・ぐらいあい)が楽屋に入り、衣装合わせを行う。
「ぜひここは、『ネネの露出促進』と称して以下の衣装を着ていただくことを提案します」
ブルタがまとめた資料を一読したネネが、それを横から覗き見たモモが、そのあまりに過激な衣装案に硬直し、モモの瞳がスッ、とブルタを射抜く。
「……お姉さまに恥をかかせるような真似は、誰であろうと許されませんよ」
「失礼いたしました。では、こちらの衣装案はいかがでしょうか」
即座にステンノーラがモモとブルタの間に入り、事前にまとめておいた衣装案を提示する。
「既に衣装は完成しております」
言ってステンノーラが、横に置いてあったケースから衣装を取り出し、二人に見せる。ネネのは背中が開いた鮮やかな色のドレス、モモのはゴスロリチックの小悪魔的な衣装であった。
「あら、いい感じじゃない。ええ、これで行きましょう」
「こ、こんなのを着るなんて、恥ずかしい……ですが、お姉さまがいいとおっしゃるのでしたら、その通りにいたします」
すっかり乗り気のネネに対し、モモは今でも後ろ向きな様子であった。
「ダイソウトウ、息子の良雄さんはお元気ですか?」
「……何のことだ? それにどうして俺は、いつの間に審査員などやっている?」
白鋭 切人(はくえい・きりひと)の問いかけに、そして自分が『アキマス』の審査員をしていることに、ダイソウトウが首を傾げる。
(皆さん、素敵……これは私でも、評価を下すのに悩んでしまいそうです)
隣では、飛び入りで審査員として加わったファレナ・アルツバーン(ふぁれな・あるつばーん)が、次々とステージで自らの歌を披露するアイドルに見入りつつ、芸術に対する公平性を発揮せんと、審査を行っていた。
(かー、いつの間に審査員なんてやっちゃってんの!? これ一人でやるの、大変なんだけど……っ!)
そのファレナを遠目に、チラシ作りと運搬を一手に担う羽目になったシオン・ニューゲート(しおん・にゅーげーと)が、楽しげな様子のファレナに全力でツッコミを入れたいのを必死にこらえて、力仕事の連続でプルプルと震え出した手足を堪えつつ作業に没頭する。
「……次は、グループ名【おきらく魔法少女】。行ってくるといいわ」
パッフェルの紹介で、ネコミミを超感覚で生やし、フリルなアイドル衣装に身を包んだ白波 理沙(しらなみ・りさ)と、理沙に無理矢理その衣装を着せた愛海 華恋(あいかい・かれん)がステージに進み出る。
「うおーっ! 萌えーっ!」
「ネコミミハァハァ」
その愛くるしい姿に、その手の属性持ちの観客が熱狂的な声援を送る。
(萌えじゃなーいっ!! あぁんもう、どうしてこんなことにー!?)
当の理沙は、うっすら涙目になりながら横で楽しそうに手を振る華恋を睨む。
「それじゃいっくよー!」
しかし華恋は理沙の非難を一切無視して、曲に入る。
(もー! こうなったらやればいいんでしょー!)
半ば自棄になりつつ、理沙もマイクを握る――。
おきらく おきらく 魔法少女
なんでも魔法で解決しちゃうの
細かいことは気にしない
終わりよければすべて良し☆
おきらく おきらく 魔法少女
可愛く笑って誤魔化しちゃうの
曲が終わり、歓声の中点数が発表される。
( ・∀・)イイ!! (;´Д`)ハァハァ
「はー、楽しかったね、理沙! これからも一緒に、アイドルの星を目指そうっ☆」
「……うぅ、次がないことを祈るわ……」
理沙と華恋が引き上げるのに続いて、グループ名【ろりぱい魔法少女】がステージに進み出る。
「ちょっと、いつ私が魔法少女に!? それに私はロリじゃないわよ!?」
「ですがシズル様、シズル様はそのとても立派なモノをお持ちではありませんかぁ」
突如ステージに上げられた加能 シズル(かのう・しずる)の反論に、豊満な胸を大きく主張するコスチュームに身を包んだ秋葉 つかさ(あきば・つかさ)の艶めかしい声がかけられる。
「ま、紛らわしい言い方しないで頂戴っ! これは好きで大きくなったわけでは――」
「あらぁ、私は胸が、とは言ってませんよぉ? シズル様、何をご想像なされたのですかぁ? ……あはぁん、もしかして殿方の――」
「――――!!」
自分がハメられたことに今更ながら気付いたシズルが、顔を真っ赤にして剣を抜き放つ。
『へへっ、ノせやすいお嬢ちゃんだぜ。んじゃ行くぜつかさ、存分に喘いでこいっ!』
「あぁん……私たちの歌……聴いてくださいませぇ……」
蝕装帯 バイアセート(しょくそうたい・ばいあせーと)がもたらす拘束に、つかさが歌というよりは喘ぎを響かせ、観客を魅了していく。
「……確かに、シズルをアキマスに誘ったのはわたくしですが……これでよかったのでしょうか」
「いや、これはこれでいいんじゃねぇの? 客も喜んでたみたいだしな」
「あ、あはは……見ているのが恥ずかしかったですよ」
ステージ脇で二人を見つめるレティーシア・クロカス(れてぃーしあ・くろかす)と、そのレティーシアの臨時執事として振る舞う本郷 翔(ほんごう・かける)、いつの間に翔がこんな可愛い子と知り合いになっていたことに軽い悪意を感じつつ、レティーシアへの心象を損ねないようにと振る舞うソール・アンヴィル(そーる・あんう゛ぃる)が見守る中、点数が発表される。
( ・∀・)イイ!! (;´∀`)ちょっとトイレ
「うーん、もうちっと行くかと思ったんだが、ま、上々ってとこだな」
「私、二人を労ってきますね」
「はい、お願いいたしますわ」(……でも、こうして皆様と交流を持つことは大切なこと。シズルにとっても、一つの経験にはなったでしょう。……結果はともかく、ですわ)
ステージ脇に駆けていく翔を見送って、レティーシアがふふ、と微笑みを浮かべる。
「もっとぉ……もっとお情けを私にくださぁい……」
「……ああ、もう好きにしてくれ……」
拘束が強すぎてどこかへぶっ飛んでしまった様子のつかさを、シズルがため息をつきつつ舞台袖へ連れて行く。ステージでは次の出場者、【おはよう朝らーめん】が進み出る。
「リフル、優勝したらラーメン食べ放題だよ! 一緒にアキマスの頂点を目指そっ!」
「……うん、分かった」
学園アイドルと銘打ち、パンチラ寸前のミニスカ制服に身を包んだ小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)に乗せられる形で、リフルも同じ格好をしてマイクを握る。
「……考えたわね。胸ではなく脚を見せる……これは高評価が期待できそうね」
「胸と脚は、常に争いを繰り広げてきた要素ですものね」
(あ、あんたたち何の話してるのーっ!?)
何やら冷静に議論を交わすパッフェルとティセラに、セイニィは全くついていけない様子であった。
「えっと、使い方はこうでいいのかな? ……こ、こんな下からなんて、その……見えちゃうよね?」
そして、ステージのすぐ下では、ビデオカメラを構えたコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が恥ずかしがりつつ、カメラを回していく。それは背後の巨大スクリーンに映像として映し出されるのだが、コハクの懸念とは異なり、二人の類稀な運動能力のおかげか、それともラーメンどんぶり模様のエプロン効果か、スカートの下のパンツは決して見えることがなく、それが観客をさらに煽り立てる。
「むむぅ、このままでは【ネネモモ。】が優勝できん。こうなればオレの修行の成果で、リフルを誘惑してくれる……!」
二人のステージに、ダークサイズ幹部として危機感を感じたジャジラッド・ボゴル(じゃじらっど・ぼごる)が、サルガタナス・ドルドフェリオン(さるがたなす・どるどふぇりおん)と共に用意した屋台でラーメンの腕を振るい、完成した特製のラーメンの匂いをステージへと漂わせる。
それは普通の人には感じられない匂いだったが、十二星華きってのラーメン通であるリフルならば、必ずや匂いに惹かれて歌が疎かになる、との確信からであった。
「…………」
そして事実、リフルの動きが途中からおかしくなり、ステージの端へと吸い寄せられるように移動する。
「あっ、リフル!? ……誰、誰が私たちの邪魔をしているの?」
異変に気付いた美羽が、リフルの先に視線を向けると、明らかに場違いな屋台が見えた。
「私たちの邪魔をするなーっ!」
そんな声と共に、ステージから美羽の飛び蹴りが屋台に炸裂する。
「この屋台、実はハリボテなのよーっ!」
「お、おのれえぇぇ!」
サルガタナスとジャジラッドが無念の声を残し、キラン、と青空に二つの星を作る。ステージから屋台に飛び蹴りを見舞い、またステージに戻るまでの一部始終がスクリーンに映し出されると、観客の間から拍手と歓声が湧き起こる。無論、その間もスカートの中身は見えていない。
「みんなー、ありがとー!」
曲が終わり、美羽とリフルが声援に答える中、点数が発表される。
( ・∀・)イイ!! (*・∀・)ぱんつはいてない!
勝負は現時点では、混戦模様を呈していた――。
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