空京

校長室

【2020修学旅行】東西シャンバラ修学旅行

リアクション公開中!

【2020修学旅行】東西シャンバラ修学旅行
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リアクション

 
●秋葉原・特設イベント会場
 
 秋葉原の大通り、普段は多くの車でごった返す通りも、今日は人、人、人の群れが出来上がっていた。
 終日歩行者天国と化したそこでは、各種様々なイベントが執り行なわれていた。
 
「はーい、一般参加者は左手、ステージ出場希望者は右手に並んで、書類に記入お願いしまーす!」
 皇祁 璃宇(すめらぎ・りう)が声を張り上げ、本日開催のイベント『AKIHABARAM@STER』、通称『アキマス』参加者に対して受付業務を全うする。
(うひゃー、すごい人の数。……ここでもし歌うとなったら、どんな気分なんだろ)
 璃宇がチラ、とステージに視線を向けて、あの場に自分が立った時のことを想像する。自分の歌で盛り上がる観客たち、一杯の声援に答える自分……
(……うーん、それにはまだ足りないかな? 出場者もすごい人達ばかりみたいだし)
 出場者の顔ぶれを思い返して、璃宇がふぅ、とため息をつく。『アキマス』開催に合わせて特別ゲストとして招かれた『歌って踊れる魔法少女 Twelve Twincle Star』、通称『TTS』を始めとして、出場者は皆自分より外見的にも実力的にも上であるように思われた。
(だから、璃宇は璃宇なりに、今日のイベントを盛り上げる!)
 ぐっ、と拳を握って、隣でちょこんと座っているトクミツ・オヅカ(とくみつ・おづか)に呼びかける。
「一緒に頑張ろ、トクミツ!」
 こくり、と頷くトクミツに頷いて、璃宇が受付業務に奮闘する。
「『TTSファンクラブ』只今入会者募集中です。入会特典はメンバーの『TTS』衣装版、及び十二星華装束版のプロマイドです」
 その隣の仮設テントでは、宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)が『TTS』のファンクラブ結成を企画し、この場にて入会者を募っていた。
(アイドルグループにはファンクラブがつきもの! ……そして、決して裏切ることのない新たな『ティセラ親衛隊』を結成するわ!)
 そこには、『TTS』のリーダーであり、かつ十二星華のリーダーでもあるティセラ・リーブラ(てぃせら・りーぶら)への想いが込められていた。
(ふぅん、最近の魔法少女ってこうなんだ? ま、祥子がそうするってんなら付き合うよ)
 横で、那須 朱美(なす・あけみ)が希望者に書類を渡したり、身分証明書の確認等の作業を行う。書類は一般人用(番号の先頭に『C』がつく)と契約者用(番号の先頭に『S』がつく)に分かれていた。
「よし、00001番ゲットだ!」
「流石です、マスター」
 そして、一番に申請を済ませた武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)が、早速発行された『S00001』の会員証を握り締めながら、重攻機 リュウライザー(じゅうこうき・りゅうらいざー)と共にメンバーであるセイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)の下へと向かっていく。
 
 その頃、『TTS』のメンバーが控える楽屋では、ちょっとした騒ぎが発生していた。
「俺がTTSをプロデュースするぜ!」
「いやいや、ここは俺にプロデュースを任せてもらおうか」
 何と、トライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)シルヴィオ・アンセルミ(しるう゛ぃお・あんせるみ)の二人が同時に、『TTS』のマネジメント業を引き受けたいと申告してきたのだ。
「うーん、パッと見た感じだと、トライブよりはシルヴィオさんの方が合ってそうだけど、トライブ、退くつもりないだろうなあ……」
「お二人で仲良く、というわけにはいかないのでしょうか」
 二人の争いを、ジョウ・パプリチェンコ(じょう・ぱぷりちぇんこ)アイシス・ゴーヴィンダ(あいしす・ごーう゛ぃんだ)が見守る。そしてメンバーであるティセラ、パッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)、セイニィ、リフル・シルヴェリア(りふる・しるう゛ぇりあ)も、この事態をどう解決したものか頭を悩ませていた。
「……こういう時は、私たちのライバル的存在を用意するといい、と聞いた」
「ライバルぅ!? ……ま、お決まりっちゃお決まりよね。でも誰が――」
「……一人、いる」
「……ええ、いますわね。かつてわたくし達と剣を交えたあの方が。でも彼女はもう――」
 
「その役目、私が承りましょう」
 
 その時まさに、ティセラたちが話をしていた人物、ミルザム・ツァンダ(みるざむ・つぁんだ)が現れる。
「あなたは……どうしてここに?」
「とある方からお話を伺いました。……私という存在が必要で、かつ私にその役目をこなすだけの力があるのでしたら、起たない理由はないでしょう」
「……あなたがそこまで言うのでしたら、わたくしは何も言いませんわ。……では、あなたは何と名乗りますの? わたくしたちの対抗馬としてステージに出るのであれば、相応の名前をつけなくてはいけませんわね」
「それはもう既に決めています。今日から私は……」
 息を吸い、ミルザムが決意の篭った瞳をティセラに向けて、告げる。
 
「シリウス……いえ、『【M】シリウス』です!」
 
 
「そう、これでいい……十二星華ばかり目立つのは理不尽だ。俺はこの流れに反逆する……! まだだ、まだ終わらんよ!」
 ティセラに宣言するミルザムを見つめる湯上 凶司(ゆがみ・きょうじ)が、眼鏡の奥で不敵に瞳を光らせる。
(凶司のアホはともかく、十二星華だけアイドル扱い、ってのもね。ミルザム様は歌と踊りのスペシャリスト。対抗馬として最適でしょ。なんなら私たちも一緒に参戦したっていいしね)
 その凶司を冷たい視線で射抜きつつ、ディミーア・ネフィリム(でぃみーあ・ねふぃりむ)が今後の展開を面白そうといった様子で見守る。
 
 その後、『TTS』はトライブ、『シリウス』はシルヴィオがプロデュースすることに決まった。
 かつての戦いが、今度はステージで繰り広げられることになる――。
 
「……はい、私の方は特に異常ありません。このまま監視を続けます」
 ステージ直ぐ傍で警備を行っているグレン・アディール(ぐれん・あでぃーる)への連絡を切って、ソニア・アディール(そにあ・あでぃーる)が会場の真上を箒に乗ってゆっくりと飛ぶ。グレンが地上から、ソニアが空中から、『アキマス』を無事に進められるようにと目を光らせていた。
(皆さんにとって今日が素晴らしい思い出になるよう、私も頑張らないと!)
 自身に搭載しているプロジェクターをいつでも使用できるように待機させながら、ソニアがぼんやりと光る粉を空から降らせると、それは光を受けて粉雪のように地上へと舞い降る。
(綺麗ですね……イベントが無事進められるよう、私も精一杯お手伝いしましょう)
 差し出した掌に光る粉を受け止め、一瞬の輝きを見届けた度会 鈴鹿(わたらい・すずか)が、『アキマス』のスタッフとして活動するべく、裾の長いいわゆる『正統派』のメイド服に身を包み、笑顔を浮かべて接客を担当する。
(ふむ……ここでもし、十二星華以外のロイヤルガードからもアイドルを出せば、ウケるかの?)
 そんな鈴鹿を、こちらは和のテイストが織り込まれたチャイナ服に身を包んだ織部 イル(おりべ・いる)が、何か企みを思いついたように目を光らせて見つめていた。
「はいそこ、線越えないで! ……いやぁ、何でこうなったんだろ……」
 少しでも前の方で観覧しようとする観客を、六鶯 鼎(ろくおう・かなめ)が手際よく押し留める。本人としては全くその気はなかったのだが、彼の過去の経験に基づいた列整理は、ともすれば暴徒と化しかねない観客を上手く制御していた。
「おーいルディー? 生きてるー?」
 ふと思い立ってハロルド・メルヴィル(はろるど・めるう゛ぃる)に呼びかけてみるが、返事はない。彼女は早々に熱気でダウンしてしまったようだ。
「……こっそり氷術! ったく、やってらんないよ――こらそこぉ! ゴミを投げない!」
 愚痴りつつも、いわゆるオタクの乱れた行為を見逃せない鼎であった。
 
「皆様、大変長らくお待たせいたしました。
 これより、『AKIHABARAM@STER』を開催いたしますわ!」

 
 スポットライトがステージを照らし、そこに先程曲を披露した『TTS』のメンバーと、かつての踊り子の衣装に身を包んだ『【M】シリウス』ことミルザムが姿を現す。ミルザムを目にした観客の中から、「おい、あれってろくりんピックの……」といった声や、契約者の中からは懐かしむような声が聞こえてくる。
「うお、ミルザムじゃねぇか! こりゃオレもだまっちゃいられねー! おいリーブラ、オレたちも行くぞ!」
「は、はいっ。……ティセラお姉さま、ぜひわたくしと『二人はリーブラ』を……!」
 シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)リーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)も、ミルザムが登場するや否や慌ててステージ横の控え室へと駆け込んでいく。
「本日はお集まりいただきありがとうございます。これほど多くの皆様に見ていただけて、とても嬉しく思いますわ」
「今日は突然ではありますが、私も一アイドルとしてステージを盛り上げていきたいと思います。皆さん、どうぞ楽しんでいってください」
 ティセラとミルザムがマイクを掲げると、それを合図にしてくす玉が割られ、辺り一面を紙吹雪が舞う。観客が早くも最高潮に達する中、『アキマス』が開始されたのであった――。