空京

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戦乱の絆 第2回

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戦乱の絆 第2回
戦乱の絆 第2回 戦乱の絆 第2回

リアクション


ゴーストイコン・パイロット、野戦病院・ゴアドー

ゴーストイコンとの戦闘で、パイロット達が徐々に疲弊していく中、
グンツ・カルバニリアン(ぐんつ・かるばにりあん)
プルクシュタール・ハイブリット(ぷるくしゅたーる・はいぶりっと)のセンチネルが、
西シャンバラの量産機・クェイルを、実剣で串刺しにする。

「声が聞こえる。イコンが勝手に動き出してしまうんだ!!」
プルクシュタールは、隙を作るためにわざと叫ぶ。
グンツとプルクシュタールの目的は、
東西シャンバラの対立を決定的なものにすることであった。
東シャンバラのセンチネルは、鏖殺寺院の技術協力を受けていたことから、
操られてしまうのではと心配する者もおり、それを利用しているのだった。

しかし、実際には、そのような装置はなく、憶測にすぎないのだが、
緊張した戦場で動揺を走らせるには十分な行動だった。

「操られるまでもない。オレは自分の意思で西側を攻撃しているんだからな!」
グンツは、歯をむき出して笑い、さらに、クェイルを攻撃しようとする。

そこに、
ジャジラッド・ボゴル(じゃじらっど・ぼごる)
サルガタナス・ドルドフェリオン(さるがたなす・どるどふぇりおん)
ゴーストイコンが飛来し、
学生達に攻撃を始める。
「どこかで見ているんだろう?
あんたなら東シャンバラのイコンを操れるはずだ。戦争の火種を撒いてやろうじゃねえか?」
「これで東西の亀裂は決定的ね。全てはあなた達のシナリオ通りって事かしら?」
ジャジラッドとサルガタナスは、
謎の声の主に呼びかける。

(よくわかってるじゃないか! そのまま破壊を続けるんだ、そのままねえ)

ジャジラッドとサルガタナスに、
愉快そうな声が返ってくる。

天空寺 鬼羅(てんくうじ・きら)
リョーシカ・マト(りょーしか・まと)
榊 孝明(さかき・たかあき)
益田 椿(ますだ・つばき)が、
それぞれ搭乗するイーグリット2機が、
グンツのセンチネルとジャジラッドのゴーストイコンを攻撃する。

「やっぱり怪しいと思ってたぜ! 往生せえやああああ!」
鬼羅は、リョーシカの報告を受け、
グンツのセンチネルをビームサーベルで薙ぎ払う。
孝明も、ビームライフルでジャジラッドのゴーストイコンを攻撃する。
鬼羅と孝明は天御柱学院パイロット科に所属しており、イコン操縦の訓練を受けている。
それに比べ、グンツやジャジラッドはイコンにまだ乗り慣れていない。
さらに、イーグリットとセンチネルやゴーストイコンでは性能差が明らかである。

攪乱に成功したことを確認すると、
グンツとジャジラッドは身をひるがえし、撤退を開始する。

「待てやこらあああああ!」
鬼羅が叫ぶが、周囲には無人のゴーストイコンも多数いるので、
取り逃がしてしまう。

一方、イアン・サールは気にしないで作戦を続行する。
ゴーストイコンが大量に発生してるので、
強化人間を乗せたシュメッターリングを盾にし、攻撃を防ぐ。
「やめろ! パートナーを殺す気か!?」
孝明は警告するが、イアンは聞かない。
「こいつらはこのために連れてきているようなものだ。
……うっ!?」
しかし、パートナーロストの副作用の頭痛がイアンを襲う。
「うるさいぞ、お前ら!
黙れ! 向こうへ行け!」
イアンは、幻覚を見ている。
死んだパートナー達の残留思念が澱のようにたまっているのだった。



その後、大きなトラブルは発生せず、
全員の協力で、ゴーストイコンの「繭」を破壊することに成功した。

ミシェル・シェーンバーグ(みしぇる・しぇーんばーぐ)は、
コックピットから身体を乗り出して、ディテクトエビルを使用する。
「これが、ナラカの魍魎……?」
ゴーストイコンからはがれおちた怨霊に、ディテクトエビルが反応する。

問題も発生していたが、天学生と東西の学生達は、
ゴアドー島付近のゴーストイコンを殲滅させて、
先日のゴーストイコン戦の雪辱を晴らすことに成功するのだった。



帰還後、
榊 孝明(さかき・たかあき)は、
イアン・サールに詰め寄った。
「貴様、味方を何だと思ってる!?
それに、ろくりんピックでテロを行ったグンツ・カルバニリアン(ぐんつ・かるばにりあん)を、
なぜ、鏖殺寺院パイロットにした!?」
イアンは、無視して立ち去ろうとする。
「待て!」
肩をつかもうとする孝明を止めて、
パートナーの益田 椿(ますだ・つばき)は、イアンに言う。
「あんた、いい死に方しないよ」
「ハッ! 強化人間風情が!」
鼻で笑い、イアンは去る。

拳を握りしめる孝明に、椿は言う。
「大丈夫、あたしはあんな奴の言うこと気にしないよ」
「ここはまるでバベルの塔だな……」
言葉による説得はできないのか。
目標通り被害は最小限ではあったが、孝明は怒りとむなしさに押しつぶされそうになった。

■野戦病院・ゴアドー


「ごめん、かなり遅れちゃったね」
 エミン・イェシルメン(えみん・いぇしるめん)は、輸送機を降りながら言った。
「いえ、むしろ、よく辿り着いてくれました」
 ゴアドー島の野戦病院からエミンと連絡を取り合っていたヤン・ブリッジ(やん・ぶりっじ)が見上げた先では、ゴーストイコンなどと契約者たちのイコンが激しい戦いを繰り広げていた。
 輸送機自体には幾つかの傷が走っていた。
「ある程度の決着が付くまで島は出られなさそうだけど、安心して」
 エミンは微笑みながら、運んできた物資の資料をヤンに渡した。
「前の結果から必要な種別と量を分析したんだ。その上で、多めに持ってきてるから、少しは余裕があると思う」
「さすがです」
「これでも補給科を志しているからね。さて、急いで運ばなきゃ」
 輸送機は危険を避け、予定していた地点より離れた場所に着陸していた。
 再び飛ぶわけにもいかないから、ここから野戦病院までは、小型飛空艇などで物資を運ぶしかなった。
 


ゴアドーの野戦病院には、
ゴーストイコンとの戦闘や、
グンツやジャジラッドの襲撃で負傷した学生達が運ばれてくる。

赤十字腕章をつけた伊礼 悠(いらい・ゆう)は、
怪我人にヒールを使ったり応急手当をした後、
担架代わりの小型飛空艇に怪我人を乗せて、
護衛役のディートハルト・ゾルガー(でぃーとはると・ぞるがー)とともに搬送していく。
「前回だってできたんです……今回だって大丈夫……!」
(怖くないなんていったら、嘘になるけれど……でも……!)
パートナーに守ってもらっているということから、
悠は気持ちにゆとりが生まれていた。
そのことは、治療時に冷静な判断を行うことができ、
救助にも確実に役立っていたのだった。
悠の横顔を見て、小型飛空艇に伴走するディートハルトは、
パートナーの成長から、今までと違う感情が湧きあがるのを感じる。
(私は守護天使なのだ、悠を守りたいと願うのは当然のこと……。
では、この気持ちはなんだ……?)

同じく赤十字の腕章をつけている
高峰 結和(たかみね・ゆうわ)も、
今回も東西の区別なく、救助活動を行っていた。
禁じられた言葉で魔力を増強し、
SPリチャージで精神力の回復を心がける。
重傷者にはグレーターヒールやリカバリを使用し、
簡単な治療には天使の救急箱を活用する。
(この人達にもきっと、護りたい人達がいたはず……。
だから、戦って傷ついたんですよね)
結和は、パートナーや友人達、大切な人を、負傷者達に重ねて見る。
護るために傷付くことを厭わない人々のことを。
実際に、負傷者はイコンの搭乗者ばかりであったために、
結和や友人達と年恰好の近い者が多い。
(ああ、私は……私達は契約者なんだ)
グレーターヒールを発動させて、重傷者の傷がふさがっていく様子を見ながら、
結和は思う。
(だから……壊したり、傷つけあうだけじゃなくて。
護るためにも戦えるんです!)
パートナーのエメリヤン・ロッソー(えめりやん・ろっそー)は、
回復魔法の使えない自分を歯がゆく思いながらも、
応急手当で率先して軽傷者の治療を行っていた。
超感覚や殺気看破で、周辺の警戒も怠らない。
幼いころから姉のような存在だった結和は、
いつのまにか経験を積み、プリーストとして一人前になっていた。
(僕も強くなれてる、かな)
思えば、イルミンスールの新入生歓迎会は、今年の夏の初めの出来事で、
あれから、とても、とても、たくさんのことがあった。
「結和」
「うん、重傷の人だね!」
パートナーの後姿を見て、エメリヤンは、自分もこの人を護りたいと思うのだった。

小林 恵那(こばやし・えな)も、悠やディートハルトと同じく、
小型飛空艇を担架代わりにして、重傷者を運んでいく。
「皆さん、元気を出していきましょう!」
恵那は、驚きの歌を歌う。
パートナーのロックウェル・アーサー(ろっくうぇる・あーさー)をはじめ、
回復魔法を使っていた者達は、
恵那の歌声に、再び力が湧いてくるのを感じる。
恵那の歌声を聞いている間に、ロックウェルもいつのまにか歌を口ずさんでいた。
魔法的な効果があるわけではなかったが。
「……踊るなよ」
「踊りませんよっ!」
歌うだけでなく、踊るのも大好きな恵那に、ロックウェルは照れ隠し半分で言う。
いつのまにか、野戦病院のメンバーだけでなく、
負傷者達も、恵那と一緒に歌を口ずさみはじめていた。
誰かが提案したわけでも、強要されたのでもなかったが、そうすれば勇気が出ると思ったのだ。