空京

校長室

開催、空京万博!

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科学と魔法〜地球とパラミタを繋ぐ技術の絆

 方や科学、方や魔法世界。この二つの世界はまったく違った歴史を歩んできた。浮遊大陸パラミタと地球がつながったことにより生まれた様々な『もの』、文化、そして『契約』を結んだパラミタ人と地球人の思い出等、両世界を繋ぐ『絆』を紹介していきたい。柳玄 氷藍(りゅうげん・ひょうらん)椎名 真(しいな・まこと)の展示にはそんな意図がこめられていた。そして子供にもわかりやすく、ということで、『火術』を使用してのカルメ焼き作成体験イベントも同時に行うことにしていた。
氷藍のパートナーの真田 幸村(さなだ・ゆきむら)は、現在パビリオンの警備に回っており、展示のほうにはやってきていない。

「とにかくこのセクシィなコンパニオン衣装でバッチリ決めて、お客を呼び込んで盛り上げるぞ!」

氷藍は団旗を持ち腕章をつける。眠たげな表情に、体にぴったりフィットしたウルトラミニのワンピースが独自の色気をかもし出していた。

「いざとなったら【誘惑】を使って面白そうな奴らを片っ端からハンティング……
 
 もとい! もっと参加者やお客さんを増やーす。んじゃ頼んだよー」

 腕章をつけ展示名の書かれたスタッフTシャツの真と東條 カガチ(とうじょう・かがち)七枷 陣(ななかせ・じん)、白衣風上着を羽織ったコンパニオン制服の双葉 京子(ふたば・きょうこ)エヴァ・ボイナ・フィサリス(えば・ぼいなふぃさりす)、それに小尾田 真奈(おびた・まな)ら6人に後を任せ、氷藍は出て行った。

「さてと、分担だけど……。俺は裏方のほうに専念するかな。
 
 体験型が多いから、展示物のチェックは常にそして念入りにしないといけないしな。

 使用する消耗品の手配、受け取りに用意もある」

真が言った。カガチがすぐさま、

「SSLのメンバーとしてここは一つけっぱらないとなー。俺も裏方で真と巡回とかするよ。

 ダブルチェックのほうが良いだろうしな」

「私は展示説明や案内を引き受けるよ。あと、カルメ焼きの方も」

京子が言う。エヴァも頷き、

「私は『魔法を動力に〜賢人のプロペラ』の展示説明をしますね。

 実演展示だから、1人はついていないと」

陣はふんふん、と頷いた。

「したら、オレはビラ配りや呼び込みで動くことにするぜ。

 真奈は京子さんと案内の方頼むわ」

「はい、ご主人様。京子様達と協力いたしまして、お客様達の案内を致します」

真奈は丁寧に返答し、にっこり笑った。

「んじゃ、各自仕事開始だ!」

 現在パビリオンに天貴 彩華(あまむち・あやか)を連れて遊びに来ていた天貴 彩羽(あまむち・あやは)は案内板を見て、つぶやいた。

「久しぶりにのんびりしたいわね。なになに? 科学と魔法……地球とパラミタを繋ぐ技術?

 研究者としては興味あるわね、なおかつ彩華のオヤツもゲットできる……と。ここにしましょう」

「ん? おやつ?? 甘いものかな??」

彩華が目を輝かせる。彩羽は説明をさっと読んだ。

「カルメ焼き……って書いてあるわね。 原料はお砂糖みたいだから、甘いと思うわ」

「カルメ焼き〜カルメ焼き〜♪

 おいしいかな〜たのしみですぅ〜」

 リクト・ティアーレ(りくと・てぃあーれ)ワルター・ディルシェイド(わるたー・でぃるしぇいど)に連れられて万博会場へとやってきた。にぎやかなところが大好きなリクトは、普段にもまして、すっかりハイテンションになっている。

「科学と魔法〜地球とパラミタを繋ぐ技術の絆〜に遊びに行くぞ! 

 カルメ焼きっていうの、俺はよく知らないけど頑張って作るんだー!」

「そうかそうか、わかったわかった」

ワルターは嘆息した。まったく、リクトのお守り役とは……。

 その朝。鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)は密かに思っていた。

(お祭りは良いんですが、何かハプニングに巻き込まれそうな予感が。

 ……行くのめんどくさくなって来ましたが、行かなかったら怒られるだろうしなぁ)

だが、口に出してはこう言った。

「氷藍ちゃんが【シャンバラと地球・絆】って出し物をしてるので見に行きましょうか……

 ……少しだけですがお手伝いもしましたし」

パートナーの常闇 夜月(とこやみ・よづき)の方も、そのあたりは心得たものである。

(貴仁様のことですから見張ってないと行かなかったりするんでしょうね……

 気が進まないのは見え見えです。わたくしが引っ張って、ちゃんと行くようにしなければ……)

「陣中見舞いに行くとの事ですので差し入れは必須ですわよね?」

「そ、そうだね……」

「差し入れは行きがてら、栄養ドリンクと周りで売ってる屋台物を仕入れてまいりましょう。

 貴仁様が良いと思う屋台物を選んでくださいませ」

やっぱり引っ張られていくことになるんだな、と、貴仁は思った。せめてトラブルに巻き込まれませんように。

 瀬島 壮太(せじま・そうた)は、真と同じSSL所属なのだが、今回準備や手伝いは手が回らなかったため、せめて見学者として参加しようと思い、ミミ・マリー(みみ・まりー)を連れて行くことにした。ミミが遊んでいる間に、雑用を手伝っても良いだろう。

「カルメ焼き体験会ってのもやってるみてえだ。ミミは食うのが大好きだから行きたいだろ?」

「うん、僕行ってみたい。カルメ焼きってお菓子なのかな?」

「砂糖を使った菓子だな。

 オレはカルメ焼きみたいに甘ったるいのは好きじゃねえけど、甘いもんが好きなら良いんじゃねえか?」

「わぁ、楽しみだなぁ」

さて一転、展示の方は……なかなかの人出である。

「パネルに手を当てると、あなたの魔力によって神秘的な装飾を施されたプロペラが回る仕組みになっています!

 回せたらメイガスの素質があるかも?! 

 パートナー等と手を繋ぐなどして力をあわせればもっと回せるかもしれませんよ!」

エヴァ担当の賢人のプロペラは、プロペラの回転がよければカップルの相性がいい、などという噂もあいまって、仲を確かめたいというカップルで賑わっていた。うまく回らず不仲になったら、と心配になったたエヴァは、さきほどカガチが回ってきたときに聞いてみたのだった。カガチは笑って、

「ああ、これな、実はちょっとの魔力でそこそこ回るように作ってあるんだ。

 回らないってことはまずないし、それが原因で恋人間のトラブルにはならないだろう。

 安心して宣伝したらいいよ」

と請合ってくれたのだった。

 真は、通称『うごさん』の様子を見にやってきた。機晶技術で動く、黒く蠢く謎生物という触れ込みだ。自律系なので、機嫌(?)が悪いと噛むのである。様子を見ているところへ彩羽が彩華を連れてやってきて、真をに質問を浴びせ始めた。

「機晶機とは違うの? 思考システムは何を使っているのかしら?」

「あ、そこは、機晶技術を使っているということでですね……思考システムは……」

「技術用語の氾濫する質疑応答。周囲の一般客らにはとてもついていけない内容だ。周囲から人気もなくなり、彩華はしばらく我慢していたが、すっかり退屈してしまい、うごさんにおもむろに手を出し、齧られてしまった。

「わ〜〜ん、痛い〜〜!」

「わ、すみません!! お怪我は??」

あわてる真だったが、怪我はないようだ。

「大丈夫。 ……ほら、わかったわよ、カルメ焼き体験会に行きましょ」

「わ〜〜い! カルメ焼き〜!!」

すっかり機嫌が直った彩華である。体験コーナーにやってきていたリクト、ミミとすっかり仲良くなって、真奈と京子の説明にしたがってカルメ焼きを作って楽しんでいる。京子が皆に、卵白と重曹、それに砂糖、入れ物等を手渡す。

「はーい、こちらは重曹です。膨らし粉ですねー。ここに、卵白を混ぜてクリーム状にしてくださいねー。

 ふわっとしてきましたか〜?」

真奈があとを引き取って説明する。

「お砂糖を、少しのお水と混ぜて、こちらの容器に入れます。

 焦げないように火術で調整しながら、この温度計で温度を見てくださいね。

 125度〜130度になったら、火からおろして、こちらの乾いた布の上に容器ごと置いてください」

あとは火傷の危険もある。京子と真奈は、参加した人の間を回って、注意を呼びかけつつ、重曹投入のタイミングを指導してゆく。

ミミは焦がしてはいけないと思い、火術の微調整に集中している。

「おおおおおおお、すげー!!」

「うわ〜〜!! 見て見て、溶けたお砂糖がぶわーって膨らんだよ!!!!」

リクトと彩華が、大歓声を上げる。

「ワルター!!! 見て見て、俺が作ったんだぜ!! えへん!!」

「……そーかそーか。よかったな」

やる気なさげに褒めるワルターの様子すら眼中にないくらい、リクトははしゃいでいた。

「……ま、リクトのアホがこの程度で済むなら、ありがたいか。

 なんかやらかす心配はなさそうだし」

ワルターは皮肉っぽく言って、壁に寄りかかった。壮太はミミが多少お姉さんっぽく振舞っているのを見て、通りかかった真に手伝いを申し出たが、ふと不安げな表情を浮かべていった。

「……カルメ焼き体験しねえからって、うごさんに食われることはねえよな?」

「いや……うごさん、有機物は食わないから」

そのころ陣は、雨雲発生装置のコーナーで呼び込みをしていた。

「氷術と火術を応用して作った雨雲発生装置があるでー!

 ほら、これや。ポチッと押して雨雲作ったりして楽しんでいってくれなー」

そばにいた子供が、喜んでボタンを押す。見る見る人工の雨雲が発生し、陣の頭上に雨が降り注いだ。見物客がどっと受ける。

「……いや雨くらいでな? 凹んだりしてねぇぞ! 絶対してねぇぞ!

 楽しんでくれたなら何よりやー」

よりによってオレのアタマに雨降らんでも……。本心では少々凹みつつも、陣は気を取り直して呼び込みを続けたのであった。

 貴仁は夜月と、バスケット一杯のドリンク剤と、あたりの屋台で買った軽食を山のように抱えてやってきた。

「差し入れですよ〜」

「どうぞ皆様でおあがり下さい」

「いやぁ、これは有難いねー」

カガチがニコニコと差し入れを受け取る。真も嬉しそうに言った。

「ありがとう! 休憩時間のメンバーからいただくことにしますよ。

 忘れないように……。タイムテーブルを確認してインカムで連絡しなくちゃね。

 明日の為の準備も並行して考えなきゃな」

運営陣は夜までもうひと頑張りである。