空京

校長室

【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆

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【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆
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リアクション


地球の戦い 7

 ――日本、東京湾上空。儀式場第二防衛ライン。
「やはりあれだけの数がいれば、突破してくるものもいるか」
 土佐の司令室で、湊川 亮一(みなとがわ・りょういち)は艦隊の指揮を執っていた。
 ウィスタリア加賀が土佐の左右を固め、それぞれからイコン部隊が発艦し、防衛網を構築している。
「敵部隊接近。なおも増加中です」
 高嶋 梓(たかしま・あずさ)が状況を報告した。どうやら、怪物たちはある程度こちらの戦力に合わせてその姿を変えるらしい。
 こちらが艦隊を組めば、あちらにも同様のサイズのものが現れる。実に厄介なものだ。
「だが、的は大きければこちらの攻撃も当てやすい。味方イコン部隊を援護しつつ、敵母艦型を叩く」
 土佐のスタッフに指示を出し、荷電粒子砲の発射準備に入る。
『こちら加賀。発射準備完了』
『こちらウィスタリア。こちらも、攻撃準備完了しました』
 加賀の大田川 龍一(おおたがわ・りゅういち)、ウィスタリアのアルマ・ライラック(あるま・らいらっく)から通信が入った。
「本艦隊はこれより戦闘に突入する。まずは敵の密度を減らし、残りをイコン部隊をもって叩く。復活してくる敵には、砲撃で対処する」
 全艦戦闘配置。準備は完了だ。
「荷電粒子砲――斉射。怪物を薙ぎ払え!」
 一斉に荷電粒子砲が放たれ、怪物たちが消滅していった。火力ではこちらが圧倒的に勝っている。
「攻撃隊、全機発艦。残存部隊の掃討に当たれ」
 エンペラー・オブ・エイコーンによるイコン部隊が、土佐から発艦し、敵陣へと突入していく。
『敵増援、出現します』
『もう復活してくるのか。当初のデータよりも早いな』
 加賀にて天城 千歳(あまぎ・ちとせ)からの報告を受けた龍一が呟いた。
「数は多いが、個々の性能は決して高くない。儀式が終わるまで持ちこたえれば、こちらの勝利だ」
 とはいえ、こちらのエネルギーは無限ではない。
 長期戦に持ち込むとなれば、こちらも消費を抑える必要がある。
「ここからはしばらく支援に徹する。イコン数機を艦隊護衛に回す」

「数で押すつもりのようだが、これ以上進ませるわけにはな」
 岡島 伸宏(おかじま・のぶひろ)の駆る天雷は艦隊の直援として随伴し、怪物の群れと対峙した。
「伸宏君、11時の方向から敵機接近中よ」
 索敵を行う山口 順子(やまぐち・じゅんこ)が言う。
 戦術ネットワークを通じ、H部隊では常時データの共有が行われており、レーダーでは広範囲に渡って敵を捕捉している。
「ここはもう、射程圏内だ」
 天雷のバスターライフルが火を噴いた。直撃した怪物が爆ぜる。
 しかしその後ろから、数機のイコン型が続いていた。
「順子、他に敵は?」
「付近には、前方の機体のみよ」
「ならば……」
 スラスターを吹かせ、天雷が前に出た。それを、随伴するプラヴァー二機が援護する。
 換装。大型超高周波ブレードをもって、敵機を一気に斬り伏せた。
「……敵の復活の間隔が早くなってる? あまり出過ぎるのは危険ね」
「了解。一旦後退しよう」
 敵をけん制しつつ、後退を行う。怪物たちは今のところ、それほど強くはない。そのため、弾薬とエネルギーの消費はそれほどでもなかった。少なくとも、伸宏たちは。
「随伴機から通達。弾薬の40%になったわ。ここからだと、土佐に戻るよりもウィスタリアでの補給の方が効率がいいわ」
 随伴機のうち一機の弾薬が減っていた。天雷に至っては30%を切ったら補給、と決めていたが、援護を安定して行ってもらうためにも、早めの補給が必要だと判断する。
 
「よし、補給を行おう。それと、軽微とはいえ機体に損傷が見られるから、そこは修理しよう」
 ウィスタリアにて、柚木 桂輔(ゆずき・けいすけ)が着艦したプラヴァーの補給、整備を始めた。
 ここでは艦隊に付随する部隊の整備が行われており、地球勢力の戦力は地上のベースに帰投するのが基本となっている。とはいえ、状況によってはこちらに連絡が入り、応急処置を行うこともあった。
「これでよし……と。システムチェック、オールグリーン。いつでも発進可能だ」
 回復した機体を送り出し、桂輔は再び整備に戻った。

* * *


 ――日本、東京湾上空。儀式場第一防衛ライン。
「2人とも、来てくれてありがと」
『こういう地球の危機に動くのが、アタシらの役目だからね。F.R.A.G.および聖カテリーナアカデミー“聖歌隊”は、全力で戦うよ』
『……絶許(あんな化物どもの好きにはさせない)』
 ザーヴィスチを駆る富永 佐那(とみなが・さな)――ジナイーダは、地球勢力の一員として、東京までやってきた。
「この怪物、自衛隊のイコン部隊には手に余る相手ですわね」
 エレナ・リューリク(えれな・りゅーりく)が声を漏らした。自衛隊の誇る精鋭機イザナギ、イザナミは第二世代機でありながらも第三世代機と比べ遜色のない性能を誇るが、地球における契約者は多くない。数の上では劣勢と言わざるを得なかった。
『ま、数が多くていくらでも復活してくるっていうなら、スコア稼ぎも捗るよね。
 いっちょ張り切っていきますか』
『援護(お姉ちゃんたち、援護する。突入を)』
 射撃型の機体、サンダルフォンの援護を受け、ザーヴィスチとメタトロンが敵陣へと飛び込んでいく。
『ここが俺たちの正念場だ。気兼ねなく暴れさせてもらう!!』
 柊 真司(ひいらぎ・しんじ)ゴスホークのプラズマライフルが火を噴いた。射線上の怪物が蒸発しする。
 それだけではない。戦場を飛び回るレーザービットが先に突入する二機を援護するように飛び回り、放たれる光条によってさらに多くの怪物たちが焼き払われた。
『真司、私たちも出ますよ』
 ディメンションサイトによる状況把握が完了したヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)が、真司を促す。
 後方には、こと射撃においては強い信頼がおける者がいる。
 ならば、彼がする事は、機体のスペックを最大限に生かす――機動戦を行う事だ。
 ゴスホークが瞬時に敵との距離を詰め、背後から斬りつける。
「さすがだね。なら、こっちも……」
 ザーヴィスチはスラスター制動による変則的な機動によって敵を翻弄。すれ違い様に怪物たちを切り伏せていく。
『ひゅー、凄い凄い。アタシも負けちゃいらんないな』
 メタトロンが怪物の一体を掴み、そのまま加速。さらに空中で回転し、そこから垂直で下降。
 そのまま母艦型に怪物を叩きつけた。
『狙い……撃つ!』
 その瞬間、最大出力のサンダルフォンのバスターキャノンが放たれた。イコンサイズよりもさらに巨大な怪物が、消滅した。
 しかしそれでも怪物たちは、時間をおけば再び虚空より出現してくる。
 気を緩めることなく、倒し続けるしかない。
『母艦級か。優先すべきは、あれだな』
 ゴスホークがリミッターを解除。神武刀・布都御霊が戦艦をも両断する超大型剣へと姿を変えた。
 まだ覚醒を使うまでもない。
 それはゴスホークだけでなく、ザーヴィスチも同じだ。
 これは持久戦だ。儀式が終わるまで、湧き続ける怪物を倒し続ける。覚醒はここぞという時の切り札だ。
『いくぞ!』
 巨大な刃が、母艦級を両断する。
 だが、怪物はそれだけでは倒れない。
 そこへさらに、ザーヴィスチが大型超高周波ブレードを突き立て、ファイナルイコンソードで一気に切り裂いた。
 莫大なダメージを負った怪物の残骸は、それぞれが姿を変え始める。
「薬は注射より飲むのに限るよ? 怪物さん!」
 ザーヴィスチは変態を始めた怪物の傷口にウィッチクラフトライフルを押し当て、ゼロ距離で乱射した。
『数が増えようと、同じことだ』
 次いでゴスホークが巨大刃を切り返し、その軌道上にいる怪物たちをまとめて消し飛ばす。
『派手……(随分派手にやったものね)』
『ほんと、これでもまだ“切り札”は残してるっていうからすごいよね。パラミタの契約者たちは』
 マルグリット、ドミニクから感嘆の声が上がった。
「それは二人も同じでしょ?」
『まーね』
 しかし、派手に立ち回ったせいか、エネルギーを一気に半分ほど消費してしまった。
『一時補給のために後退する。援護、頼めるか』
『了解』
 前衛のゴスホーク、ザーヴィスチが補給のために一旦離脱した。
 その間、メタトロンとサンダルフォン、さらにはF.R.A.G.のイコン部隊が怪物たちの掃討に当たった。
 
 そして、補給を終え――。
『今、連絡があった。儀式の準備はもう少しで終わりそうだって』
「なら、ここからは全力を出しても良さそうだな」
 補給、補修を終え、ゴスホーク、ザーヴィスチは再び空へと出る。
「正真正銘、これで最後だ」
 ゴスホークは覚醒を行った。
 そして、怪物たちへと向かって一気に加速していく。
 彼らは怪物たちを屠り続ける。
 ――祈りを届け、この世界を守り抜くために。