校長室
リアクション
* * * ――日本、東京湾上空。儀式場第一防衛ライン。 「2人とも、来てくれてありがと」 『こういう地球の危機に動くのが、アタシらの役目だからね。F.R.A.G.および聖カテリーナアカデミー“聖歌隊”は、全力で戦うよ』 『……絶許(あんな化物どもの好きにはさせない)』 ザーヴィスチを駆る富永 佐那(とみなが・さな)――ジナイーダは、地球勢力の一員として、東京までやってきた。 「この怪物、自衛隊のイコン部隊には手に余る相手ですわね」 エレナ・リューリク(えれな・りゅーりく)が声を漏らした。自衛隊の誇る精鋭機イザナギ、イザナミは第二世代機でありながらも第三世代機と比べ遜色のない性能を誇るが、地球における契約者は多くない。数の上では劣勢と言わざるを得なかった。 『ま、数が多くていくらでも復活してくるっていうなら、スコア稼ぎも捗るよね。 いっちょ張り切っていきますか』 『援護(お姉ちゃんたち、援護する。突入を)』 射撃型の機体、サンダルフォンの援護を受け、ザーヴィスチとメタトロンが敵陣へと飛び込んでいく。 『ここが俺たちの正念場だ。気兼ねなく暴れさせてもらう!!』 柊 真司(ひいらぎ・しんじ)のゴスホークのプラズマライフルが火を噴いた。射線上の怪物が蒸発しする。 それだけではない。戦場を飛び回るレーザービットが先に突入する二機を援護するように飛び回り、放たれる光条によってさらに多くの怪物たちが焼き払われた。 『真司、私たちも出ますよ』 ディメンションサイトによる状況把握が完了したヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)が、真司を促す。 後方には、こと射撃においては強い信頼がおける者がいる。 ならば、彼がする事は、機体のスペックを最大限に生かす――機動戦を行う事だ。 ゴスホークが瞬時に敵との距離を詰め、背後から斬りつける。 「さすがだね。なら、こっちも……」 ザーヴィスチはスラスター制動による変則的な機動によって敵を翻弄。すれ違い様に怪物たちを切り伏せていく。 『ひゅー、凄い凄い。アタシも負けちゃいらんないな』 メタトロンが怪物の一体を掴み、そのまま加速。さらに空中で回転し、そこから垂直で下降。 そのまま母艦型に怪物を叩きつけた。 『狙い……撃つ!』 その瞬間、最大出力のサンダルフォンのバスターキャノンが放たれた。イコンサイズよりもさらに巨大な怪物が、消滅した。 しかしそれでも怪物たちは、時間をおけば再び虚空より出現してくる。 気を緩めることなく、倒し続けるしかない。 『母艦級か。優先すべきは、あれだな』 ゴスホークがリミッターを解除。神武刀・布都御霊が戦艦をも両断する超大型剣へと姿を変えた。 まだ覚醒を使うまでもない。 それはゴスホークだけでなく、ザーヴィスチも同じだ。 これは持久戦だ。儀式が終わるまで、湧き続ける怪物を倒し続ける。覚醒はここぞという時の切り札だ。 『いくぞ!』 巨大な刃が、母艦級を両断する。 だが、怪物はそれだけでは倒れない。 そこへさらに、ザーヴィスチが大型超高周波ブレードを突き立て、ファイナルイコンソードで一気に切り裂いた。 莫大なダメージを負った怪物の残骸は、それぞれが姿を変え始める。 「薬は注射より飲むのに限るよ? 怪物さん!」 ザーヴィスチは変態を始めた怪物の傷口にウィッチクラフトライフルを押し当て、ゼロ距離で乱射した。 『数が増えようと、同じことだ』 次いでゴスホークが巨大刃を切り返し、その軌道上にいる怪物たちをまとめて消し飛ばす。 『派手……(随分派手にやったものね)』 『ほんと、これでもまだ“切り札”は残してるっていうからすごいよね。パラミタの契約者たちは』 マルグリット、ドミニクから感嘆の声が上がった。 「それは二人も同じでしょ?」 『まーね』 しかし、派手に立ち回ったせいか、エネルギーを一気に半分ほど消費してしまった。 『一時補給のために後退する。援護、頼めるか』 『了解』 前衛のゴスホーク、ザーヴィスチが補給のために一旦離脱した。 その間、メタトロンとサンダルフォン、さらにはF.R.A.G.のイコン部隊が怪物たちの掃討に当たった。 そして、補給を終え――。 『今、連絡があった。儀式の準備はもう少しで終わりそうだって』 「なら、ここからは全力を出しても良さそうだな」 補給、補修を終え、ゴスホーク、ザーヴィスチは再び空へと出る。 「正真正銘、これで最後だ」 ゴスホークは覚醒を行った。 そして、怪物たちへと向かって一気に加速していく。 彼らは怪物たちを屠り続ける。 ――祈りを届け、この世界を守り抜くために。 |
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