空京

校長室

【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆

リアクション公開中!

【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆
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リアクション


空京のバーにて

空京のうらびれたバーで、生きる気力を失っているゆる族。
ろくりんくんを、
慰めているのは、もうひとりのゆる族、七夕 笹飾りくん(たなばた・ささかざりくん)であった。

「どうせ、どうせ……」
「!」
笹飾りくんは言葉少なに、というより、無言で、ろくりんくんの肩を叩いている。

その近くには、吉井 ゲルバッキー(よしい・げるばっきー)鳥人型ギフトがいる。

「よく分からないんだけど、
あんたの息子って人からあんた宛の手紙を預かってきたわ」
ゲルバッキーの前に、
ソフィア・ギルマン(そふぃあ・ぎるまん)が現れ、言った。
(なんだ、これ?
ダリルから?)
ゲルバッキーは、おつまみを頬張っていたが、
手紙を読んで、まんざらでもない様子になる。

「いい息子さんじゃないか」
ソフィアのパートナーのハリー・ヴァンス(はりー・う゛ぁんす)が言った。

「空京の儀式場には美味しいメンチカツがあるらしいですよ」
さらに、このように言い、
ハリーは避難誘導の口実を作ろうとしている。

(契約者が沢山居る儀式場が実は安全だったりするんだよね
それに、ついでに祈れちゃうしオトクダネ)
このようにして、
ダリルの大切な人である、ゲルバッキーを避難させるつもりだったのだが。

「メンチカツはタマネギが入っているのに、
食べていいのか?
犬は確かタマネギ中毒を起こすのであーる」
(正確には犬じゃないから、食べて問題はない。
しかし、こんな日にはメンチよりアルコールさ)
ゲルバッキーは生産者表示がされたビールを飲んでいた。


「パラミタに来たばかりの頃は、
まだこんな場所に来られる年ではなかったのだがな……」
一方、姫神 司(ひめがみ・つかさ)は、
カラン、と氷の入ったグラスをかたむけた。
ちなみに、これはグレープフルーツジュースである。

司と、グレッグ・マーセラス(ぐれっぐ・まーせらす)は、
近くにいたゆる族2人と、ゲルバッキーと鳥人型ギフトの話を、
聞くともなしに聞いていたのだが。


そこに、
ジェニファ・モルガン(じぇにふぁ・もるがん)が走りこんでくる。
バーの入り口で、鐘がからんからん、と激しく鳴る。

聖夜靴下マンはこのバーにいる!」

いきなり叫んだジェニファに、バーの人々の注目が集まる中。

「ろくりんくんって、本当は、聖夜靴下マンなんでしょう!?」
「え……?」
「だって、このタイミングで、聖夜靴下マンが現れないなんて思えないわ。
つまり、七夕笹飾りくんと聖夜靴下マンが、
選手交代をしようとしてる局面じゃないかと!
おねがい、正体を現してよ!」

「ジェニファ……」
マーク・モルガン(まーく・もるがん)が、パートナーの言動に、頭痛をこらえていた。

なお、ろくりんくんは、
聖夜靴下マンとは全然異なる姿であり、
6をモチーフとした輪っかの姿のゆる族である。
「輪っかが、あとでクリスマスリースに変形するんでしょう!?」
わくわくした視線を勝手に送るジェニファに、
ろくりんくんは天を仰いで叫んだ。

「ああ、やっぱり、僕は、
聖夜靴下マンに間違われるような存在なんだ……!」
「……!」
笹飾りくんが必死にろくりんくんを慰める。

「じゃあ、本物の靴下マンは?」
「……!」

そこに、派手な音をたて、
鳥人型ギフトとゲルバッキーがドリンクをこぼしてしまった。

「何をするのであーる!」
(そっちこそ、ぼさっとしてたじゃないか!)

「……!」

「く、靴下マン!
本当に来てくれたんだね!」
ジェニファが目を輝かせる。

一瞬の隙をついて靴下マンが登場したのだった。

「でも、今度は、笹飾りくんがいなくなっちゃった」

「……!」

またしても、皆の気を一瞬そらし、
笹飾りくんが登場する。

「あれ、今度は靴下マンが……」

「……!」

その後、ぐったりとソファに倒れ込む笹飾りくんの姿があった。

「どうしよう、七夕笹飾りくんと聖夜靴下マンが揃ったときに、
お礼をしようと思っていたんだけど」
「……!」
「え、気にしなくていいって?
ううん、でも、
七夕笹飾りくんにもお礼はしたいし。
長いこと、道しるべとなってくれてありがとうございました」
「ありがとう、七夕笹飾りくん!」
ジェニファとマークは、笹飾りくんと抱擁を交わした。

「ああ、これが、真に愛されるゆる族の姿、僕なんて……」

「落ち込むのは早いワヨ」

そこに、「もうひとりのろくりんくん」キャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)が現れた。
パートナーの茅ヶ崎 清音(ちがさき・きよね)は、
シャンバラ宮殿の男子禁制区画にて女官として過ごす日々を送っているため、
今回もお休みったらお休みなのである。

「何に失望しているのカシラ?
ろくりんピックの成功のためなら、別に、ミーが表に出なくていいワヨ。
だってあまりに忙しくて一人でやるのは無理ゲーだもの。
ワークシェアの時代ヨネ」

「何を言ってるんだ!?」

「あ、でも、恩給はミーにももらえないと困るワ。
よかったら名声担当と恩給担当でわけてもいいケド」

「ろくりんくんとしてもてはやされた君に、
僕の何がわかるっていうんだー!」

ろくりんくんが、ろくりんくんに殴りかかっていた。
笹飾りくんが必死に止めようとする。

「本物の『ろくりんくん』だ、と……!?
ちょっと、詳しく話を聞かせてもらおうか!」
司も割り込んでくる。

「放せ、放せよ!
部外者は関係ないだろ!」
「いや、話を聞いたからには、真実を知らなければ!」

「だから、ミーはお金がもらえればいいのヨ。
さっきからそう言って……」
「この、ろくでなしが!
というか、『ろくりんくんでなし』が!」
「ブハーッ!?」

ろくりんくんに殴られ、
キャンディスがぶっ飛ばされる。

「待って。
かわいいゆる族同士で喧嘩なんて……。
それより、話をきかせてもらったよ。
そっか、あんたが本来の……。
オレが知る限り、最初に広く名を知られた……ゆる族なんだねぇ」

曖浜 瑠樹(あいはま・りゅうき)が、
パートナーの猫のゆる族、マティエ・エニュール(まてぃえ・えにゅーる)とともに現れた。

「ごめんなさい、ろくりんくんさん。
人違い……じゃない、ゆる族違いをしてしまって」
マティエが、頭を下げる。

「ねえ、もしかして、こういうことなんじゃないかな……」
瑠樹が、両手を広げ、話し始める。

「ゆる族は……繰り返す過程で
『創造主にならなかった』存在じゃないかと思うんだよねぇ」

バーの中に静寂が訪れる。

「完全な絶望に堕ちて固まった連中が『創造主』で
そいつらに融合する前に逃れて
時折着ぐるみを着替えながら希望を探してるのが『ゆる族』……。
……だったら、素敵じゃないかねぇ?」


「というか、ゆる族って、ポムクルさんの駐車場じゃなかったか?
前にテレビで放送されたのであーる」
(僕にそんなこと聞かれてもなあ。
そういえば、とうとうあのカッチカチの龍騎士もチャックを下ろさなかったな)
鳥人型ギフトとゲルバッキーが話している。

「……というか……もしそうなら、
何で私たち本人が覚えてないんですかっ」
マティエが、瑠樹にツッコミを入れる。

「そうでも、そうでなくても、いいよ。
俺、いつか……希望を振りまく、あんたのグッズが欲しいなぁ」
「私も……生きて、希望を抱いてほしいです。あなたに。
他の誰でもなく、今、ここにいるあなたに」

瑠樹とマティエの言葉に、
ろくりんくんが顔をあげる。

「そうだ。僕は新しい人生を歩み出すんだ!」

「またろくりんピックが開催されたら、
その時は、リニューアルしたことにして登場するといいワ。
恩給はミーのものにしてほしいけど」

ろくりんくんが拳を握りしめて振り返ったので、
キャンディスは「キャッ」と言って離れた。

「……!」
笹飾りくんも、大きくうなずいている。

「よし、僕は、僕は……!」

やる気になったろくりんくんに、
瑠樹とマティエが拍手を送り、他の皆も続く。

そこに。

「そう、このくだらない日常を繰り返すことで、
世界を救う精神力エネルギーを生み出すのよ!」
日堂 真宵(にちどう・まよい)が現れ、叫んだ。

「かつてギフトカレーは奇跡を起こしまシータ。
なら執拗に繰り返せば奇跡のバーゲンセール、
ミラクルカレーバーゲンセールを起こす事は容易いのデース」
アーサー・レイス(あーさー・れいす)が、
鳥人型ギフトをカレー鍋で煮込みはじめる。
「うああああああああああああああ!?
やめるのであーる!?」

「そして奇跡のギフトチキンカレーに
ゲルバッキーを混ぜる事で奇跡を超えた
奇跡のチキンカレーホットドッグの完成なのデース!」

(ぎゃああああああああああああああああああ!?)

ゲルバッキーも鍋へと投入された。

「たしか、マレーナさんは言いまシータ。
ドージェさんにインドを切り離せと!
つまり、カレーの力が脅威だったから、そう言ったに違いありまセーン!」

「そうだったのか!」
「何を納得しているんですか!?」
ぽんと手を打つ司に、グレッグがツッコミを入れる。

「さあ、こうなったら、この場にもっとも力を集めている存在、
ろくりんくんたちもカレーにしマース!」

アーサーは暴走し、
ろくりんくんたちに迫る。

「……!」
笹飾りくんが、進み出て、
ろくりんくんをかばおうとした時。

「君にはファンの子たちがいるじゃないか。
僕には失うものは何もない」
「……!」

ろくりんくんが自らカレーにダイブしたのだった。

カレーの鍋で煮込まれ、ろくりんくんは黄色く染まっていく。

「これは、ゆる族のテコ入れの瞬間ネ!」
キャンディスが叫ぶ。
「ろくりんくんは、
『カレーのろくりんくん』として生まれ変わったのヨ!」

「カレーのろくりんくんとして、
6種類のかわいいキャラクターのカレーになるんだ!」

「やったね、ろくりんくん!」
「ろくりんくんさん!」
瑠樹とマティエが口々に、祝福する……が。


「じゃあ、ここにいる方々をカレーにしマース」

鳥人型ギフトと、
ゲルバッキーと、
ろくりんくんと、
笹飾りくんと、
キャンディスと、
マティエが
カレーに入れられてしまう。

「この期に及んでやっぱりカレーなんかーーい!」
(ナナナナノマシンがカレー臭に染まっていくぅううう!?)
「これが生まれ変わりって奴か!?」
「……!!」
「ゆる族の脱皮の瞬間ヨー!」
「や、やっぱり、全然違うとおもいますー!」


カレーまみれになった
笹飾りくんは、いつのまにか姿を消し、
靴下マンが登場していた。

「……!」
「また会えてうれしい、聖夜靴下マン!」
「ありがとう、聖夜靴下マン!」

ジェニファとマークに、必死でごまかしつつ、お礼を伝える靴下マンだが。

「ここにいる人は全員、カレーになりなサーイ!」
しかし、すぐにアーサーにカレーに投入されてしまう。

こうして、バーにいるゆる族と似た外見の者たちは、全員、カレーで煮込まれてしまった。

「カレーのろくりんくんデース!
6人のマスコットキャラによる、
6種の美味しい材料(?)を使ったカレーなのデース!」

真宵がネット配信していたこともあり、
アーサーの「カレーのろくりんくん」は、
ヒット商品となった。

なお、カレーには6種類のシールや人形などのおまけがついてくるが、
靴下マンはシークレットキャラになった。

「ありがとう、みんなのおかげだよ!」
カレーのろくりんくんが言った。

「ああ、こうしていると、
留年なんて、たいしたことじゃなかったのかもしれないな」
司はなんだかわからないが、希望を取り戻すのだった。