|
|
リアクション
八織とカースが公園の奥に行くと、モニカ・レントン(もにか・れんとん)がはしゃぎながら会う人会う人に、手作りのハート型チョコレートを渡していた。
目が合った八織とカースにもくれる。
「あー、いたいた」
公園に入っていた山葉を日下部 社(くさかべ・やしろ)が見つけ、山葉に声をかける。
すると、モニカは目ざとく二人を見つけ、指を突きつけた」
「そこの愛に飢えた方々! 今日のような素敵な日に相応しくありませんわよ!」
そして、モニカは可愛くラッピングしたハート型チョコを社と山葉にあげた。
「この愛のチョコを差し上げましょう。これら全てに私の愛を注ぎ込んでますわよ!」
「お、ありがとー。義理でも何でもうれしいわー」
社は喜んだが、日下部 千尋(くさかべ・ちひろ)はぷくーっと頬を膨らませた。
そして、山葉はと言うと、複雑そうな顔をした。
「すべてに愛って……そんなに愛ってあるのか」
「はい!」
ニコッと笑顔でモニカが返す。
すると、モニカに付き添っていた水上 光(みなかみ・ひかる)が、山葉の前に進み出て、彼に尋ねた。
「ねぇ、チョコもらえないってそんなに深刻?」
「深刻だろう? チョコをあげようと相手のことを思う。その相手のために作ったり、選んだりの手間をかける。それだけ気にかけて、相手のことを思って、手間をかけてってところに、相手を思う気持ちとか、大事にしてるのとかが現れるんだよ!」
「チョコなんて、そんなの単なるきっかけでしょ? 重要なのはその人のことをどれだけ思ってるかじゃないかな。山葉はそういう人いないの?」
「その人のことを思ってるから、バレンタインにチョコをあげよう考えるのだと思うのだが……。って、そういう人がいないから、嘆いてるんだろうが!」
「いや、そういう意味じゃなくて山葉自身が思ってるような……」
光が山葉に説得を行おうとすると、ちょんちょんと光の肩が叩かれた。
振り向くと、モニカが光に特別に綺麗に飾り付けられたチョコを見せた。
「はい、光さんには特大の愛を込めたチョコですわ!」
予想外のものに、光は驚く。
「え……? 何でボクだけこんな……?」
「あなたに会うことがなければ、私は愛に目覚めることもありませんでしたもの……だから、あなただけは特別ですわ」
モニカの言葉に、光は微笑を浮かべた。
「……うん、ありがとう」
「……………………」
山葉の闇が10レベルアップした。
「チョコなんて単なるきっかけって言ったよな」
「うん?」
「だったらなんで、特別なチョコなんてあるんだ」
「へ?」
「特別だから、大きさも包装も違うものにするんだろ?」
ピシピシッと山葉の周りの空気が固まっていく。
「バレンタインなんて、チョコなんてって言うやつに限ってそうなんだよ。結局、想ってくれる相手が居たり、ちくしょう……」
山葉の中で何かが目覚めた。
「バレンタインなんて滅びればいいんだ!」
「そのとーり!」
いきなりチアガールっぽい格好をした、金髪ツインテールの女の子が現れ、ビシッとポーズを決めた。
「魔法少女エーコちゃんは、不憫な人を応援します☆」
城定 英希(じょうじょう・えいき)……ではなく、エーコちゃんは山葉に同情した。
「香鈴を閉じ込めちゃった山葉君は悪いし、怒る人がいるのも分かりますけどー。でも、「義理だからー」とか言って愛の無いチョコを振り撒いて男をその気にさせたりする、気取った女の子が沸いて出てくるバレンタインは正直面倒くさいんだよねー」
英希の言葉は割りと感じてる人は多いかもしれない。
義理といっても、お返しを考えないといけなかったりすると面倒だし、その上、お返しによってはクラスの中で「●●君って趣味悪いよねー」とかいう話をされたらたまらない。
それに、よほどすごい美人なツンデレキャラならともかく、そうでないのに「義理でも、もらえればうれしいでしょ?」という態度をされると、複雑なのかもしれない。
そんな山葉とエーコの前にスパイクバイクが駆けつけた。
「誰かと思えば蒼学の眼鏡じゃねぇか。暴れてぇんなら手ぇ貸すぜ?」
パラ実のカーシュ・レイノグロス(かーしゅ・れいのぐろす)がアーミーショットガンを持ってやってきた。
「手を貸す?」
「ああ、お前のその心意気が気に入った。好きに暴れようじゃねぇか!」
するとさらにもう一人、パラ実生がやってきた。
「おう、憂さ晴らしなら、いくらでも付き合うぜ!」
百々目鬼 迅(どどめき・じん)がバイクを駆って、応援に駆けつけた。
魔法少女と不良の応援を得て、眼鏡は進化し……。
最強の味方が現れた。