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地球に帰らせていただきますっ!

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 アスカの帰る場所 
 
 
「ここよぉ」
 たくさんの土産を持って帰郷した師王 アスカ(しおう・あすか)が足を止めた場所を見て、ルーツ・アトマイス(るーつ・あとまいす)は怪訝そうな顔になった。そこは家ではなく、どう見ても古びた教会だったから。
 そんなルーツの様子に、アスカは少し笑ってしまう。
「驚いたぁ〜? わたしは孤児としてここで育てられたのよ〜」
 その小さな教会の名はスーワン教会。こここそがアスカにとっての『我が家』だった。
 
「お母さん! チビたち、ただいまぁ〜!」
 軋む扉を開けると、どうやら中ではお祈り中だったらしい。
 正面にいたシスター・サーシャが微笑んだ。
「アスカ、お帰りなさい」
 予告もなく帰ってくるのが当たり前のアスカだから、サーシャは驚いた様子もない。
 席についていた十数人の子供たちは身体をねじって後ろにいるアスカを見ると、一斉に立ち上がった。
「アスカだ!」
「ほんとだ〜! おかえりなさーい!」
 喜び勇んで子供たちはアスカの元に寄ってくる。手加減なしの抱きつき、という名のタックルの洗礼に、さすがのアスカもよろめきそうになり、必死で足を踏ん張った。
 それが終わると、アスカは子供たち1人1人の頭を撫でてやった。
「みんな大きくなったわねぇ〜。ほ〜ら、お土産よぉ〜」
 砂の薔薇、根付、友情のバッジ、妖精の靴……。パラミタならではの土産を次々と出すアスカに、子供たちは目を輝かせた。
「お母さんには〜、はい、これ!」
 アスカはシスター・サーシャにいつものようにスケッチブックを手渡す。それは、アスカがパラミタに行ってずっと描き続けてきた風景画集だ。
「有難うアスカ。嬉しいわ」
 スケッチブックを胸に抱き締めるサーシャは本当に嬉しそうで、アスカは少し照れてしまう。それだけサーシャが自分のことを大切にしてくれているのが伝わってきて。
 中に描かれた風景を説明しようとして、アスカはふと背後の騒ぎに気づいた。
「お兄ちゃん誰〜?」
「天使さま?」
「い、いや、我は……」
 興味津々な子供たちに取り囲まれて、子供がちょっと苦手なルーツは軽いパニックを起こしている。
「お前アスカの何?」
 ずばりと聞かれたルーツが絶句するのを、アスカとサーシャは笑って見守った。
 
 
 久しぶりの子供達の相手に疲れたのか、アスカは早くから子供達と一緒に眠ってしまった。騒ぎ疲れた子供達も、アスカを囲んで健やかな寝息をたてている。
 懐かしい光景にサーシャは目元を綻ばせる。そして子供達を起こさぬように足音を忍ばせて、外に出て行った。
「今日は星が良く見えるわね」
 星を見上げていたルーツに声をかけると、そのまま他愛のない言葉をいくつか交わし。そしてゆっくりと話を切り出した。恐らく、アスカの生い立ちが気になっているだろうルーツに。
 アスカはこの教会に赤ちゃんの頃から住んでいること、本物の両親は行方が分からないということ。
 柔らかな声が話し終えると、サーシャはルーツをまっすぐ見つめる。
「私の娘をどうか守ってあげてね」
 それはまさしく母親としての言葉。
 その言葉にルーツは笑みを返すと、静かに肯いたのだった。