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地球に帰らせていただきますっ!

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地球に帰らせていただきますっ! 地球に帰らせていただきますっ!

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 プリンセスタイム 
 
 
 迎えに来たロールスロイスに乗り、神楽坂 有栖(かぐらざか・ありす)は実家に向かった。
 パートナーのミルフィが一緒に来られなかったのは残念だけれど、久しぶりに両親に会うことができるのは嬉しくてたまらない。
「お父様とお母様はお変わりないですか?」
 運転手の女性に尋ねてみると、即座に返事が帰ってくる。
「はい。お2人ともご健勝に御座います」
「そうですか、良かったです」
 早く会いたい、と願いつつ、有栖は窓の外を流れる景色に見入った。
 車はやがて神楽坂家の敷地に入った。
 敷地に入ったといっても風景はそれほど変わらない。延々と続く道の両側には様々な施設が立ち並び、さながら城塞都市であるかのようだ。
 やがて到着したのは、童話に出てくる女王の居城のような邸宅だった。
 車を降りてカーペットを歩く有栖の両側で、ずらりと並んだメイドたちが頭を下げる。
「御帰りなさいませ、有栖お嬢様!」
「皆さん、ただいま♪」
 足取り軽くカーペットを歩いていた有栖は、前方の玄関に立つ両親に気づくと駆けだした。
「お父様、お母様っ、ただいま……!」
「有栖……!」
「有栖、お帰りなさい」
 飛びついてくる有栖を、神楽坂 天照神楽坂 莉鈴が抱き留める。天照も莉鈴も35歳のはずなのだけれど、どちらも有栖の兄姉にしか見えない若さだ。
「有栖、ミルフィはどうした? 一緒ではないのか?」
「ミルフィは、今回は来られないって……」
 パラミタでやらなければならないことがあるからと、ミルフィは向こうに残っている。
「そうか……あれにも此処に帰ってきて欲しかったが……仕方ないな。さ、疲れただろう、中に入りなさい」
 天照は残念そうであったけれど、有栖を家の中へと促した。
「はい。お父様、お母様、お土産を沢山持ってきたんですよ。それに、お話したいことだっていっぱい」
「ふふっそうか……それは楽しみだ」
「今夜は有栖のために、パーティを開きましょうね」
「はい、お母様」
 両側を両親に挟まれて、有栖は家に入って行った。
 
 夜までの時間を両親と過ごすと、いよいよ帰省パーティの始まりだ。
「では皆様ご紹介しましょう。今夜の主役、私の愛娘『プリンセス・アリス』です……!」
 天照に紹介された有栖は、ドレスをつまんで会釈した。
「ご紹介に預かりました、有栖と申します。皆様、宜しくお引き立てのほどを……」
 黒のフォーマルスーツを着、銀髪をポニーテールにした天照は、男性というより、男装した女性のように見える。その天照のエスコートで、有栖と母の莉鈴はホール中央の大階段をゆっくりと下りて行った。
 有栖は空色の華麗なドレスに身を包み、宝石を散りばめたティアラを髪に飾っている。
 莉鈴は金髪のロングウェーブを結い上げて、胸元を開けた白いドレスを身に纏っている。
 その3人共が、サファイアにも負けない輝きの青い瞳をしている。
 拍手でホールに迎えられた3人は、そのまま招いた人々の間に立ち混じり、宴を楽しんだ。
 テーブルを埋め尽くす贅を凝らした料理をつまみ、会話を楽しむ。
 オーケストラの演奏が始まると、天照は有栖に手を差し出した。
「一曲お相手願えるかな? プリンセス」
「ええ、もちろんです」
 ドレスをゆったりと翻し、有栖は天照と踊った。
「私とも踊っていただけます?」
 莉鈴がいたずらっぽく有栖に手を差し伸べる。それにも有栖は笑顔で応えた。
 
 
 久しぶりの実家を楽しんだ後、有栖はパラミタに戻る為に家を出た。
「有栖、くれぐれも気をつけるんだよ」
「次のお休みにも帰ってきてくれますわよね?」
 名残惜しく有栖を抱きしめる天照と莉鈴に、有栖はこくりと肯く。
「きっと2人のもとに帰ってきます。ですから……行ってきます!」
 またこの家に笑顔で戻って来ると約束すると、有栖は駅へと向かう車に乗りこむのだった。