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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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第四師団 コンロン出兵篇(序回)

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 騎凛の周囲の敵は、魔王軍らの奮戦により減りつつあった。
「騎凛師団長。これならば勝機が見えてきそうです。
 まだ、油断はできませんがっ……!」
 魏 恵琳(うぇい・へりむ)も騎凛の横で戦っている。
「援護、援護〜」
 プリモも、騎凛の後ろにくっついて援護射撃しているが、騎凛のナギナタを交わすのに必死だった。「って言うか、ここにいる方が恐いかも……ひゃっ!」
「ですね。では、恵琳さんは、あちらのフォローに……
 各部隊の指揮が乱れているようです」
「お任せを」
「魔王軍さんは! 後方の物資に敵が群がりつつあるようです。
 ここはもう大丈夫! お願いします」
「お任せあれ。騎凛教官、ご健闘祈る!」
 こうして、騎凛は周囲の者を各方面のフォローへ回していった。このパターンは……
「プリモはつかずはなれずで、私の後ろからしっかりお願いね」
「いちばんコワイよ!(きりん先生のおしり撃っちゃおっかな……♪)」
 さてそこへ……突破した国頭武尊(くにがみ・たける)とその部下たち十名程が中央までやってきた。ここまでたどり着いたのはこれだけのようではあるが。何れも強敵。
「敵将だ、討ち取れ!」
 こちらも、残っているのは騎凛と騎凛旗本集団のみとなっている。
「これ以上来る者容赦なし」
「柳生の剣を受けたければ、来なよ!」
 背中合わせに戦う、ルゥ・ヴェルニア(るぅ・う゛ぇるにあ)柳生 三厳(やぎゅう・みつよし)
 ヒャッハァァ。「怯むな!」襲い来る鉄球を交わし、抜き放った仕込み竹箒をもって懐に飛び込むルゥ。三厳も、三人同時にかかってきたヒャッハァを払い除ける。
 騎凛先生もナギナタを持って飛び出したくてうずうずしているんだけど……
「暴走防ぐよメイドナイト!
 騎凛教官はどうか落ち着いてください。これでもどうぞ」
 (去年の修学旅行以来の)ユウ・ルクセンベール(ゆう・るくせんべーる)のアリス(デコ)キッス……テュ。
「ちょ……ちょっとそこ!」
「柳生の剣……エッ。ユウ!?(この効果音は)」
 ルゥ、三厳の剣が騎凛先生に向く。
「おら、今だ。やれ!」
 国頭が兵を鼓舞する。
「待ったぁ、国頭武尊。よくぞここまでたどり着いたァァァ」「だがここまで……」
 旗本衆より、待ってましたとばかりに、アンゲロ・ザルーガ(あんげろ・ざるーが)天津 麻衣(あまつ・まい)が飛び出る。
「これが目に入らぬかぁ!!」
「パパンツ・オア・ダーイ!!!」不良たちの目がハートで飛び出る。
 天津麻衣は懐からパンツを取り出したのだ。「ここに在るは、騎凛セイカ先生が一晩穿いていた生下着也。(騎凛「ちょ、ちょっと生々しいですよぉ……!」亜衣「先生ちょっと黙ってください」)私たちの味方になってくれた人には特別にプレゼン……」
「パパンツ・オア・ダーイ!!!」
 亜衣が言い終わるよりかなり早く、不良どもはパンツに飛びかかっていた。
「きゃー! じゅ、順番順番! ほら、まだ沢山あるんだから!」(騎凛「一晩にそんなにパンツ穿きかえませんよぉ……」)
 ひらひら。
「ほぉら。どう?」
「パパンツ・オア・ダーイ!!!」不良たちの目が更にハートで飛び出る。
 今度はルイーゼ・ホッパー(るいーぜ・ほっぱー)が、ピンクのレースを持っている。「っと!」怒涛の不良どもの疾走をさっそうと交わす。「騎凛先生のお子様パンティよりも、こっちでしょ? 国頭君、キミが欲しいのは? 珍しく、パンツに反応しないところを見ると」
 見ると、国頭は騎凛先生のパンツには一切反応せず己を保っている。(騎凛「えっ。私のパンツに反応しないなんて!」)
「はぁ、はぁ……」
「どうしたの? あなたが欲しいのはこれでしょう?」
 国頭を汗が伝う。
 教導団員たちが、訝しげに事の成り行きを見守る。
「ほら、ほら。国頭君?」
 ルイーゼが、国頭の顔の前でピンクのレースをちらつかせる。
「……おかしい。どういうこと? この、あたしのピンクのレースにも見向きもしないなんて!」
 そこへ、騎凛のパンツにあぶれた不良らが一斉に襲いかかる。「キャー!! これは一枚しかないのよぉ、あたしが今まで穿いてたのなんだからぁ」ますます激戦になった。
「フンガァァァ!!」
 パンツに群がる見苦しい不良どもを、ザルーガが一掃する。逃げ散る者を、ユウたちが逃すまじと捕捉しに行く。
「国頭どうした。おまえがパンツに反応しないとは、一体天下の何事だ。
 ……フフ、しかし内実、あんたパンツへの煩悩を振り切るのに精一杯のようだな。丁度いい。このザルーガがあんたを一発であの世へ送ってやるぜ。
 パンツの夢でも見てるんだな、永遠に。フンガァァァ!!!」
「はぁ、はぁ、ぁぁぁああああ!!」
 その瞬間、国頭の眼が、かっ、と見開かれた。「な、何馬鹿な!!」
 ザルーガの手刀を見切り、パラ実スパイクが顎を砕く。「ドゥァァァァ」空に舞い散るザルーガ。どさっ。
「ああっ。ザルーガさんっ」
 ナギナタを身構える騎凛に一直線、目に悟りのオーラを滾らせた国頭が突っ込んでいく。
「パンツの、パンツの悟りを開いた!!!!! 騎凛勝負!!」
「く、国頭と因縁の決着。もう一度パラ実に送り返してやる!
 キマクまで飛んでいけーっ」
 飛びかかる国頭に、騎凛のナギナタが襲いかかる。
「久多殿! 今まで何をしていたかっ」
 童元 洪忠(どうげん・こうちゅう)が叫び、「久多殿。どこにおられた。騎凛教官の危機ですぞ。さあ若者よ!」
 どこからともなく引っ張り出してきた久多 隆光(くた・たかみつ)を騎凛のもとへ放り投げた。
「うぉぉぉぉ」
 久多は短刀を抜いて空中から打ちかかった。
「チッ」
 国頭はとっさに引く。騎凛のナギナタは空を切った。そこへ久多が落ちてくる。
「痛てて……」久多は立ち上がり、
「国頭! 何故だ! 何故、そこまでして教導団の邪魔をする!」
 国頭はフン、とサングラスをかけ直し、冷静に言い放つ。
「大荒野を初めとしたパラ実の勢力下を安全に通りたければ、第四師団に縁のあるオレに協力を求めるのが筋だろ。
 こっちは協力してやるつもりで居たのによ、舐めやがって」
「国頭さん……」
 騎凛の構えに隙ができた。国頭の目が光る。
「オレに筋を通さなかった事を後悔させてやる!」
 久多が、パートナーの童元にアーミーショットガンを受け取る。「どうしようもねえな。もういい、俺も怒った。ぶち抜いてやる」
 童元は、久多の隣で構える。「参られよ」
 国頭は彼らの手前で、手から何かを放った。
「ムッ」「何?!」
「きゃぁぁぁいやぁ」
 20メートルのロープが、騎凛先生を縛る。国頭のサイコキネシスが、すでに騎凛の身動きを封じていた。「ホラ、君らもついでだ」
「ム、うう」「く、しまったぁぁ」
 久多、童元も動きを封じられ、倒れた。
 国頭が、ぐるぐる巻きにされた騎凛に近付く。「今回はオレに暫く付き合って貰う」
「やぁぁ、ちょ、ちょっと食い込んでるので、緩めてください……お願い」
「そんな筈はない」
 国頭は騎凛をそのままひょいと持ち上げた。「むっ?」
 「あ、はは……コンニチワ」騎凛の後ろに隠れていたプリモが、スパナ……じゃない、銃を構えている。国頭は、片手の騎凛先生を持ち上げ肩に背負い、片手のブロウガンをプリモの頭上に下ろして「こんにちわ」と応えた。
「どこへおでかけ? 騎凛先生持って……」
「ちょっとコンロンの――までな。嬢ちゃんもついでに拉致していこうか?」
「う、ううん結構だよ……」プリモは今はなす術なくスパナを下ろした。
 国頭は、戦塵のなかへ消え入ってゆく。「国頭ぁ……! 待て」「お姫様は頂いていく。……いやお姫様という比喩はさすがにきつかった……三十路だもんな」「国頭さん、ロープほどけたら、お話があります……!」「絶対にほどけない。話なら、道中聞いてやる。……ヒャッハァァァ! パンツ・オア・ダーイ!!」
 
 国境で繰り広げられた戦いは、教導団のあらかじめの警戒のあったおかげで、また物資等への防備も厳重であり、人的被害も物資への被害もさいわい、最小限に抑えられた。
 また、神矢 美悠(かみや・みゆう)はこの一部始終を録画し、襲撃の様子を証拠として残した。
 ゲルデラー博士は、撮影機材を持ってこなかったことを後悔した。
「ところで何と。私でなく、騎凛教官が行方不明者になったそうですな」
 アマーリエ・ホーエンハイム(あまーりえ・ほーえんはいむ)より、「今回の行方不明者を報告いたします:騎凛 セイカ(きりん・せいか)先生」
 
 このあと、教導団陸路組は国境を越えることになるだろう。そして、不良に縛られ拉致された騎凛先生はどこに攫われ何をされるのか。
 コンロンへ……。