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ゴチメイ隊が行く4 ひょっこり・ぷっかり

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ゴチメイ隊が行く4 ひょっこり・ぷっかり

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「さあて、これからが本番だぜ!」
「お宝どすなあ。楽しみやわあ」
 御剣紫音の言葉に、綾小路風花が顔をほころばせた。
「運びきれるかのう」
「四人おるから、大丈夫じゃろう」
 早くも手に入れたお宝の心配をするアルス・ノトリアに、心配いらないとアストレイア・ロストチャイルドが言った。もちろん、まだ捕らぬタヌキのなんとやらである。
「ようし、きっとこの島の中央に、巨大な機晶石があるに違いないぜ!」
 早くもわくわくが暴走最速値なアキラ・セイルーンもお宝を目指して気炎をあげる。
「まあ、それは凄いです」
 両手を組んだセレスティア・レインが、うっとりとお宝を想像した。
「現実を把握せんか、この馬鹿者どもめ!」
 スパーン、スパコーンと、ルシェイメア・フローズンがハリセンで二人を叩いて目を覚まさせようとする。だが、その程度で妄想から覚めるような二人ではなかった。
「よーし、探検だ!」
「おー!」
 ハリセンの痛みをスルーして、二人が駆けだしていく。
「あっ、おい、こら、待つのじゃ〜」
 ルシェイメア・フローズンは、あわてて二人の後を追いかけていった。
「みんな元気一杯ですねえ。さて、こちらもそろそろ……。メジャー、コンパス、その他諸々の入ったウエストポーチ、よーし。ハンドベルト筆箱、よーし。ということで、さぁ、さっそく秘境探検……もとい、調査開始です」
 準備万端整えた月詠司が、ウォーデン・オーディルーロキに言った。
「ふむ、まぁよい。せっかく辿り着けたのじゃ、せいぜい調査に励むかのぉ」
 うきうきしてシリアスなどどこ吹く風の月詠司に少々呆れながらも、ウォーデン・オーディルーロキは彼と一緒に歩きだした。
 
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「とりあえずは、ここを本部としてペースキャンプを設営するのが得策だろう」
 上陸した近くの平地で、本郷涼介がみんなをうながして探検のための起点を作っていった。
 この場所は比較的開けていて安全のようなので、各人の飛空艇や乗り物などを整理して停め、資材をおく場所や野営に備えたテントなどを仮設していった。
 冒険が長期化するのを想定していた者も少なからずいて、それぞれがテントを設営していく。
「毛布これしかないけれど、これでいいのかなあ」
 翌桧 卯月(あすなろ・うづき)が、持ってきた毛布をテントの中に入れて日比谷 皐月(ひびや・さつき)に聞いた。三人いるのに寝具が一つしかないのを気にしている。
「ああ、問題ない。七日、そっちはどうだ?」
「こちらは完了しましたよ」
 日比谷皐月に訊ねられた雨宮 七日(あめみや・なのか)が、ポンポンとできあがったテントを叩いて答えた。
 探検はどのくらいかかるか分からない。拠点設営は必須だろう。本来であれば、ちゃんと水の確保とかしたうえで設営場所を設定したいのだが、この霧では迂闊にここから移動させない方がいい。
「よし。拠点の準備ができたら、いよいよ島の探検だ。楽しいぞ、卯月」
 そう言うと、日比谷皐月は二人を連れて出発した。
 
    ★    ★    ★
 
「せっかくだから、この島の名前を決めないか?」
 レン・オズワルドが唐突に切り出した。
「名前かあ。もともと、この島には名前があったのかい?」
 ココ・カンパーニュが、アルディミアク・ミトゥナに聞いた。
「さあ、そこまでは覚えていません。多分、その土地土地の地名はあったとは思うんですけど……」
 さすがに、アルディミアク・ミトゥナも口籠もった。
「はいはーい。だったらアーちゃん島!」
 ノア・セイブレムが、また無茶苦茶な提案をする。
「それはちょっと……」
 困ったように、アルディミアク・ミトゥナが苦笑した。
「うーん、まだこの島の探検が終わってないんだし、名前はそれからでもいいんじゃないかな。どの名前がふさわしいかは、それからだよ」
 そう言うと、ココ・カンパーニュが立ちあがった。
「さてと、そういうことで、お腹もちょうど満たされたし、そろそろ探検に出かけようか」
 あらためて、ココ・カンパーニュが切り出す。
「また襲撃があると大変です。私は、ここで飛空艇の番をしていましょう」
 自分のレッサーワイバーンの首をなでてやりながら、一条アリーセが言った。さすがにここのでの戦いや飛行で、レッサーワイバーンたちのような生きている乗り物たちはかなり疲労している。ここでちゃんと休ませてやらなければ、ちゃんと帰れないだろう。
「そうだな、へたに動かない方がいいかもしれぬから、わしはここで待つとしよう」
 ジャワ・ディンブラも、この場で留守番を申し出た。
「よし、じゃ、出発!」
 残る者、先行した者、はぐれてしまった者たちをのぞいて、ゴチメイたちの一行は、いよいよ島の奥へと進んでいった。
 
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「ついに、私たちは秘境に足を踏み入れたのです……。うーん、霧で紙が湿ってきて書きにくいなあ」
 ちょっとぼやきながらも、浅葱翡翠は手帳に出来事を書き加えていった。
「参ったなあ。これじゃあ、ますますバラバラになりそうだな」
 道なき道を進みながら、ココ・カンパーニュが言った。
 上空に上がればいいのかもしれないが、上から見下ろしたからと言って、霧のせいでほとんど何も見えないだろう。それどころか、地表近くはまだいいが、周囲の風は安全に飛ぶには強すぎるものだった。
「確かに、この過酷な環境では、住むのは難しいですね」
「やっぱり無人島だったんだもん?」
 ヴァルキリーの集落アリアクルスイドが、ちょっと残念そうにペコ・フラワリーに言った。
「無人島は間違いないでしょうけれど、今現在私たちの他に誰もいないとは言えないでしょう。むしろ、誰かがここで何かをしているはずです」
 アルディミアク・ミトゥナが気を引き締めて言った。そうでなければ、わざわざ妨害などしてくるはずがない。
「きっと、私たちに見せたくない物とか取られたくない物とかあるんだよ。やっぱりお宝かな」
 何も見逃すまいとキョロキョロしながら、マサラ・アッサムが言った。
 
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「霧は凄いし、草もぼうぼうだし、しっかりとはぐれないようにしなくっちゃだもん」
 ココ・カンパーニュの後ろ姿を見失わないようにしっかりとついて行きながら、秋月葵がつぶやいた。
「葵ちゃん、格好いいですよー。本当の探検家みた……あっ」
 撮影に夢中になっていたエレンディラ・ノイマンが転ぶ。ファインダー越しにしか周囲を見ていないからだ。
「あいたたたた……。あれ? 葵ちゃん、どこですか!?」
 肝心の秋月葵を見失いかけて、エレンディラ・ノイマンはあわてて走りだした。