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ゴチメイ隊が行く4 ひょっこり・ぷっかり

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ゴチメイ隊が行く4 ひょっこり・ぷっかり

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「はっはっはっ。いい風じゃあねえか。空賊時代の血が騒ぐぜ」
 小型飛空艇を操りながら、黒髭 危機一髪(くろひげ・ききいっぱつ)が高笑いをあげた。口とは裏腹に、その操縦はブランクのせいか少しぎこちない。
「いいか、ひよっこども、雲海で一番怖いのはな、雲に隠れている暗礁とか浮遊物だ。飛空艇ってのは結構スピードが出るもんだからなあ、うっかり激突しちまった日にゃ、あっけなくちゅどーんよ。それを見越してな、雲の中に機雷を隠す空賊なんてのもいるぐらいだ。だが待て、せっかくの獲物が墜落しちまえば、奴らも商売あがったりでな。そのへんはちゃんと威力を押さえて霞網とか鳥もちとか、より陰険な奴をだなあ……」
「はいはいはい、あー、うっとおしい。マナ様のお耳汚しでしょう。少しは静かにできないの!」
 後ろをふよふよと飛んでいるマナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)の邪魔だと、シャーミアン・ロウ(しゃーみあん・ろう)が空飛ぶ箒から足を振って黒髭危機一髪の小型飛空艇を蹴っ飛ばした。
 よろけた小型飛空艇が、光る箒に乗ったクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)とニアミスする。
「あっぶないじゃないですかあ! まだ名乗りもあげてないのに、墜落は勘弁です!」
「ちっ、しくじったか」
 焦るクロセル・ラインツァートを見て、陰でシャーミアン・ロウが小さく舌打ちした。
 
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「どう、気流は見つかって?」
 カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)が、一所懸命気流を解析しているジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)に訊ねた。
「うーん。気流のデータが公表されたと言っても、百パーセント正確とはいかぬのだよ。誤差の範囲が思ったよりも大きいので、目的の気流を特定できぬのだ」
 悔しそうにジュレール・リーヴェンディが言った。
 実際問題として、地球のジェットストリームのように、ある程度固定された気流という物もあれば、朝と晩では流れが真逆の物もあるし、特定の季節や時間だけ生まれる気流という物だってある。さらに、それらの変化が平面的な大きい変化の他にも、上下動の非常に分かりにくい変化や、それに付随した流れる速度の変化という物もある。それらすべてを、今回発表されたデータが完璧に網羅してるとはとても言い難かった。
「条件は同じだから、空賊とかに特定航路を狙われるのだけは注意しなくちゃね」
 周囲に注意しながら、カレン・クレスティアが言った。
 ジュレール・リーヴェンディと一緒で、メティス・ボルトもまたルートの計算に四苦八苦していた。
 起点となる空京その物や、巨大な塔に見えるシャンバラ宮殿をランドマークにすればいいのだが、雲海のただ中に出れば出るほど、うねる雲に視界がさえぎられてそれらが見えなくなる。まして、風に流されて微妙にむきも変わる。視界が役にたたなくなったときは、頼りになるのは空京と葦原島からでている航海用の誘導ビーコンだが、それもここ雲海ではあまりあてにはならないのか、装備されている飛空艇や携帯は少なかった。
「だめ、ユビキタスが使えない……」
 銃型ハンドヘルドコンピュータをしきりにいじっていた漆髪月夜が、ついに諦めて言った。
 雲海では、さすがに携帯電話の中継局を作ることはできない。そのため、パートナー以外との通話は、データ通信も含めてまったく使えなかった。
「浮遊島はまだなのかなあ。早く行ってみたいよね」
 周囲をキョロキョロしながら、ヴァルキリーの集落 アリアクルスイド(う゛ぁるきりーのしゅうらく・ありあくるすいど)が本郷涼介に言った。
「現在位置が特定できませんからあれですが、さすがにそんなに早くは着かないでしょう」
 こうなると、ゴチメイたちについて行くしかないなと、本郷涼介が軽く肩をすくめた。
「それにしても、浮遊島って、どうして動いてるんですぅ?」
 神代明日香が、素朴な疑問を口にした。
「さあ」
 動いているんだから動く物だとしか言えないと、本郷涼介が諦めたように言う。パラミタでは、あまり深く考えると精神衛生上よろしくない事象が多すぎる。
「他の島は動けないんですからあ、もしかして巨大な移動要塞だとか、それとも、実は超巨大飛空艇だとか、それともそれとも、とってもおっきな亀とか鯨だったりしてぇ……」
「もしかして、その巨大生物のせいで、葦原島近くで遭難事故が多発したとか」
 月詠 司(つくよみ・つかさ)が、分かったとばかりに叫んだ。
「巨大生物なら、別の物が出たという噂もあるが。さすがに、目的地がそんな島ではちと困るのう」
 あまり憶測ではしゃぐと怪我をするぞと、ウォーデン・オーディルーロキ(うぉーでん・おーでぃるーろき)が月詠司をたしなめた。
 
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「ふふふ、七不思議です」
「うん、七不思議だよね♪」
 不敵に笑うメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)に、セシリア・ライト(せしりあ・らいと)が楽しそうに繰り返した。どうも、何か特別の親近感を覚えているらしい。
「でも、浮遊島探検なのに、なぜ野球のバットが必携なのですか? まさか、むこうで野球大会を開くとか……」
 どうもよく分からないと、ステラ・クリフトン(すてら・くりふとん)が、持ってくるようにと言われた野球のバットを少しもてあましながら言った。
「まあまあ、野球のバットはいろいろな使い方があるんですよ。道に迷ったときに倒して方向を知ったり、物干し竿の代わりに使ったり、山登りの杖の代わりとか、ビリヤードとか……」
 フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)が、真顔で変な説明をしたために、ステラ・クリフトンはますます困惑するのだった。
 
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「わあ、鳥さんの群れです。渡り鳥でしょうか」
 少し離れた所に、カギを作って飛んでいく鳥たちの群れを見つけて紫月 睡蓮(しづき・すいれん)が言った。
「まあ、大変な体勢で飛んでいるというのに、睡蓮は元気ですね」
 紫月 唯斗(しづき・ゆいと)の来ている魔鎧、すなわち、プラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)がどこからともなく聞こえる声でそう言った。
 四人で一台の小型飛空艇しかないという無茶な状態のため、プラチナム・アイゼンシルトを装着した紫月唯斗とエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)が小型飛空艇に相乗りしている。アリスである紫月睡蓮は、その小型飛空艇に結びつけたロープにつかまりながら、小さな翼と自前の翼を使って飛んでいた。推力は小型飛空艇にあるものの、自分の翼だけで雲海の上を長距離滑空していくのは大変なことだった。
「まあ、のんびり行きましょう」
 あわてずさわがす紫月睡蓮にあわせながら紫月唯斗が言った。