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ゴチメイ隊が行く4 ひょっこり・ぷっかり

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ゴチメイ隊が行く4 ひょっこり・ぷっかり

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「秘密基地かあ」
 朝野 未沙(あさの・みさ)の言葉を聞いたマサラ・アッサムが、ペコ・フラワリーの後ろからちょっと興味深そうに言った。
 あまり人を盾にしてほしくはないと、ペコ・フラワリーが苦笑する。
「空京の周りをクルクルと回る浮遊島だなんて、基地として最高だよね。もちろん、そういうのを作るのは、この朝野ファクトリーが得意中の得意としているんだもん」
 ここぞとばかりに、朝野未沙が、秘密の構想を披露していった。
「地形を利用して、いろいろな施設作れると思うんだよ。そうだなあ、みんなお風呂が好きみたいだから、大浴場とか大露天風呂とかの建設もいいよね。それからと、洞窟にジャワさんの発着場を作って……。それから、樹の周りにドーナッツ型の小屋を作って……。雲海へスーッと滑りでるカタパルトとか。上空に監視衛星もほしいよね」
 なんだかどこかで見たような秘密基地構想を、朝野未沙がえんえんと語っていった。
「それは難しいと思いますよ」
 楽しそうに話を聞いていたアルディミアク・ミトゥナが、ちょっとすまなそうに口をはさんだ。
「それはどういうこと? まさか、すでに空賊が基地を作っているとか……」
 『空中庭園』 ソラ(くうちゅうていえん・そら)が聞き返した。もしそうだとしたら、状況によっては戦闘が避けられない。
「確かに、海賊にいたときに、シニストラさんたちが密輸の仕事で大量の資材を運び込んだようですが。でも、それは別として、多分、恒久的な施設をあそこに作るのはかなり難しいと思います。なぜ七不思議としてあの島のことが伝わっているのかの理由までは分かりませんが、もともとあの島は空京ではなく、パラミタ大陸の周りを何年もかけてゆっくりと周回していると言われている物ですから」
「浮遊島って、みんなそういうふうに回っているんだ」
 アルディミアク・ミトゥナの答えに、ちょっと『空中庭園』ソラが勘違いをする。
「そういうわけではありません。動く島の方が非常に珍しいですね。だからこそ、あの島は特別に彷徨う島と呼ばれているわけですが」
「じゃあ、最近、葦原島とかタシガンとかでチラチラ目撃されたという新しい島って、その島のことなのかなあ」
 久世 沙幸(くぜ・さゆき)が、ここにくるまでに聞き込みしてきた目撃情報を出して言った。
「さあ、そのすべてが同じ島とは限らないと思います。彷徨う島自体はそこそこの大きな島だと聞いていますから。もちろん、空京やタシガンとくらべれば遥かに小さいですが。おそらく、大きな気流に乗って彷徨う島が移動してきたために、支流にあたる小さな気流に変化が生じたのだと思います。おそらく、その一つが客寄せパンダが封印されていた島の近くを通っていたのでしょう」
 ついこの間のパンダ像騒動を思い出して、アルディミアク・ミトゥナが言った。
「そうすると、この間発表になった気流のデータも、もうあてにならないのかしら?」
 雲海のマップを広げて、パビェーダ・フィヴラーリ(ぱびぇーだ・ふぃぶらーり)が言った。探索が進んでいるとは言い難いのでほとんど真っ白なマップには、蒼空学園が公開した気流データが手書きで書き込まれている。平面の地図なので分かりにくいが、実際の気流は立体的に交差していて非常に複雑な物となっている。
「ええっ、せっかくチェックしてきたのに。それは困るんだもん」
 迷子にならないようにと事前にちゃんと調べてきた三笠 のぞみ(みかさ・のぞみ)が、努力が無駄になってしまったのかと思って叫んだ。
「そうですねえ。でも、データがまとめられたのはあ、空京と葦原島の間でえ遭難が増えてからですからあ、とりあえず最新版だと思っていいのではあ」
 その地図をのぞき込みながら、チャイ・セイロンが言った。
「この一番大きな気流があ、現在作られているマップの外にまでのびていますからあ、これがそうなのでしょうねえ?」
「私の記憶とは多少変化しているようですが、多分それで間違いないと思います」
 一番太くて長い気流を指さしてチャイ・セイロンが言うと、アルディミアク・ミトゥナがうなずいた。密輸は、まさにその気流に乗って彷徨える島に追いつくことで行われていたらしい。ただ、直接の当事者ではなかったアルディミアク・ミトゥナでは、現在の気流の正確な位置が分からない。五千年前ならいざ知らず、そのときの記憶が曖昧な今では、あてずっぽうでみんなを導いては危険だ。そこで、雲海を散歩道としているジャワ・ディンブラの出番となるわけだ。
「問題は、浮遊島が今、その気流のどこにいるかですね。目撃情報は、具体的にいつごろのものなのでしょうか」
「ええっとね……」
 メティス・ボルトに聞かれて、久世沙幸が、だいたいの情報を口にした。その期日を元に、気流の速さから、だいたいの位置をメティス・ボルトが計算していく。
「おそらくこのあたりですね」
「思ったより近いんじゃないかな。空京のほぼ真西かな」
 メティス・ボルトの示した座標を地図で見て、ココ・カンパーニュが楽勝だと笑った。
「ですが、一つ問題があります。地図上の座標は割り出せますが、雲海の上ではGPSが正確な位置を計算できないために、自分たちの位置確認ができません。本来は地球の空間に出ている部分でなら正常に作動していいはずなのですが……」
 理解不能だと、メティス・ボルトが言った。
「気流に乗って、追いかけるしかないわけか」
 まあ想定内だとレン・オズワルドが言う。
「それしかないですね」
 アルディミアク・ミトゥナたちも、それにうなずいた。
「それにしても、もっと正確な情報が残っていてもいいはずです。いくらパラミタ大陸一周をする島だからといって、住み着く物好きはいそうですから」
 なぜだろうと、一条 アリーセ(いちじょう・ありーせ)が疑問を口にした。住人がいるのであれば、もっと記録が残っていていいはずだ。
「それは無理です。彷徨う島は、人が住めない島だと言われていますから」
 アルディミアク・ミトゥナが決定的なことを言う。
「なんだよそれ、それじゃ秘密基地作れないじゃない」
 あてが外れたと、ココ・カンパーニュが不満を漏らした。
「この地図ではよく分からないかもしれませんが、よく考えてください。気流は上下に大きくうねったりもするんです。だから、ここ、空京の西あたりなどはいくつかの気流が交差しています。高さという概念があるからこそ、複雑であり、飛空艇にとっては一つの難所ともなっています」
「そこに行くのであれば、少し気を引き締めなければなりませんね」
 ペコ・フラワリーが、お散歩気分の者たちの気をちょっと引き締めた。
「それ以前に、気流の流れによって、浮遊島は雲海の中に沈むこともあるのです。もしそうなってしまえば、とても島の上で暮らすことなどできません」
「だったら、地下基地だよね」
 アルディミアク・ミトゥナの説明する過酷な環境にもめげずに、朝野未沙がまだ秘密基地の野望に燃える。
「でもお、浮遊島は本来、雲海に浮かぶはずなのではあ?」
 それはおかしいと、チャイ・セイロンが突っ込んだ。浮いたり沈んだり、いったいその基準はどこにあるのだろう。
「ええ。ですから、あの島はおかしいのです。もともと、動くはずのない浮遊島が動いているのですから、その時点でおかしいわけですが」
「考えてたってめんどくさいだけだ。それも何もひっくるめて、探検に行こう!」
 ココ・カンパーニュが結論づけた。これ以上ぐずぐずしていては、それこそ浮遊島に逃げられそうな気がしたからだ。
「みなさん、出発の準備を!」
 ペコ・フラワリーが一同をうながした。