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リアクション
【◎1―2・監禁】
百合園女学院の、どこかにある小部屋。
そこでガンガンとなにかが響く音が続いていた。
「やあっ!」
それは桜井静香(さくらい・しずか)が、鉄格子に蹴りをいれる音だった。
だが当然、檻はビクともせず、足にただ痛みが走るだけ。もっとも今、その足は静香のものでなく西川亜美(にしかわ・あみ)のものになっている。足だけでなく、手も、顔も、お腹も、胸も、すべてが変わっている。
一方の静香の身体は亜美が使っているというトンデモナイ事態に、溜め息しか出ない。
唯一助かる点は、亜美のクラスがソルジャーということもあり、普段より身体がしなやかで機敏に動くということくらいだった。
「身体を入れ替えられたなんて、猿の手の力はつくづく途方もないな……わっ!」
と、軽く腕を動かした拍子に、手が胸のわずかな膨らみに触れ、点火したかのように顔を赤らめる静香。前回の場合なら、女性化したとはいえ一応自分の身体だったが。今は西川亜美の身体。恥ずかしくならないわけがなかった。
「あぁ、もう。どうすりゃいいんだろ」
今の静香は誰がどう見ても、西川亜美。パートナーのラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)にさえ気付いて貰えなかった。
亜美は昨日までの事件の黒幕。だからこそこうして閉じ込められているわけなのだが。
「……本当に、亜美が僕を陥れようとしてるのかな」
その答えは現状が語っている気もした。
なにより、先に彼女を拒絶したのは自分。今更後悔してもどうしようもなかった。
「今、何時くらいなのかな」
ここは静かで小窓からの光でしか時刻を判別できない。
とりあえず光の量が少なくなってきたので、夕方過ぎなのは確かなようだった。
静香はかりかりと頭をかきながら、備え付けてあった古びたソファに横になる。
悩みはつきなかったが、暴れていた疲れがあったせいか眠気がすぐに襲ってきて。いつしかまぶたは閉じられ、あっというまに眠りの中へと入っていった。
そのまま再びループによって静香はこの日の朝へと戻されるのだが。
このとき静香は、これから迎える一連の事件の結末が、自分にとって全く予想外のものになるとは、思いもしていなかった。
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