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リアクション
「うーん、本当に女性しかいないんだね」
「そのようですね。こんな島があるとは驚きです」
この辺りの飛行生物を調べていて偶然ティブルシーに迷い込んだエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)、エオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)が率直な感想をもらす。
「おい、そこのあんた」
「ん?」
呼ばれた方を振り向くとそこには恭也の姿があった。
「あんたもこの島の調査に?」
「ううん、偶然迷い込んだだけ」
「そうか。迷い込んだだけで悪いが、ネフュラという女を見かけたら教えてくれないか?」
「ネフュラ、さん。何故?」
「ちょっとそいつが怪しいんでな。それじゃ、頼んだぜ」
そう言い残して姿を消す恭也。
「……連絡手段はどうするんだろう」
「もう手遅れですかね。それより、前を見てください。どうやら歓迎されるみたいですよ、僕たち」
エースが前を向くと、そこには何人かの女性たちと、真ん中に一際目立つ美女の姿があった。
「どうも、旅のお方。私はネフュラ。あなた方を歓迎しますわ」
「初対面にも関わらず手厚いご歓迎の言葉、痛み入ります」
「そんなことありませんわ。ささ、こちらへどうぞ」
案内された場所へ移動した二人。
「すいません、こんな歓迎をして頂いて」
「いえ」
「これはほんの気持ちでしかありませんが」
「あら、素敵なお花。ありがとうございます」
「いえ……ところで、何かありましたか? そちらの方々、怪我を負っているようですが」
「……少しトラブルがありまして、ですがもう解決するので安心ですわ」
一瞬ネフュラの顔が曇るが、すぐにいつも通りの笑顔に戻る。
「ネフュラ様、少しお話が」
「お客人の前ですよ」
「ああ、かまいませんよ」
「すいません。それでは少し席を外させて頂きます」
席を立つネフュラ。エースがくれた花をもって。
「……人の心、草の心を使うつもりですか?」
「まさか。女性のプライベートに土足で上がりこむようなマネはしないよ」
「そうですよね」
「ところでエオリア、何かを得るために何かを犠牲にするのはよくないと思わない?」
「ふむ、具体的には」
「何も知らない人を実験台にして、その人が傷つくことも厭わないこと、とかかな」
「なるほど。それはよろしくありませんね」
「……私もそう思いますわ」
帰ってきたネフュラがエースたちの話を聞いていたのか、相槌をうってくる。
「もう平気なんですか?」
「ええ」
「そうですか。それにしてもネフュラさんもそう思いますか」
「意外ですか?」
「いえ、意見があって嬉しかったんですよ」
「そうですか。ふふっ」
二人のやり取りをみつつ、狐と狸を思い出していたエオリアだが言葉にはださない。
「そうですわ。これから美女コンテストが始まるんですが、一緒にいきませんこと?」
「美女コンテスト、ですか?」
「ええ。商品はあのお方、いえ、主催者様から頂いた人魚なんです。さあ行きましょう」
半ば強引に席を立たされ、コンテスト会場へ連れて行かれる形になったエース。
あのお方、という単語に疑念を抱きながら。
「さて、人魚はこの辺にいるようだが。あとは地道に探すだけか」
「ねーねーアニスがコンテストにでたら優勝できるかな?」
「美少女コンテスト、なら勝機はあるんじゃないか? それより今回は隠密行動だ、派手に暴れてくれるなよ」
「コソコソーとだね! りょーかい!」
ある依頼主から人魚の捜索と救出を請け負った佐野 和輝(さの・かずき)とパートナーのアニス・パラス(あにす・ぱらす)もまた、ティブルシーに来ていた。
「未だ混乱は継続中、か。この機に乗じてすんなり行くといいが……」
「そんなこと言ってるとすんなりいかないよー?」
「ただ希望を言っただけなんだが、難儀するな」
最小ボリュームで喋りながらコンテスト会場周辺を探し回る。
「人魚と言うからには地上に放置されてるわけでもないと思うが」
「ん、和輝ー和輝ー」
「どうした?」
「周りがざわざわし始めたよー」
「……開始前に片を付けたかったが、仕方ない。更に注意していくぞ、アニス」
「アイアイサー♪」
ざわつく会場周辺をあくまで隠密に行動する二人。
時同じくして、別の場所から隠密行動を行うものが一人。
「さて、ここら辺に機晶石の反応があるんだが、美女コンテストねぇ」
エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)がぼやく。
「機晶石じゃ飽き足らず、今度は人魚か? 世界崩壊の危機だってのに」
ホーティの行いに少なからず頭にきているようだ。
確かにホーティのやったことは身勝手という他ない。
「キッツイお仕置き決定! が、そいつは後回しだ。今は機晶石が一番だ」
怒りはあれど目標を失することはないエヴァルト。
「問題は奪った後だ。最悪、姿を晒してぶんどることもあるだろうし、一層注意しねぇと。ニンジャの腕の見せ所だぜ」
奪った後のことも考えつつも、エヴァルトは進む。
そして彼もまた、徐々に徐々に美女コンテスト会場へその足を向わせていた。
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