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伝説の教師の新伝説 ~ 風雲・パラ実協奏曲【1/3】 ~

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伝説の教師の新伝説 ~ 風雲・パラ実協奏曲【1/3】 ~

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第四章:イコン格闘大会二回戦:二日目



 収穫祭は二日に渡って行われていた。またぞろ、見物客が大勢やってくる。出し物も好調らしい。
 イコン格闘大会も、二回戦以降は次の日に持ち越される事になったが、特にクレームもつかなかった。まあ、パラ実だし、となんとなく納得した形だ。
 二回戦進出者たちには、豪勢な宿泊施設と豊作で取れたての農産物を使った料理が施され、待遇も充実している。もちろん、一旦自宅へ帰ってくつろいできてもいいのだが、人それぞれだろう。
 惜しくも一回戦で敗れた参加者たちには、参加賞として“キュウリ300本”と“白菜20kg”が贈られた。これは、二回戦進出者も獲得が出来て、大会は終わっていないのに持ち物で一杯になった。
「ヒャッハー! 極太だぜぇ」
 一回戦第八試合で“大きいモノ”を披露したアキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)は、生キュウリをボリボリ齧りながら、今日は見物だ。絶対無敵要塞『かぐや』は、またいつか活躍する時が来るだろう。それまでお休みだった。
「帰って寝ていても良かったんだがな。胡散臭いし最後までトーナメントの行方を見届けたいじゃないか?」
 カイザー・ガン・ブツは引き上げたが、セリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)は居残るようだった。帰る頃には、パートナーたちがアワビに野菜の料理を作って待っているだろう。
 そんなことをしているうちに、一回戦と同じく審判の柚木 桂輔(ゆずき・けいすけ)が舞台に上がった。最後まで任務を全うするらしい。上空では、アルマ・ライラック(あるま・らいらっく)ウィスタリアも待機中だ。
「みんな、待たせたな! 大会二日目、二回戦を行うぜ! 一回戦を勝ち抜いてきた精強揃いだ。熱戦を期待するぜ!」
 桂輔の宣言で、会場にはまた熱気が戻ってきた。
「二回戦第一試合は、ゲシュペンスト VS フィアーカー・バルだぁ! 両者ともリングへ!」
 拍手と歓声に送られて、斎賀 昌毅(さいが・まさき)のゲシュンペストとトマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)が率いるパワーどスーツ隊、フィアーカー・バルが登場する。
 双方とも、鋭気を養い気力十分だ。
「呼び出しやラウンドガールなら、私たちがやってもいいのに」
 リング間際で応援看板を揚げていたセレンフィリティは、飛び入りで手伝ってくれるようだ。
「さて、ここからが本番だ。米20俵は頂いて帰るぜ」
 結局、イコンの武装を取りに帰らなかった昌毅は真の漢だった。もうパラ実イコンは片付けたというのに、ゲシュンペストは二回戦もイコン一貫で戦う。
「パワードスーツ隊なら、蹴りまくりで倒せます。ボクも海鮮丼食べたいから負けてあげる気はないですよ」
 サブパイロットのマイア・コロチナ(まいあ・ころちな)は、一回戦の景品にキュウリの代わりに大根をもらっていた。海鮮丼にも合うし、漬物にもいける。持ってきたコンテナをパンパンにして帰るつもりだ。
「まあ、言いたければ言うがいいさ」
 トマスは自信ありげにニヤリと笑った。
 彼らだって一回戦では全然本気を出していない。あんなパラ実の雑魚相手に戦ったのが全てだと思ってもらっては困る。
「どちらも気合十分のようだな。じゃあ、二回戦第一試合を始めるぜ!」
 桂輔は、レディー・ゴー! と開始の合図をした。
 ゲシュンペストとフィアーカー・バルは、同時に動いた。
 フィアーカー・バルは、パワードスーツ隊の小ささと機動力を生かして即座に広く展開する。参謀の魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)も、無言だ。連れてきていた【対イコン傭兵】ともども、訓練は十分に行き届いている。
 そこへ、ゲシュンペストが【エナジーバースト】全開で迫った。【ブラスターフィスト】に【クローアーム】の強力な白兵戦武器で、一機ずつ叩き潰すつもりだ。
 テノーリオ・メイベア(てのーりお・めいべあ)は【対神像大型レーザーライフル】を撃った。攻撃は、彼の役目だ。
 それを正面から受け止め弾き返してゲシュンペストは【スルガアーマー】の蹴りを放った。
「ちいっ!? やばっ!」
 パワードスーツの小さな機体が、衝撃で宙を舞う。四機中、一機でも場外へ落ちると負けだ。
 さらにトドメとばかりに、ゲシュンペストの巨大な機械の爪が、テノーリオの機体を場外へと叩き落そうと振り下ろされた。
「させるか!」
 トマスの機体が【PS用特化型格闘セット】からワイヤーを投げる。あわや場外かと思われたテノーリオの機体を引っ張り戻した。
「そこですっ! 海鮮丼は見逃しません!」
 マイアは、好きの出来たトマスに狙いを定めた。一瞬で接敵し、もう一度蹴りを繰り出す。
「……!!」
 トマスは予想していたのか、テノーリオを引っ張りながら何とか器用にかわしてのけた。
「えっ!?」
 次は、マイアが驚きの声を上げる番だった。ゲシュンペストはバランスを崩して派手に転倒した。
 ズズーン! 轟音と振動があたりを振るわせる。
「大きけりゃいいってもんじゃないわ」
 ミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)が、ワイヤーでゲシュンペストの脚を取り引きずり倒していたのだ。
「おおっと、ダウンだ!」
 桂輔がすかさずカウントを取ろうとするが、昌毅がそれを止める。
「不要だぜ!」
 ゲシュンペストは、勢い良く起き上がる。体勢を保ちながらワイヤーの絡みついた脚を引っ張り、ミカエラの機体を揺さぶった。
「くっ!」
 ミカエラはリングを引きずられながらも踏ん張ってワイヤーにしがみ付く。トマスの機体とテノーリオの機体が、【ギロチンアーム】で反撃する。
「効くかぁ!」
 ゲシュンペストもまた、【クローアーム】で追撃した。それをかわして距離をとるフィアーカー・バル。
「!!」
「!!」
 双方が、機動力を生かしてのヒットアンドアウェイで撃ち合いとなった。
 スピードで翻弄しながらアウトボクシングで確実に仕留めにいくゲシュンペストと、「隊」であるが故に可能な分散陽動撹乱行動を活かして応戦するフィアーカー・バル。
 一回戦とは比べ物にならないほどの熱戦に、観客席が大いに沸いている。
「いい感じに腹も減ってきたし、そろそろ決着だぜ!」
 桂輔が勝負を決めに行く。
「それを待っていたんだ!」
 トマスは、ここぞとばかりに踏み込んだ。
 すぐ傍には、連携を取りながら目くらましに動いていた子敬の輸送車両が突っ込んできている。真後ろからは、テノーリオとミカエラがピタリと張り付いていた。
「カミカゼアターック!」 
 子敬が叫んだ時には、彼の乗る輸送車両はトマスたちの機体によって、ゲシュンペストに投げつけられていた。
「なっ!?」
 すぐ傍まで急接近していたゲシュンペストは避けることが出来ない。輸送車両は、正面から勢いに任せて激突した。
「痛っ……、くありません!」
 子敬は、シートベルトは戦闘機用の6点支持のに変更し、クッションやエアバッグ装備の準備を万端にして投げられるための準備は万端だった。
 相手のイコンにめり込む衝撃が全身を襲うが、投げられ役をきちんとわが身の事と受け止めて、冷静さを保ったままだ。
「これぞ、人間大砲。ならぬ、……うう、なんでしたっけ?」
 まさか、自分達の仲間を投げつけるとは思っていなかった、完全なる不意打ちであった。
「そんなの、ありかよ!?」
 フィアーカー・バルの会心の一撃に、ゲシュンペストは勢いのあまり再び転倒する。
 そして、今度はそのチャンスを逃すフィアーカー・バルではなかった。四人と【対イコン傭兵】が、一斉にワイヤーを放つ。ゲシュンペストが起き上がれないようにして、10カウントを狙うのだ。
「これで、終わりだ!」
 トマスたちのワイヤー攻撃が、ゲシュンペストを襲った。
「……!」
 こんなところで海鮮丼を諦めるわけには行かない! 昌毅は反射的に【ワイアクロー】を発動させていた。短距離ならワープ同然の移動ができるワイヤーによる立体機動。鉤爪がリングの淵に引っかかり、ゲシュンペストに瞬間移動をさせていた。
 相手の動きを上回る動き。フィアーカー・バルのワイヤーが捉える前に、ゲシュンペストはリング際まで無事に退避する。
「バカな!」
 トマスは信じられない表情になった。タイミング的にも攻撃力的にも完璧だった。まさに身を挺しての奥の手だったのだが。機体、錬度ともに相手が一枚上だったのだ。
「今度こそ、これで終わりだ」
 昌毅はゲシュンペストにめり込んでいた子敬の輸送車両を両手で掴み上げ、持ち上げる。
「わが作戦に悔いなし!」
 他の三人の援護も空しく、子敬の輸送車両は場外の地面に叩きつけられていた。グシャリ! と嫌な潰れ方をして動かなくなったが、まあ大丈夫だろう。
「勝負あり! 勝者はゲシュンペスト!」
 桂輔が勝負の決着を告げた。
「しんどかったです」
 マイアがサブパイロットの席でぐったりと溜息をつく。戦闘時間は短かったが、一回戦とは比べ物にならないほど伯仲した戦いだった。
「う〜ん、残念だ。アレを防がれちゃ、どうしようもない」
 トマスは、地面に突き刺さっている輸送車両を回収して、引き上げていく。
 敗れはしたが、パワードスーツ隊の戦いは十分に見せることが出来ただろう。観客席からは惜しみない拍手が送られた。
「でもまあ、時間を稼いだだけのことはあったかな」
 トマスは、ずっと大会を監視していたTVカメラに視線を向けた。その映像がどこへ送られているのか、誰が見ているのか。調べるのに、恐らく時間はあまりかからない。
「十中八九、イコン戦闘のデータを収集しているんだろうね。特命教師たちが、今後のために使うのかな?」
 それは他のメンバーたちが調べてくれるだろう。結果が楽しみだった。


 二日目の第一試合は、こうして終わった。