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リアクション
11.
ヴァル・ゴライオン(う゛ぁる・ごらいおん)は森への立ち入りを禁止していた。子ギツネを捜索している者以外は中へ入れさせないようにしたのだ。
森へ入りたければ、名簿と照合して確認をとらなきゃならない。
そうして周囲に目を光らせるヴァルの隣で、シグノー イグゼーベン(しぐのー・いぐぜーべん)は退屈していた。
「いつになったら現れるんスかね」
もしかすると森での捜索は無駄になるかもしれない。そう思った時だった。
がさっと何かの足音がして、木々の合間に見慣れぬ女性が映った。
「行くぜ、シグ!」
と、打ち合わせ通りにヴァルが女性を追う。シグノーは別の道を辿って先回りをする。
「見つけたぜ、子ギツネ! 覚悟しろ!」
女性はすぐに子ギツネの姿へ戻り、四本足で駆け始めた。ヴァルも超感覚を使って獅子となり、子ギツネを追う。
「今助けるっス!」
と、子ギツネを庇うように出てくるシグノー。打ち合わせ通りの演出である。
子ギツネはびっくりして瞬間的に風を巻き起こす。いつものハーフパンツを洗濯していて、仕方なく着てきた制服のスカートがふわりと舞うと、次の瞬間にはヴァルが殴られていた。これも演出……のはずだが、ヴァルは意識を失っていた。
「悪い奴はやっつけたっスよ!」
シグノーが振り返ると、そこに子ギツネの姿はなかった。
緑と茶色の森の中で、白い子ギツネはよく目立った。神代明日香(かみしろ・あすか)は木陰に隠れた子ギツネへ、そっと歩み寄る。
「見つけたっ」
と、声をかける明日香。子ギツネは彼女の顔を見ると、周囲を確かめるようにきょろきょろしだす。
明日香が優しく手を差し出すと、子ギツネは歩き出してしまった。心を開いていないのか、懐くどころか離れて行ってしまう。
「キツネさん、出ておいでー」
遠くから聞こえた声にはっとする明日香。自分の他にも子ギツネを捕まえようとしている人がいたから、それを警戒して行っていまったようだ。――淡い黄色のパンツが誰にも見られずに済んだのは幸福か。
レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)は木の影を重点的に探し回っていた。
白いからすぐに見つかると思っていたが、さすがにそう簡単にはいかないらしい。
「キツネさーん?」
呼びかけてみると、数メートル先を白い影が横切った。駆け出したレキの後を追うミア・マハ(みあ・まは)。
「見つけたよ、キツネさん!」
子ギツネは逃げなかった。それどころか近づいてくる。女の子に懐くのは本当だったのだと確信するレキだった、が。
「む、良くやった。褒めてつかわす」
と、ミアが眼鏡をかけ直し、彼女をガン見する。ぶわっと巻き起こった風が、レキのスカートを上へと押し上げたのだ。
「きゃあ!?」
レキには何が起こったのか理解できなかった。パステルブルーのパンツは未だ、隠されないままだ。
そうしてぼーっとしている内に、子ギツネはまた逃げ出してしまう。
「子ギツネちゃん、見つけましたですっ!」
と、叫ぶ広瀬ファイリア(ひろせ・ふぁいりあ)。ウィノナ・ライプニッツ(うぃのな・らいぷにっつ)とウィルヘルミーナ・アイヴァンホー(うぃるへるみーな・あいばんほー)も、すぐにファイリアの後へ付いて行く。
やはり疲れているのか、子ギツネは木の陰で休んでいた。逃げ出すこともせず、先ほどと同じように人間たちが近づいて来るのをじっと待つ。
ファイリアたちとの距離が数メートルまで近づいたところで、子ギツネは風を起こした。
「はわっ!? す、スカートがー!」
慌てて後ろへ避けるファイリア。
「ひゃああっ!」
こ、これが別名の由来か! と、ウィノナ。
「きゃあああっ!」
見ないでくださいーっ! と、その場でスカートを押さえるのはウィルヘルミーナだ。
「も、もしかしたら、怖がってるのかもしれないです。ファイが怖くないってこと、アピールするです」
そう言ってファイリアは再び子ギツネへと近づいた。
ウィノナがくっつくようにしてファイリアのスカートがめくれないよう、おさえる。それを見て、ウィルヘルミーナも仕方なくファイリアへくっついた。
「大丈夫ですよ、子ギツネちゃん」
巻き起こる風にもめげず、ファイリアは手を伸ばす。横の二人はパンツまる見え状態だったが、我慢だ。
子ギツネは弱々しく「クォン」と鳴くと、ファイリアを見上げた。
「ファイがお母さんの所へ返してあげるです」
にっこり笑うその表情で、子ギツネは心を許した。
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