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【2020授業風景】理科の授業は白い子ギツネ

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【2020授業風景】理科の授業は白い子ギツネ

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2.

 毒島大佐(ぶすじま・たいさ)はやる気がなかった。理科をやるなら化学にしてくれれば良かったのに、と頭の中で文句を垂らしながら街をぶらつく。
 ふいにどこからか悲鳴らしきものが聞こえた気がして、大佐は立ち止まる。

「見てないよね? 見てないよねっ!?」
 必死にスカートを押さえながら、榊花梨(さかき・かりん)は後ろを振り返る。
「大丈夫ですよ、自分は見てませんから」
 と、神楽坂翡翠(かぐらざか・ひすい)が答えれば、花梨はすぐに翡翠へと抱きつく。フォルトゥーナ・アルタディス(ふぉる・あるたでぃす)は前方からこちらを見つめる子ギツネを見ていた。
「何なの、この風」
 子ギツネはフォルトゥーナに懐くべきか、翡翠を警戒して逃げ出すべきかで悩んでいる様子だ。
 とりあえずスカートを押さえて下着を見られないようにしながら、子ギツネの方へと一歩進む。
 ぶわっ、と木枯らしのような風が起こったかと思うと、子ギツネの姿は消えていた。
「……あれ、キツネは?」
 涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、花梨は首を傾げた。

「ピンクのレースに黒のサイドリボン付き」
 大佐は今起きた事を一から冷静に思いだすと、ペンとノートを取り出した。
 ――これは面白いことになりそうだ。

 キツネといったら油揚げ。
 高務野々(たかつかさ・のの)は手にした油揚げを見つめると、人気のない路地に入り込み、それを地面へ置いた。
 そして自分もその近くで待機し、子ギツネが来るのを待つ。
「捕獲に成功すれば、きっと理科の成績も良くなるはずですっ」
 ぐっと拳を握りしめ、待つこと数分――。
 まるまるとした小さな白い動物が、ひょこっと現れた。
「……」
 赤い目をした子ギツネは野々の足元まで来ると、油揚げの匂いを嗅ぎ始めた。一応、警戒しているらしい。
 子ギツネは野々へ顔を向けると、可愛らしい声で「クォン」と鳴いた。直後に野々のスカートが下から上へとめくられる。
「いっ……!?」
 何が起こったのか分からない。しかし今がチャンス、子ギツネは私に懐いている――っ!
「見つけたでござる!」
 ざざっと音を立ててやって来た薫は……無意識に目を輝かせた。
「青と白のしまパン」
「見ないでくださいっ!」
 野々は慌ててスカートを押さえた。
 子ギツネは油揚げに口をつけず、そのまま路地の奥へと去ってしまう。
「待つでござるー!」
 薫は先ほどよりも元気な様子で駆けだした。

 崩城亜璃珠(くずしろ・ありす)の後をついて歩く冬山小夜子(ふゆやま・さよこ)。ヴァイシャリーの中でも人気のない地域へと入り、亜璃珠は唐突に路地裏へと入った。
「御姉様? 何で、人気のない路地裏に?」
 と、小夜子が声をかければ、亜璃珠が振り返って笑う。
「子ギツネを探すよりも、もっと楽しいことをしましょう」
「?」
 亜璃珠は辺りに人気がないのを改めて確認すると、小夜子を壁へと押し付けた。
「っ、御姉様……!?」
 薄暗い路地で顔を間近に合わせると、亜璃珠は軽く小夜子へ口づけた。そっと彼女のスカートへ手を伸ばし、めくりあげる。
「ふふ、やっぱりいつもより下着に気を遣ってる」
 と、小夜子の白い脚によく似合う純白のレース付きパンツを見る亜璃珠。
「っ……」
 小夜子は恥ずかしさのあまり、顔を逸らす。口は固く閉じられていたが、完全に受け身の状態だ。
「誰かに見せるつもりか……いや、違うわね。誰かに見られたかったんでしょう?」
 そう言って亜璃珠は小夜子との距離をぐっと縮めた。