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輝く夜と鍋とあなたと

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輝く夜と鍋とあなたと
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 夕方ちょっと前。
 広場の入り口で電話を掛けている金ぴか……エル・ウィンド(える・うぃんど)の姿があった。
「そっか……そんなに謝らないで、大丈夫だよ! 今度また一緒にカマクラとか鍋とかやろう! うん……うん……いや、そんな事情があるのに無理矢理来ることないから! ねっ!? ……うん……うん……じゃ、今度の土曜に!」
 エルは恋人との電話は切ると少しだけ溜息を吐いた。
 真っ白な溜息は白銀世界を作り上げている一面の雪の中へとまざり、溶けていった。
(一緒に鍋やりたかったけど……うーん……流石に1人で鍋をやるのも寂しいし……)
 エルは地面に視線を落とした。
(そうだ!)
 近くにいたタノベさんを捕まえた。
「タノベさん! ここで雪だるまとかやっても良いんだよね?」
「ええ、構いませんよ」
 了解を得ると、広場の入り口付近で一番雪が綺麗な場所を選び、小さな雪玉を1つこしらえた。
 それをコロコロと転がし、自分の胸くらいまで大きくした。
 大きくなった雪玉を入口の目立つ場所へと置き、次の雪玉を転がしていく。
(今日は一緒にいられないけど、これなら寂しくないよね!)
 全部で4つの雪玉を作ると、ちょっと小さめに作った雪玉を大き目の雪玉へと乗せる。
 エルの身長より少し大きい2つの雪だるまが現れた。
 これだけでは終わらないようで、細い棒を持ち、何やら雪だるまを削っていく。
(流石に手が冷たい……でも、頑張る!)
 作り出してからすでに1時間ほどが経過していた。
 太陽が赤くなり、沈んでいく。
 辺りを見回すと、カップルや大勢の人が広場の中へと入っていった。
(が、頑張るっ!)
 エルはさすがに少しさびしくなったみたいだが、マフラーを巻きなおし、手袋をはめ直すと気合いを入れ、雪だるま作りへと戻った。
 引っ掻く作業が終わると、細い棒で顔を作り、自分の輝きを表す為に持っていた光条石や光る種モミを体に散りばめた。
 恋人の雪だるまの腕にも光る種モミを使って、自分が作ってプレゼントした腕輪を再現。
「出来たーーっ!」
 完成したのは光り輝くエルと、胸が本人よりもほんのちょっぴり大きく作られた恋人の雪だるまだ。
 いそいそと携帯を取り出し、カメラ機能を作動させ、写真を撮っていく……のだが、日が完全に落ちてしまった為、なかなかうまく写らない。
「完成したのですね」
「うん……そうなんだけど……」
 タノベさんが携帯に目を落としたエルに気づき、少し待つように言うと、どこかへ走って行った。
 暫くして戻ってきたときには、後ろに2人従えていた。
 2人はそれぞれコンサート等に使われるような地面に置けるライトを持っており、手際良く設置。
 長く伸ばしたコンセントを差し込むと、2体の雪だるまがライトアップされた。
「ありがとう!」
「いえいえ、どうぞイベントを楽しんで下さいね」
 そういうと、タノベさん達はどこかへと消えて行った。
 エルは嬉しそうにライトアップされた雪だるまを撮影して、メールで恋人の元へと送ったようだ。