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輝く夜と鍋とあなたと

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輝く夜と鍋とあなたと
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「シーナ、オレは仕事で行けませんが、帰りはスパークくんにちゃんと送ってもらうんですよ?」
「はい、リュース兄様! では、行ってきます!」
「いってらっしゃい」
 リュース・ティアーレ(りゅーす・てぃあーれ)シーナ・アマング(しーな・あまんぐ)を見送ると、部屋へと戻った。
「さ、仕事、仕事」
 今日はどうしてもやらなければいけないフラワーアレンジメントの仕事が入っていた為、シーナを見送ると、仕事へと没頭していったのだった。

 シーナが待ち合わせの公園入り口に着くと、すでに遠野 歌菜(とおの・かな)月崎 羽純(つきざき・はすみ)スパーク・ヘルムズ(すぱーく・へるむず)が待っていた。
「ごめんなさい! お待たせしてしまって!」
「大丈夫だよ! こっちが早く着いちゃっただけだから」
 シーナは慌てて謝り、歌菜の言葉を聞いて、腕時計を確認すると、確かに5分前……それでも悪いと思ったのか、あわあわしてしまっている。
「早くカマクラの中に入ろうぜ? シーナ、寒いだろ?」
「えっ……でも……」
「良いから、どうせそんなに待ってないんだし」
 スパークがシーナの手を引いて、広場の方へ歩き出すと、その後ろを歌菜と羽純が寄り添って歩いていく。
「そうだよね〜。楽しみすぎて急かしたのはスパークだもんね〜」
「余計なこと言うなよ!」
 歌菜の言葉にスパークが噛みつく。
 2人のやりとりにシーナと羽純から笑みがこぼれる。
 そんな感じの会話をしていると目的の広場にはすぐに到着した。

 カマクラの中に入ると、タノベさんから貰って来た材料を広げ、歌菜メイン、シーナお手伝いという形で料理がスタートした。
「俺も手伝うぜ?」
「俺もだ。何かあるなら言ってくれ」
 スパークに次いで、羽純も申し出る。
「大丈夫、大丈夫〜。ここは任せて!」
「お2人はまったりしてて下さい」
 そう言われ、スパークと羽純は男同士での会話となった。
 会話をしながらも、スパークはシーナを、羽純は歌菜を見ている。
 そう時間もかからず、美味しそうなキムチ鍋が完成した。
「はい! 羽純くん」
「すまない」
 歌菜からよそってもらった皿を羽純が受け取る。
「スパーク、どうぞ」
「おう」
 シーナは勿論、スパークによそう。
 4人全員に皿がいったところで、いただきますとなった。
「シーナ、鍋は熱ぃから気を付けろよ? ちゃんとこうやって息を吹き掛けて食べるんだぜ」
 スパークは猫舌のシーナを気遣って、ふーふーして見せた。
「スパーク、確かに私、猫舌ですけど……大丈夫ですよ……でも、熱くてたしかに火傷しそうですね」
 シーナは1口食べるとそう言い、舌を出して、手で仰いだ。
「言ってるそばから……大丈夫か? 舌、見せてみろ」
「う?」
 スパークはシーナの顎を持ちあげて、舌を見つめる。
「赤くなってんな。そこまで酷くもねぇから、舐めとけば治るだろ」
 そして、そのまま……舌をぺろりと舐めた。
(うわー、うわー、うわー……スパークそれってばキスだよ! 無自覚でやってるんだ……見てるこっちが赤面しちゃうよ!)
「ふふっ……」
「羽純くん? 何で笑ってるの?」
「スパーク達を見て、百面相してる。面白い」
「わ、私のことはいーから、今日はスパークとシーナちゃんを観察するのっ」
 らぶらぶの2人を見て、歌菜が口をパクパクさせているのを羽純がつい笑ってしまった。
「あ……」
「えっと……」
 歌菜と羽純がいることを思い出したスパークとシーナは赤面して固まってしまった。
「そ、そうだ! 歌菜姉様!」
「うん、何?」
「歌菜姉様、スパークを私にください!」
「!!」
 シーナ以外の3人は大真面目なシーナを凝視している。
「あ、あれ? 日本ではお付き合いをしている挨拶はこうするのだと学んだのですが……?」
「そ、それは俺の台詞だろ!」
「えっ!? そうなんですかっ!?」
 間違えた事に赤面してシーナはうつむいてしまった。
 スパークもあまりのことに赤面中。
「シーナがスパークを婿に貰うのか? スパークは幸せ者だな」
「えーっと……つまりそれって、もしかして……結婚するときの挨拶だったんですね……」
 羽純の言葉にシーナは茹でダコのようになってしまい、今にも顔から湯気が出て来そうだ。
「シーナちゃん可愛い! スパークなら熨斗つけてあげるよ!」
 歌菜があまりの可愛さにシーナを抱きしめながら言ったのだった。
(あぁ……今夜の酒は美味い)
 羽純は微笑ましいと感じながら、熱燗に口を付けた。

 帰り道。
 スパークはシーナを家まで送っている。
「わぁ! 見て下さい! 満点の星空ですよ!」
「そうだな」
 シーナが空を見上げながら歩くので、ぶつからないように気を使いながら歩く。
「シーナ」
「はい?」
「シーナ、いつか俺が『お前をください』って、リュースの兄貴に言うから」
「……はい!」
 スパークがシーナの手を強く握った。
 2人を見守るように星が瞬いたのだった。