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輝く夜と鍋とあなたと

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輝く夜と鍋とあなたと
輝く夜と鍋とあなたと 輝く夜と鍋とあなたと

リアクション

 夕方の広場にて。
 サングラスを装着し、パンチパーマのカツラを被った誰だかわからない変装をした人物が白雪 魔姫(しらゆき・まき)フローラ・ホワイトスノー(ふろーら・ほわいとすのー)に絡んでいた。
「ようようネエチャンよぅ! 独り身の俺と一緒に鍋をつっついてくれんかのぅ! ついでに色々ちちくりまわそうやないかぁー? おうー?」
「はぁ……出会いがあるかと思って期待して来てみたら……まさかチンピラ出会うなんてねー……溜息が出ちゃうわ」
「魔姫〜、もうこんなんほっといて先に行こうよ〜。他の人が見つかるかもしれないし」
 フローラは魔姫の裾を引っ張り広場の中へと行こうとする。
「ああ〜ん!? こんなイケメン放っておいてそれはねぇだろぅ?」
「しつこい、うざい、きもい。下僕にもしたくないわね」
「ぐはっ!!」
(俺は……俺は……お手伝いしたいだけやっちゅーのにー!)
 魔姫の言葉はパンチパーマにクリティカルヒットした。
「その辺にしておいたらどうです? 彼女達困ってるじゃないですか」
 広場に友人が来ているかも、と訪れていた長原 淳二(ながはら・じゅんじ)がパンチパーマの肩に手を置いたのだ。
「おおぅ? ニイチャン、俺の邪魔するってか?」
 パンチパーマは淳二に絡み始めた。
「あまりしつこいと……って、カツラずれてますよ?」
「うわぁぁっ! 俺の正体がばれてまうー!」
「……あなたもしかして……社?」
「ぎくっ!!!」
 魔姫がそう言うと思いっきり肩を震わせた。
「だ、ダレノコトカナ?」
「いや、思いっきり棒読みになってますけど?」
「だぁぁぁっ! そうやっ! 俺や! 日下部 社(くさかべ・やしろ)やっ! 恋人のいない寂しい人を応援しようとやってたのに……うぐぅ……」
 淳二に指摘され、社はカツラとサングラスを外し、正体をばらしたのだった。
「あなたも恋人はいないって思ったけど?」
「う……あ……えーっと……ああ! もう! 一緒に鍋でもしようやないかっ! なっ!?」
 返答に困った社が提案した鍋に3人とも顔を見合わせたが、賛成することにしたようだ。
 社と淳二がタノベさんのところから材料をもらいに行き、魔姫とフローラがカマクラに先に行って、七輪に火を入れておく。
 社と淳二が材料を持って、カマクラの中に入ると、温かい空間が出来あがっていた。
「こりゃ、良いわ〜」
「本当ですね」
 早速、社と淳二もコタツの中に入り、ぬっくぬくになる。
「……で、誰が鍋を作るの?」
 魔姫が言うと、皆シーンとしてしまった。
「私は食べるのは好きだけど……料理は……普通だよ」
「ワタシはあまりやったことがないわね。その必要もなかったし」
 フローラがおずおずと言うと、魔姫も言葉を発した。
「俺はアクセサリーなら作るの得意ですけど、料理は……食べる方が得意です」
「あら! アクセサリーが作れるの? 素敵ね!」
 淳二が言うと、アクセサリーという言葉に魔姫が食いついた。
「そんなことは……まだまだですよ」
「どんなの作るの?」
 魔姫の目は輝き、淳二の隣の席へと無理矢理入った。
「だぁぁっ! それより! 鍋やろっ! 鍋っ! 仕方ない……俺が作ったるわ。たこ焼き鍋を!」
「それ本当に美味しいの〜?」
 フローラは疑わしい目で社を見る。
「おう! 任せとき! この鍋はソースが決めてなんやっ!」
 そう言うと、社は本当に料理を始めた。
 その間、魔姫と淳二はアクセサリーの話しで盛り上がってるし、フローラはワクワクしながら鍋を待っている。
 タコをぶつ切り、キャベツを大き目に切り、たこ焼きのタネを作り、タノベさんのところから借りて来ていたたこ焼きのプレートを用意した。
 鍋にはカツオの出汁を入れ、キャベツを入れておく。
 たこ焼きが焼け次第、鍋の中へと放り込み、紅ショウガも入れ……煮立ったところで鰹節をたっぷりと、葦原印のたこ焼きソースを掛けた。
「ふっふっふ……どうやっ! うまそうやろ!? どんどん食えやー! たこ焼きの中には牛筋を入れたやつもはいっとるしな! あと、皿に取り分けてから好みでマヨネーズ掛けてや〜」
 満足そうに言うと、社は食べ始めた。
「……本当にたこ焼き鍋ね」
「美味しそうな匂いはしますが……どうなんでしょう?」
 魔姫と淳二は顔を見合わせた。
「いただきま〜す!」
 フローラは持ち前の好奇心で手を出し、たこ焼きを口へと放り込んだ。
「ん!?」
 フローラの反応に2人が注目する。
「美味しい!!! これアリ!!」
 魔姫と淳二も恐る恐る食べてみる。
「いけるわね」
「美味しいですね」
「そうやろ、そうやろ〜。さ、どんどん食べてやっ! たこ焼きならなんぼでも焼くからな〜」
 社の作ったたこ焼き鍋は好評のうちに終わった。
 恋人探しに来ていたフローラはいつの間にか食べるのに熱中していたし、魔姫と淳二は食べながら会話をしていたのだ。
(これで少しは役に立ったやろ♪)
 色々な意味で社は満足そうだ。