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ゆる族はかまってちゃん!?

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ゆる族はかまってちゃん!?

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◆第3遊◆    愛でられ愛でるひとたち

(ああ〜、やっぱり、ゆる族、かわいいかわいい!!)

 セルマ・アリス(せるま・ありす)は心の中で、満開の花を咲かせていた。
 苦労性の彼にとって、至福の瞬間があることで何もかもが報われるのだ。

 セルマは今まさにうさぎのぬいぐるみ……もとい、ドンに付き添ってイルミンスールの≪マジ☆カフェ≫から
 森の集会所へ戻る道中だった。


 最高のおもてなしをしてもらっていたのはいいが、自分がリクエストしたデザートを二の次にされたことが不満で、
 ドンはプリンのカラメルだけをすすって作り手の佐々木 弥十郎を困らせていたのだ。



 皆で協力してドンの面倒を見ようと思い、密かに待機していたセルマはそこで単身カフェに乗り込み、
 「体を動かせば、きっとスッキリするさ!」と、ドンとふたりで遊びに外へ出てきた――そして現在に至る。


 セルマにとって、隙間ないドンの言葉の嵐も、何かをして欲しそうな視線も、すべて受け止めてもさほど苦ではなかった。


 ……けれど本当は複数人で賑やかに遊びに出たかったセルマだ。
 心は薔薇色、外見は曇り色の理由はそこにあった。



(みんながいれば、ドンくんもすぐに打ち解けられると思ったんだけど、な……)



 失敗したかもしれない、と、セルマが切なげな視線を後方に送った。
 セルマが瞳を向けた先に、自分とドンを後ろから定間隔あけて追いかけてくる退紅 海松(あらぞめ・みる)と、
 海松のパートナー、フェブルウス・アウグストゥス(ふぇぶるうす・あうぐすとぅす)の姿が否応でも飛び込んでくる。

 もっと仲間がいればいいと願いはしたが、セルマはそこまでハイレベルな助っ人を要求などしていないつもりだった。



「可愛い子には旅をさせよ、というシーンですのね! 青春的ですわ、友情ですわぁ!!」



 どこに目をやっても男の子がいる……という逆ハーレム状態に、海松は幸せそうに叫ぶ。
 こういった状態の主人はすでに見飽きているのか、それとも単に無駄を極端に省いているだけなのか、
 フェブルウスは無表情で傍観の一方だ。

 海松の強烈なキャラクターを目のあたりにしたドンは、羨ましげな目で彼女を見つめている。
 自分から逸れたみんなの目を取り戻したかったゆえの仕草だったのだが、
 ゆる族特有の可愛さ100パーセントの容姿から繰り出されたそれは、海松の愛護欲に火をつける種となった。



「こんな可愛い男の子に羨望の眼差しを向けられたら……もう……もう悔いはありませんわ」



 海松はカメラを両手に、ドンの前に飛び出す。



「天国への切符に、その愛らしい姿を写真にとってもよろしぃ―――っ、はぁう!!」
「失礼します」



 海松のみぞおちに、フェブルウスの鈍器さながらの重い鉄拳が叩きこまれた。
 こと戦いに特化した機晶姫の一撃がどれほど強いかは、説明しなくても分かるだろう。




 海松が漫画のような『キラキラ』を散らしながら倒れたるのと、ドンとセルマが硬直するのと、
 さらには一行が森の集会所に到着するタイミングはバッチリ一緒だった。