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リアクション
生の活力を奮い立たせろ! ♯1
撃墜王の座を狙ってイコンたちが戦場を駆けるが、なにも前に出ることばかりが戦場の仕事ではない。
「さあ、てめえら! 俺の歌をきけぇ!!」
和希ロボに乗る姫宮 和希(ひめみや・かずき)はソニックブラスターに驚きの歌で戦うイコンたちを援護していた。
前線で戦うイコンたちは和希の歌に背中を押されて、次々と敵を撃破していく。
が、その中をかいくぐり和希たちを狙ってくる蜂型イコンたちも当然存在した。
「和希、ここは一度後退しよう。俺たちの仕事はあくまでもサポートなのだから」
ガイウス・バーンハート(がいうす・ばーんはーと)にそう言われて、和希は蜂型イコンを引き連れるように後退する。
「おいおい、数がどんどん増えてないか? 大丈夫なのかよ?」
和希はハエでも叩くように蜂型イコンの攻撃をいなすが、それだけでは防ぎきれずわずかにだが機体にダメージを蓄積させていった。
「案ずるなユビキタスを使って、今味方が敵の横腹を攻撃できる位置に誘導しているのだ」
ガイウスがそう言っていると、西の方角からアンシャールに乗った遠野 歌菜(とおの・かな)がやってきた。
「味方が狙われてるよ! 羽純くん、援護しないと!」
「ああ、わかってる」
月崎 羽純(つきざき・はすみ)はアンシャールを加速させ、歌菜は戦慄の歌で蜂型イコンの動きを止めると、
「くらえー!」
暁と宵の双槍を振るい、蜂型イコンとの距離を離した。
「隙あり!」
叫ぶなり、アンシャールはマジックカノンの砲撃で蜂型イコンを撃滅させた。
「悪いな、助かった」
「いいんですよ、お礼なんて。そんなことより、もっと歌って戦ってる人たちを応援しましょう!」
「おう、いっちょやってやるか!」
「援護の方は任せてくれ。接近を確認次第、知らせて迎撃行動に移る」
羽純は淡々とした口調で言うと、ガイウスも続いた。
「こちらもサポートには全力を尽くそう。こちらは、ヴィサルガ・イヴァの力を解放させよう。さあ、二人は全力で歌うといい」
「そこまで言われたら」
「遠慮無くいくぜ!」
和希と歌菜は同時に笑みを浮かべると肺に空気を送り込み、和希は驚きの歌を歌菜は鼓舞の歌を歌う。
爆音と金属が潰れるような音をかき消すように、二人の声が戦場に響き渡った。
和希と歌菜のイコンが味方を鼓舞している頃、イベント船の中でも応援の準備が着実に進んでいた。
ステージ設置に全力を注ぐ甲斐 英虎(かい・ひでとら)は芸術知識を活かし、日曜大工セットでステージを作り上げていた。
「舞台も出来るだけ、急ごしらえでみすぼらしく見えたりしないように整えたいねー」
英虎がそう口にしているように、ステージはとても急ごしらえとは思えないほど見栄えのいいものになりつつあった。
一人二人が立てばいっぱいになりそうな狭さではあるが、細かい部分も丁寧に作っており映像に移す部分だけを抜くということであれば充分すぎる代物になっていた。
「ユキノ、そっちはどう?」
英虎は甲斐 ユキノ(かい・ゆきの)に声をかける。
「こっちも順調でございます」
そう言いながらユキノはステージ衣装をチクチクと縫っている。
「とりあえず、舞台も作り終わったから。そろそろ本番に入ろうか」
「了解でございます」
ユキノは裁縫を止めると、変身ブレスレットを手に巫女服姿に着替えてみせる。
英虎が周囲の明かりを落とし、ステージにライトを照らすと飛鳥 桜(あすか・さくら)と赤城 花音(あかぎ・かのん)、リュート・アコーディア(りゅーと・あこーでぃあ)が上から飛び降り、
「イッツ・ヒーロー・タイム!」
桜の声が響き、メタモルブローチを使って変身してみせると船内にいた人たちも歓喜の声を上げる。
「チェリーブロッサム参上さ! さあみんな、今日は盛り上がっていこう! ローデ兄!最高にCoolでniceな音を頼むよ!」
桜が声をかけると音響を担っているローデリヒ・エステルワイス(ろーでりひ・えすてるわいす)はやれやれとため息をついた。
「まったく……私の得意分野はクラシックなのですが……戦場だろうと音楽が必要とならばそうも言ってはいられません。私も音楽家ですからね」
そう言いながらローデリヒは音楽をかける。
曲は『START!』だ。
大音量で流れる音楽に合わせて船内の人たちもテンションを最高潮にまで上げる。
その音量と歓声に負けないくらいの声量で花音が声を出す。
「みんな! 何も考えず、歌おうよ! それが?生の活力?そのものなんだからね」
それに続くようにリュートも声を出す。
「皆さんの力でこのイベントを成功させましょう。協力お願いします!」
その言葉に応じるように船内の人たちは声をあげ、ステージの三人に合わせて『START!』を歌い始めた。
音調もばらばらで、合唱と言うにはあまりにも拙いものではあったが。そこには音を楽しむと書いて『音楽』が確かに存在して、?生の活力?が満ちあふれていた。
イベント船から聞こえる歌声を背にネーベルグランツに跨がるリネン・エルフト(りねん・えるふと)はナハトグランツに乗っているフェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)に声をかけた。
「フェイミィ、派手に暴れてやりなさい!」
「分かってるって! いくぜ、ナハトグランツ!」
フェイミィに声をかけられナハトグランツはいななくと蜂型イコンに向かって突撃し、リネンは死角をカバーするように後方からついていく。
急接近に対応しきれず蜂型イコンは迎撃機能のない側面をとられ、
「もらっったぁ!」
フェイミィは天馬のハルバートで切り裂いた。
「っ!?」
柔らかそうな腹の部分は切り裂かれると、火花を散らしてその場で爆発してしまう。
「わっぷ!?」
かけらが飛び散り煙がフェイミィの顔にかかり、一瞬、フェイミィの動きが止まる。
その隙を突くようにもう一体、蜂型イコンがフェイミィに突撃する。
「甘い!」
その隙をカバーするようにリネンが手にしていた剣でイコンを切り裂く。
「おお、悪いなリネン。助かったぜ!」
「油断しないで、まだまだ数はいるんだから」
「へっ、分かってるよ!」
フェイミィは嬉しそうに眼前に群がる敵を見据えると、再度突撃を試みた。
黒乃 音子(くろの・ねこ)は腕を組み仁王立ちをしながら巡洋戦艦 アルザスに乗り込んでいた。
目の前には蜂型イコンが大量に接近しているが、音子は特に慌てた様子が無い。
「収容されたイコンは前方の敵を迎撃後、発進させる! 多弾頭ミサイルランチャー用意!」
バッと片手を前に出して見せると、フランソワ・ポール・ブリュイ(ふらんそわ・ぽーるぶりゅい)はため息をついた。
「そんな指示を出すなら、艦長をやってみてはどうですかな?」
「いや」
音子はハッキリとそう言って、フランソワは再びため息をついた。
「まあ、いいでしょう。多弾頭ミサイルランチャー用意!」
「了解!」
ブリュイの指揮に従ってピエール・アンドレ・ド・シュフラン(ぴえーるあんどれ・どしゅふらん)は舵を取り、アルザスの砲門を全て前方の敵に向けた。
「戦艦の主砲射程圏に誘って薙ぎ払え!!」
「……それがしの仕事を取らないでほしいですな」
そう言っている間に蜂型イコンは針を出して一斉に突撃してきた。
それを見て、フランソワは手を挙げ、
「撃てぇ!」
号令と共にミサイルランチャーが発射された。
前方をミサイルの弾幕が埋め尽くし、爆発の閃光で音子は思わず目を瞑ってしまう。
レーダーで戦況を見ているピエールはブリュイに声をかける。
「射程範囲内の蜂型イコン、全滅です!」
「うむ、よくやった」
「はっ! 恐縮です」
ピエールはブリュイの言葉を敬礼のポーズで答える。
「格納庫、周囲の敵は全滅しました。射程範囲の外にいる敵を殲滅してください」
ピエールが通信で格納庫に繋ぐと、ジャンヌ・ド・ヴァロア(じゃんぬ・どばろあ)が出た。
「ああ、こっちでも確認していた。整備班もきっちり仕事してくれたから合図があればいつでも出れる」
「それでは、お願いします。出撃の合図はお任せします」
「はいはい、了解であります」
ジャンヌは通信を切ると、すでにイコンに乗っているコントラクターたちに声をかける。
「さあ、仕事だ! ハッチを開くから暴れてきな!」
そう言って、ハッチを開けるとイコンが二機射出される。
紫月 唯斗(しづき・ゆいと)の魂剛と無限 大吾(むげん・だいご)のアペイリアー・ヘーリオスだ。
先に突出した魂剛は鬼刀とアンチビームソードの二刀流で蜂型イコンに切り結ぶ。
サブパイロットのエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)は唯斗に声をかける。
「唯斗よ観の目はわらわに任せ、おぬしは眼前の敵に集中するがよい」
「ああ、任せてくれ!」
唯斗は魂剛を駆り、鬼刀の一振りで目の前の蜂型イコンを切り捨てていく。
一度切りだすと、他の蜂型イコンも魂剛を敵と認識し一斉に襲いかかってくる。
「敵イコン、三時の方角から二体、九時の方角から四体!」
エクスに指示されて、魂剛は両手を広げるように刀を構えると突撃してきた蜂型イコンの攻撃を一度回避し、旋回するために動きを止めた一瞬を突いて切り捨てを繰り返し蜂型イコンが大量にいる場所まで駆けていく。
「よし、周りは敵だらけじゃのう。ここらでラストアタックを仕掛けるぞ!」
そう言って、エクスはヴィサルガ・プラナヴァハを使用し魂剛の機体性能を向上させる。
魂剛は二刀をしまうとデュランダルに持ち替えて周囲の敵を全力でなぎ払う。
蜂型イコンは高速で薙ぎ払われたデュランダルの攻撃に対応できず身体を真っ二つにして爆散し、風圧で間合いの外にいた蜂型イコンも吹き飛ばされる。
「よし、これだけ出来れば上等だろ」
「うむ……。っ! 唯斗、地面から攻撃が迫ってきておるぞ!」
周囲の敵を一掃したことで動きが鈍っていた魂剛はあえなく被弾してしまうが、地表からの攻撃では損傷は軽微である。
「地上の敵は任せてくれ!」
大吾はアペイリアーを操縦し、地表に向けてミサイルランチャーを構える。
「アリカ、地表の敵が密集しているところを調べてくれ」
大吾はサブパイロットの西表 アリカ(いりおもて・ありか)に指示を出す。
「うん、任せて任せて!」
アリカは元気よく返事をすると超感覚で敵の位置を索敵し始める。
「うん、地面にいっぱい蜘蛛がいるよ。うう……気持ち悪い……。あれなら、どこに撃っても当たりそうだね」
アリカが状況を説明していると、蜘蛛型イコンが一斉にこっちに砲身を向けた。
「っ! 大吾、よけて!」
アリカがそう言って間もなく、空に向けて蜘蛛型イコンが砲撃してきた。
「くっ!?」
大吾はアペイリアーで防御行動を取り、砲撃をしのぐ。
「アリカ、損傷は!」
「全然大丈夫だよ、この距離じゃ大したダメージにならないよ!」
「よし、だったらお返しだ!」
アペイリアーはミサイルランチャーを再度構える。
「くらえ、アヴァランチミサイル!」
アペイリアーはミサイルを雨のように撃ちだし、地表に突き刺さると上空からでも分かるほど爆発の光りが見えた。
「よし、これで下の敵は削れたな。次の密集地帯を探そう」
「うん了解だよ!」
アペイリアーは空を駆け、敵が密集している場所を探して戦艦から離れていった。
アルザスの格納庫では十七夜 リオ(かなき・りお)は自分の機体であるヴァ―ミリオンの整備を完璧に仕上げていた。
「ふぅ、これでよし。それじゃ、無理せず無茶していこうか、フェル!」
リオはすでにコクピットに乗っているフェルクレールト・フリューゲル(ふぇるくれーると・ふりゅーげる)に声をかけ、自身もサブパイロットとしてコクピットに乗り込みハッチから出た。
「敵が密集しているエリアを重点的に叩きます」
「了解、それなら九時の方角が一番敵がいるみたいだよ」
リオはレーダーとホークアイを駆使してリオをアシストする。
「ではそちらに接近してヒット&ウェイを仕掛けます」
「OK!V−LWS、シールドブースター、フルスロットル!」
リオはブースターを全開にすると、ヴァーミリオンは蜂型イコンに急接近する。
フェルはヴァーミリオンの周囲をエナジーバーストで包みV-LWSを展開させて、そのまま蜂型イコンの群れに突っ込んだ。
エナジーバーストのバリアに激突した蜂型イコンは自身の身体をひしゃげさせてぼとぼとと地表に落下していく。
「朱雀の舞、魅せてあげる」
フェルはそう言うと、ヴァーミリオンはブーストを全開のままファイナルイコンソードを装備して、近くにいる敵を高速で切り捨てまくった。
イベント船の近くを飛行している蓬莱のパイロット白石 忍(しろいし・しのぶ)はイベント船から聞こえる歌声で高揚感を感じていた。
「っしゃあ! テンション上がってきたぜ! リョージュ! 音楽を鳴らせ!」
「あいよ。なら、俺たちも生の活力ってやつに貢献するか……俺の歌を聴け!」
サブパイロットのリョージュ・ムテン(りょーじゅ・むてん)は音楽を大音量で鳴らし、歌を歌いながら蓬莱を動かし始める。
「さあ、盛り上がってきたぜ! 敵を撃って撃って撃って撃って撃って撃ちまくってやる」
忍はニイっと白い歯を見せると蓬莱にアサルトライフルを持たせて近くにいる敵を片っ端から撃ち始めた。
一人ながら厚い弾幕を作る蓬莱に蜂型イコンもなかなか接近することができなかった。
が、弾幕をかいくぐるように背後に回った蜂型イコンが腹の針で蓬莱を突き刺した。
「ぐあっ!?」
突然の衝撃に機体の音楽も止まり、リョージュが声を上げると忍もハッと我に返った。
「だ、大丈夫!? リョージュくん!」
「お、元に戻ったな……俺は大丈夫だけど蓬莱は一度整備した方がいいな。穴が空いちまった」
「うん、分かった。敵はなるべく叩くから退却しよう」
そう言って、蓬莱はアサルトライフルで敵を牽制しながら退却していった。
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