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第六章  アーリアの答え

【アーリア護衛班・残留】は以下のとおりだ。
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)ベア・ヘルロット(べあ・へるろっと)マナ・ファクトリ(まな・ふぁくとり)レベッカ・ウォレス(れべっか・うぉれす)アリシア・スウィーニー(ありしあ・すうぃーにー)椿 薫(つばき・かおる)○御凪 真人○セルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)時枝 みこと(ときえだ・みこと)フレア・ミラア(ふれあ・みらあ)加賀見 はるな(かがみ・はるな)アンレフィン・ムーンフィルシア(あんれふぃん・むーんふぃるしあ)ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)ファティ・クラーヴィス(ふぁてぃ・くらーう゛ぃす)黒崎 匡(くろさき・きょう)支倉 遥(はせくら・はるか)ベアトリクス・シュヴァルツバルト(べあとりくす・しゅう゛ぁるつばると)○緋桜 遙遠○紫桜 遥遠(しざくら・ようえん)○氷見碕 環生○イーオン・アルカヌム○アルゲオ・メルム(あるげお・めるむ)甲斐 英虎(かい・ひでとら)甲斐 ユキノ(かい・ゆきの)○ライ・アインロッド○ヨツハ・イーリゥ○ゴザルザ ゲッコー(ござるざ・げっこー)

 二つに分断されてしまったものの、一行はヴォル遺跡の奥へと進んでいった。そしてついに試しの場の前へとたどり着いた。
 そこには巨大な扉が備え付けられており、その扉の両端には扉と同じくらい大きい石像が立っていた。部屋の中央には三つの石造りの台があった。その台にはそれぞれ『太陽』、『月』、『星』が彫られており、台からのびる溝は扉へと続いていた。
 一同が伝承を思い返してみる。

 血が血を暗闇に誘い込む
 その血をもちて光を目指せ
 血は闇にもなり光にもなる
 太陽と月と星を選べ
 だが、使い方に気をつけよ
 己も消えてしまうかもしれないのだから
 強き意志をもちて己自身を試せ

「伝承からいくと三つの台から一つを選んで血をささげるってことになるよな」
「でも問題はどれに……ということでございますね」
 英虎とユキノが呟くようにして言う。
「私は『星』だと思うよ。『太陽』は朝と夜、『月』は満月と新月ってな感じで二つの顔を持ってるよね。だけど『星』はどんなときだって輝き続ける普遍的な光だもん」
 マナが言った。
「太陽とは生命の象徴、月は夜を呼び、闇を呼ぶ。星は夜空に輝き陽の光の元ではその輝きを失う。月も星も夜の闇の中で輝くのみ、それはヴァル遺跡と村でのみしか生きることを許されないクリスティアの人々のよう。その頚木から解き放たれることを望むなら自らの力で輝く太陽の道しかないでしょう」
 支倉遙も意見を淡々とそう述べる。それにベアトリクスが続ける。
「まあ最後に決めるのはアーリアであるがな」
「え?」
 アーリアが目を白黒させる。
「これはアーリアたちの問題。だからあなたが選びなさい。大丈夫、どんなことが起きようとも私たちがなんとかするわ」
 環生がウィンクをしてみせる。他のみんなもそれに同意のようだ、うなずいている。
「みなさん……」
 アーリアが深々とお辞儀をする。そして三つの台の前へと立った。アーリアが胸元で手をぎゅっと握る。
「私は……」
 ナイフを取り出し、刃を手のひらに立てる。アーリアの手のひらから一筋の赤が指先へと流れていく。そして滴となって太陽の石版へと落ちた。
 その瞬間、台が輝きだす。その光は溝をとおり扉へとのびていく。
 重厚な音とともに試しの場へと続く扉が左右へと開いてゆく。
 正解は『太陽』だったのだ。
「やった! みなさん、やりました!」

 一行が試しの場へと入る。すると扉が閉まった。中は広いドームのようになっていた。そしてちょうど正面の壁には扉がある。おそらくあの奥に黒幕がいるのだろう。
 そのとき、床一面に大きな魔法陣が浮かび上がる。そして床から生えるようにしてゴーレムの軍団が現れた。
「やる気満々って感じね。一、二、三…数はちょうどこっちと同じ。わかりやすくていいじゃない」
 美羽が相手を見据えるようにして口の両端をつり上げる。


 少し時はさかのぼり、櫻井恭介(さくらい・きょうすけ)アーサー・オルグレン(あーさー・おるぐれん)の話だ。二人はクリスティアの村で情報収集にあたっていた……はずだったが。
 照りつける太陽の真下、二人はくわで畑を耕していた。
「な〜、恭介。なんで俺たち畑仕事なんてしてんだ? 吸血鬼が真昼間からこんなことしてたらいい笑いものだぜ」
「仕方ないだろ。この畑のばーちゃんが先日腰を痛めたせいで耕せないってんだから」
「それ俺らに関係ねーじゃん。暑いし疲れたよ。もうやめようぜ〜」
「あとちょっとなんだから頑張れよ。すぐ終わるって」
「んだよ〜」
 ざく。恭介が土に鍬をつき立てる。
「ふう」
 額の汗を手の甲で拭った。それが陽光に反射してきらめく。
 恭介が畑の土を手ですくった。綿のようにふわふわとした土だ。程よく水気を含んでいるので握れば固まり、手を開けばまたほぐれる。
恭介は土を鼻先に持っていく。少し甘い匂いがした。
「うん。いい土だ」
情報収集はどこへやら。畑仕事に夢中のようだ。