薔薇の学舎へ

波羅蜜多実業高等学校

校長室

葦原明倫館へ

けうけげん?

リアクション公開中!

けうけげん?

リアクション


(9)最後に

 夕暮れの少し前に、ようやく掃除も終わり、プールはピカピカになっていた。
 新しく水を張られたプールでは、掃除を終えた生徒たちが楽しく水浴びしている。
「キャーッ!!」
 大和がホースでラキシスや恵たちに水を浴びせて遊んでいる。
 彼女たちは水しぶきと同じくらい、まぶしい歓声を上げた。

 鈴花やナナたちは、のんびりプールサイドで黄昏てゆく空を見上げていた。
「……まあ、事件も何とか収まったようですし、良しとしますか」
 歌菜、ブラッドレイ、ウェイドたちは水着にこそ着替えていなかったが、プールで遊ぶ生徒たちを眺めながら、戻ってきた平和を楽しんでいるようだった。

「……元気だなあ」
 クロードは学生たちほど体力はないし、風邪も引いているのでその様子を研究室から眺めているだけだった。
 掃除が終わっても疲れを知らないかのごとく遊んでいる生徒たちが素直にうらやましかったのかもしれない。
 そうしてようやく平和が戻ってきたことを、実感したのだろう。
 いつの間にかクロードは机で寝てしまっていた。

 さて次の日。
 クロードの薬を勝手に飲んだ生徒たちは校長に呼び出されていた。
「あんな危険な薬を勝手に飲んで……怪物にならなかったからよかったものの、いつ何が起こるのかわからぬのじゃぞ!!」
 と、アーデルハイトにこっぴどく説教された。
 メニエスをはじめ、エレミア、セトたちなどは皆、それを黙って聞いてしょんぼりしている。
「と、いうわけで皆解毒剤を飲んでおくように」
 テーブルの上に、クロードを元に戻したものと同じ薬が入ったコップが並べられる。
 セトたちが飲み干すと、次第に長い髪の毛がぬけおちて、みんな元の長さとだいたい同じくらいに戻ってしまった。
「あの、だごーん様の分は……」
 元の髪型に戻ったぽに夫はおそるおそるアーデルハイトに質問する。
「ああ、今涼介たちがパラミタ内海に薬を撒きにいったから、たぶん明日には元に戻っているじゃろ」
 この教室に呼び出される前、涼介たちが箒で何かを運搬していたのをぽに夫たちは目撃していたが、どうやらそれが薬だったらしい。
 ちなみに材料はほとんど植物性と動物性のものなので、海水汚染などは無いはずだ、たぶん……。

 さて、メニエスたちが呼び出された後は、クロードの番である。
「お呼びでしょうか……」
 一晩寝て風邪から回復したクロードに告げられた内容は、簡単にまとめると次のようになる。

『今後、未知の薬を一人で研究することを禁止する』

 今回起きた事件の規模を考えれば、当然の処置だった。
 クロードは何も言わずに、素直にその処分を受け入れたのだった。

 しかし、教室を出た後の彼の表情はやはり暗い……
「もう二度と研究ができないのか……」
 もちろんこれはイルミンスールでの話。彼が教師を辞めて、どこか別の町にでも移り住めば関係ない。
 だが、この大陸中で一番魔法の研究に適した設備が整っているのは、現状このイルミンスール魔法学校にほかならないのだ。

「どうした、つらそうな顔をして……どうやらきつい処分を受けたようだな」
 たまたま実験器具を運搬していたアルツールが通りかかり、声をかけた。
「話しかけないでくれ、今反省してるんだ……」
 同僚の顔を今は見たくなかった。
「いや、それは顔で判るが……そうだ、よかったら今している研究を手伝ってくれぬか?」
 思わぬ申し出に、クロードは顔を上げた。
「研究?」
「例のキノコの生息地が崩壊してしまったから、今この学校で育てる実験をしているのだ。ブレイズ君も手伝っている」
 例のキノコとはもちろん『青い星のキノコ』である。
「貴重な薬の材料になるキノコに興味はないかね?」
「と、とんでもない」
 クロードはあわてて、アルツールの持っていた器具を運ぶのを手伝う。

 こうして、夏休みの終わりも近づいたある日の騒動が終わった。

担当マスターより

▼担当マスター

青猫格子

▼マスターコメント

 シナリオ参加ありがとうございます。
 まずは、リアクションの公開が遅くなってしまい、大変申し訳ございませんでした。今後このようなことの無きように気をつけたいと思います。

 以下は今回の感想です。
 
 今回も様々なアクションをいただけまして、読む段階から楽しかったです。
 その中でも今回特に印象的だったのはクラーク 波音さんです。
「育毛剤を飲んでみる」というサンプルは、インパクト重視の行動がしたい方向けのサンプルを想定していたのですが、波音さんの行動は「怪物に変身したら先生の説得を試みる」というものでしたので結構意外でした。
 変身できるかはランダムだったので、変身しなかったらそれまでだったわけですが……ダイスの神様が空気を読んでくれたようです。
 こういう予想外の出来事があるのもクリエイティブRPGのよいところですよね?

 そのほかにも楽しいアクションはたくさんありましたが、今回はちょっと、いくつか気になることがありました。
 グループアクションを掛けられる方の中に、○○グループとして行動する、とだけあり具体的な行動がほとんど書いてないアクションがありました。
 グループ名があれば、なるべく一緒に行動したり、関連した行動をしているように描写しようとしていますが、具体的な行動がなければ個々のキャラクターの行動の成否は判定しがたいです。
 自分が何をしたいのかは、自分の言葉で書いた方がいいんじゃないかなと思いましたが、どうでしょうか?

 それからサンプルに無い行動についてです。
 今回の場合、「育毛剤を飲む」というサンプルアクションがありましたので、それに対して「薬を守る」、というアクションがいくつかありました。それ自体は不自然なことではありません。
 もし薬を飲む人に対してずっと多い人数の護衛がいたら、無事薬は守れたかもしれません。
 別に数が多ければ何でもうまく行くわけではありませんよ。今回のこのアクションの場合だけです。
 とはいえ今回はそれほどでなかった、というよりも、育毛剤を飲みに来る人(とそれに協力する人)が結構多かったので実現はしませんでしたが……
 こんな感じで、うまく行かない場合もありますが、ゲームに慣れたらサンプルを使わずに、1から行動を考えてみるのも面白いと思います。

 そろそろ、コメントが長くなってしまいましたので、これくらいにしておきます。
 それではまた他のシナリオでよろしくお願いいたします。