薔薇の学舎へ

波羅蜜多実業高等学校

校長室

葦原明倫館へ

トウモロコシ農場を救え

リアクション公開中!

トウモロコシ農場を救え

リアクション


第1章


「トウモロコシ農場が四天王の『砂嵐のシャラン』一味に目をつけられたらしい。このままだとトウモロコシが全部奪われちまう! ついでにヤツラにさらわれたセアリアのじーさんも助けださねぇといけねぇ! みんな、協力しろ!!」

 そういうわけで、王大鋸(わん・だーじゅ)からの電波を受信した学生たちは、波羅蜜多実業高等学校生かどうかは関係なく、トウモロコシ農場を救うべく集まってきたようだ。
 四天王のひとり「砂嵐のシャロン」がいるという風車小屋に……


「ここにシャロン一味がいるのね……」
 キャバ嬢を目指している川村 まりあ(かわむら・ )は風車小屋を目の前につぶやいた。
 大きな風車小屋の前には、数十台の改造バイクが並び、数十人のヤンキーたちがたむろっており、その何百という目が一斉に まりあに注目した……ような気がした。
(なんなの? 私、見えてないはずだしぃ……)
「おい、ごら? なんじゃワレェ?」
「きゃっ?!」
 戸惑う まりあの目の前にヤンキーの一人がやって来て、ああん? と凄んでみせる。
「……み、見えてるのぉ〜!!!」
 そんなわけで、まりあはヤンキーたちにとっ捕まって風車小屋裏へと連れて行かれてしまったのだった。

「ちっ……目論見がはずれましたな」
「こ、こんなに怖い目にあってるのに、どーしてそんなことを言うんですかぁ〜」
 テッカマリオン――――魔楔 テッカ(まくさび・てっか)は相方の腹の中で舌打ちし、それを聞いたマリオン・キッス(まりおん・きっす)が、農場やセアリアやおじいちゃんがかわいそうなのは放っておけないが、現在は自分のほうが何倍もかわいそうだと泣き言を言う。
「作戦は悪くなかった、と思うのですが……」
「そーですねぇ……おねーさまの目論見どおり、こうして捕まってるわけですしねぇ」
 そう、テッカマリオンはおじいちゃん救出に風車小屋に来たものの捕らえられ、風車小屋の裏側に鎖で括りつけられていたのだ。
 とりあえず、ここ(ワザと捕まる)までは テッカの計画通りである。
「問題は、おじいちゃんがどこにいるかわからないことですねぇ〜」
 つか、おじいちゃんが捕まっているだろう風車小屋の中にすら入れていない……
「さすがに、マリオンの図体(身長300)じゃ無理だったようですな……」
「ワ、ワタシのせいですか〜〜〜?!!」
 マリオンの泣き言は聞かず、テッカはこの戒めを引きちぎって逃げるしかないかと思案し始めたところに、ヤンキー数名に連れられた まりあが合流した。

「どーして捕まっちゃったのかわかんない……私の光学迷彩完璧だったはずなのにぃ〜」
「……。それは、あんたが“光学迷彩のスキルをもってない”からではないですかな?」
 テッカは、すぐ横の縄で縛縛り上げられた まりあの愚痴についツッコミをいれる。
「……」
「光学迷彩ってああいう状態をいうのではないのですか?」
 テッカの言う先、風車小屋の敷地とトウモロコシ畑の境目にまいてある石灰にぽすっと足跡がついた。
「な、なに?」
 まりあは、目を凝らすが足跡以外になにも見えない……っと、ゆらりと空間が揺れたように見えた。
「何をしている!」
「勝手な行動をするな!!」
 怒声が飛び、何人かのゆる族たちがトコトコやってきて、それを捕まえた……らしい。
 むにゅっ
「や……やぁん……」
 どこをつかまれたのか、女の悲鳴があがった――おじいさんを助けるために光学迷彩を身にまといやって来たアリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)だ。
「なになに?」
「こいつヘン」
「どれどれ?」
 わらわらと ゆる族たちが集まってきた。
 彼らは、隊列を離れた仲間を連れ戻すつもりで、侵入者を発見したようだ。
 さわさわ……さわさわ……さわさわ……
「きゃっ!? ど、どこを触って……あぁ、やっ、やめ……」
 不審者に対するボディチェックというか、なんというか……
 ただアリアの悩ましげな声が絶え間なく聞こえる。。。
 仲間にアリアが加わった。

 しばらくすると、ヴェルチェ・クライウォルフ(う゛ぇるちぇ・くらいうぉるふ)クリスティ・エンマリッジ(くりすてぃ・えんまりっじ)がやって来た。
 が、様子が少しヘン。
 ヴェルチェはリーダーっぽい特攻服を着たヤンキーと仲が良さそうに腕を組み、クリスティはその後をとぼとぼと歩いてくる。
 そして――
「あ〜ら♪ お仲間がいてよかったじゃな〜い」
「きゃぁ?!」
 言うなり、ヴェルチェはパートナーをアリアたちの方に蹴り飛ばした。
「さっ行きましょうか、シャラン様に会わせてくれる約束よ」
 泣きそうな表情で見上げるクリスティを、ヴェルチェは邪悪な微笑を浮かべて見下ろし、来たときと同じようにヤンキーの腕を組むと去っていってしまった。
「いったいなに?」
「いちおう……作戦なのですけど……」
 敵に寝返ったふりをして内部に潜り込み、あわよくば大将首級を取ろうという作戦なのだそうだ。
 敵の懐に飛び込む方法っていろいろあるんですね……
「おじいちゃん、風車小屋のどこにいるのかなぁ……」
 まりあは、青く澄んだ空を見上げた。
 その隣には、いろいろと疲れたアリアがぐったりとしている。
 マリオンの中でテッカは、いい加減適当なところで脱出する機会を逸しないように注意しようと思う。
「あーバナナ、食べないと……」
 風車小屋の正面方面からバイクの爆音が聞こえてくる。
 何台かの偵察部隊が出発したようだ。