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第六章 教導団一武闘会・一回戦後半戦

 
「さあー、白熱しました、第三回戦! 第四回戦は〜フェイト・シュタール(ふぇいと・しゅたーる)対〜佐野 亮司(さの・りょうじ)

 小次郎に呼ばれ、フェイトと亮司が出てくる。
 ソルジャー同士の戦いだ。
 ツインテールの黄色の髪を振り、フェイトは高らかに叫んだ。
「私の力を先生にお見せします!!!!」
 銃を手にしたフェイトが、亮司に向かうと。
「……あ、あれ?」
 亮司の姿がなかった。
 試合開始の時点から出来る限りを取り、すぐに光学迷彩を利用として、亮司は姿を消したのだ。
「どこに行ったのでございましょう?」
 敵の動きを見切り、相手の足をシャープシューターで狙う予定だったフェイトは姿の見えない亮司に困った。
 だが、実は亮司のほうも困っていた。
 亮司も相手の攻撃後に隙をつくという作戦だったからだ。
「……」
「……」
 沈黙が流れる。
「私だって銃は扱えるんですから!!!!」
 フェイトがハンドガンを闇雲に撃つ。
 亮司は光学迷彩を被りながら、パートナーの向山 綾乃(むこうやま・あやの)から受け取っていた光条兵器の盾でそれを防いだ。
「そこでございますか!」
 当たり前だが、光学迷彩で盾ごと隠れていようと、何もない空間が弾を防げば、それで気づかれる。
 亮司は急いで逃げ、また、位置が分からないように光学迷彩で息を潜めた。
 隙があればショットガンを撃とうとしたが、フェイトも相手の動き待ちなので、隙はできない。
 ……。
 …………。
 しばらくして、会場から欠伸が聞こえた。
 そして、団長が静かに口を開いた。
「そこまで、引き分け」
「は、はい」
 小次郎は引き分けを告げ、マイクを団長に向けた。
「せっかくなので解説を……」
「シュタールはソルジャーであることにこだわらず、光条兵器を使って突っ込むことも考えていれば、すぐに相手を破ることができた。佐野は誰か一人だけを想定した戦い方をし、対ソルジャーをまったく考えていなかった」
 寸評をした後、団長は両方ともの敗退を告げた。


「第五回戦は〜〜前田 風次郎(まえだ・ふうじろう)ルース・メルヴィン(るーす・めるう゛ぃん)!」

「……風次郎ととは、これは意外、ですねえ」
 ルースはちょっと苦笑いを浮かべながら、舞台に上がった。
「俺からすると、ルースが武闘会にいる方が意外だ」
「いやあ、武闘会で優勝すれば女性にもてるだろうと思いましてねえ。女性を狙うなら合コンより武闘会でしょう」
「……恋人がいなかったか、ルース」
 風次郎の問いかけに、ルースはハハハハと笑ってごまかす。
「ま、うちの小隊の仲間と戦いたいと思っていたので、ある意味、オレの希望は叶えられた感じですよ」
「ふむ……まあ、良かろう。どちらかというと格闘戦が良かったのだが」
「オレはそうですねえ……美形は敵です! さっさとくたばれ、をしたかったので、風次郎は精悍ですが、美形ってタイプに叫ぶなら狭間とかソルの方が良かったかもです」
 そんなことを言いながら、ルースは距離感を測る。
 風次郎は前衛型だ。
 ソルジャーのルースは前衛職との戦い方を考えていた。
 ワイヤーを張り巡らすなどの罠を張り、接近戦は行わずヒットアンドウェーに徹するというものだ。
「では、いかせてもらうぞ」
 風次郎が動きだし、入れ墨の入った右手が動く。
「ハッ!!」
 気合い一閃。
 ドラゴンアーツによる攻撃の連打がルースに入る。
「うわっ」
 前衛型の遠距離攻撃を想定していなかったルースは、あっさりと攻撃を受け倒れた。
「……さすがです、風次郎」
「いや……」
 まだ牽制攻撃だったんだが、と言いかけて、風次郎はやめておくことにした。
 そして、自らの勝利が小次郎によって告げられると、ルースの手を引き、共に舞台から降りていった。


「第六回戦は〜〜狭間 癒月(はざま・ゆづき)藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)! 今回、唯一の他校から参加のお嬢さんだ!」

「まあ、お嬢さんだなんて……」
 優梨子が武闘会の舞台の上で浮かべてるものとは思えない、美しい笑みを見せる。
 その笑みを見せて、癒月はうれしそうな顔を浮かべた。
「合コンに参加できなかったから、せっかくの出会いの機会が……と思っていたけれど、まさか、戦いの舞台で、こんな美人さんに会えるとは思いませんでしたよ」
 癒月は合コンに参加してマリー・チャンを口説きたいと思っていた。
 彼女の甲斐甲斐しさに心惹かれたのだ。
 しかし、合コンと武闘会は一緒に参加できないと聞いて、残念に思っていたところだった。
「……なによ、知らない女性なんて口説きたいのかしら、ユズったら。バカみたい」
 そう毒づきながらも、どうせ合コンになんて興味なくて食べてるだけだっただろうから、武闘会にしてくれて良かった、とアラミルは思った。
「お嬢、俺も合コンに出たかったのですが……」
 宙波 蕪之進(ちゅぱ・かぶらのしん)がその緑の体躯をすくめて、優梨子に主張する。
「合コンに参加して、何をする気でした?」
「そりゃ、適当な小娘をひっかけてアレやコレをする絶好の機会ですよ! だっていうのに……」
「落ち込まないで。ほら、お弁当食べたでしょ?」
「おいしかったですよ。でも、ヤギの肝臓とか牡蠣とかしじみとか、妙にメニューに偏りが……」
「鉄分を補って、造血作用を良くしておかないと……でしょう?」
 うふふふ、と優梨子が楽しそうに笑う。
「思った通りかよ! うれしくねぇ!」
 蕪之進は叫んだが、また優梨子は楽しそうに笑うだけだった。
 優梨子は地球人である。
 だが、一人目のパートナーが吸血鬼で、吸血鬼の範疇に入ったことで、嗜血趣味が進行した。
 殺戮と殺し合いが大好きな優梨子は、流れる赤い血がとても好きだ。
 その色も匂いも味も。
「……だとしても、意外と好き嫌いがないのね。ワタシなら……あの変な宇宙人みたいなのから、血を吸いたくはないけど……」
 吸血鬼のアラミルは優梨子の趣味に何か言いたげだ。
 2人とも綺麗なお嬢様という外見だが、色々と違うらしい。
「さて、それでは始めましょうか。教導団の方とお手合わせしてみたいと思っていましたので、とてもうれしいです」
 まるでダンスの相手でもするかのように、優梨子が柔らかく微笑む。
「こちらも合コン以上の運命に出会いに感謝し、いかせてもらおう」
 先に動いたのは優梨子だった。
 走りこみ、癒月との距離を詰めようとする。
 癒月は近距離で向かってきた相手に、ランスのリーチの長さを生かして、体力を奪う作戦を考えていた。
 距離を詰めようとする優梨子に、予定通り、ランスを繰り出す。
 しかし、優梨子は相手のそういう攻撃を予測しており、姿勢を低くして癒月にタックルをしようとする。
 癒月も負けてはいない。
 接近された所を癒月は足にタックルされる前に、その足で優梨子をキック攻撃した。
「……あら」
 優梨子は優雅さを崩さなかったが、それでも痛みは受けたらしく、ちょっと痛そうな顔をする。
「残念。スパイクバイクを持ち込めましたら、バイクで体当たり、をしましたのに」
「いや、普通に考えてダメだろ……それ」
 癒月は呆れながら、優梨子を見る。
 まるで百合園のお嬢様のような優梨子だが、やはり心はパラ実なのだな、と変な感心をする。
 優梨子は銃を取り出した。
 そしてシャープシューターを使い、癒月の急所を観察する。
「ソルジャーだったのか……」
 優梨子の外見では一瞬、何の職業なのか分からない。
 攻撃の方法が決まった癒月は、静かにランスを構え直した。
「……参らせてもらうッ! 今日の私は英霊すら圧倒する!!」
 癒月は優梨子の懐へ飛び込もうと、突っ込む。
 優梨子はためらわずに撃った。
 一瞬、その音が会場に響く。
 しかし、それは空砲で、優梨子のフェイクだった。
 優梨子は袖に隠した匕首を滑らせて、癒月の急所を……。
「そこまでっ!!」
 舞台に乗り込んだ小次郎が、優梨子の手を掴み、トドメを思いとどまらせる。
「あら……」
 予想外のところから手が出て、優梨子の動きが止まった。
「まあ……そうでした。殺せないのは生殺しですが……これはこれで楽しかったです」
 優梨子はダンスの相手に手を差し伸べるように、癒月の手を取り、小次郎に勝利を宣言されて、笑顔で観客席に会釈をして、下りて行った。