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暗き森の泣き声(第2回/全2回)

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暗き森の泣き声(第2回/全2回)

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第11章 休息のティータイム

-PM12:40-

「やっと全部片付け終わったぞ」
 亡者たちを退治し終えた遙遠たちが、守護者と遥遠が休んでいる湖にやってきた。
「もう起きられるかしら?」
「―・・・もう大丈夫じゃ」
 気丈に振る舞い、魔力の回復しきっていない身体を起こした。
「侘びいれても許されるとは思ってねぇ。だけどこのままじゃ俺の気がすまんからな・・・」
「―・・・もうよい・・・気にしておらぬ。律儀な人間もいるんじゃな」
 深く詫びるラルクに対して、守護者は考えるように少し間を空けてから彼を許した
「そうか・・・よかった」
「この前は不躾な態度で悪かったよ」
 守護者を怒らせてしまったことに対して、速人はすまなそうに謝る。
「あっ!いたいた・・・やっと見つけましたよ」
 沢渡 真言(さわたり・まこと)が片手を振りながらやってきた。
「かなりの時間歩き回ったよな」
 ふぅっと疲れたようにため息をついて、マーリン・アンブロジウス(まーりん・あんぶろじうす)は座り込んだ。
「あ・・・いたいた。アウラさーん、久しぶりッス!」
 守護者に渡す手見上げを持って、七枷 陣(ななかせ・じん)たちは彼女たちの方へ駆け寄る。
「前の時はありがとう!アウラさんのおかげで、2人とも病気が治ってきたんだよ」
 アルラネルクの傍へ座り、リーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)がニコッと笑いかけた。
「初めまして、アウラ様。先日はご主人様達がお世話になりました」
 小尾田 真奈(おびた・まな)は丁寧に挨拶する。
「まず、コレ預かってください」
 陣たちは手にしている武器を守護者に渡す。
「そだ、少しでも役に立つかと思って・・・はいコレ。少ないですけど。一応ウィザードの端くれッスから、少しは魔力補給になるかも。や、ホント少なくて申し訳無いんスけどね」
「血が栄養になるとか何とか人伝で聞いたんだ。だからボクと陣くんのあげるねー。・・・流石に、全部は無理だけどさ」
「―・・・そこまでしてもらう義理はない・・・」
「ん〜・・・オレ達がそうしたかったから。じゃ、理由にならないんかな?まぁ・・・そう言うことでひとつ」
 匂いを嗅ぎつけた体長4cmのマンドラゴラが、陣たちの方へ寄って来た。
 じーっと血の入ったパックを見つめる。
「ほしいのかな?」
 リーズが声をかけると、魔法草は頭の草をサワサワと揺らして頷く。
 しかし手をつけるなという目つきでアウラネルクに睨まれ、しょぼんと草を項垂れさせる。
「せっかくあげたんだから・・・ね?ほら、飲んでいいよ」
 パックを開けてやると、その中に根の部分にある口をつっこませて、美味しそうにゴクゴクと飲む。
「クッキーやハーブティは、お嫌いでしょうか?宜しければ、是非お召し上がり下さい。皆様も、良ければお一つどうですか?」
「僕も用意してきたんだよ」
 北都が蜂蜜をたっぷり入れた紅茶をさしだす。
「―・・・人間は普段からこういうものを飲むのか?」
 珍しそうにカップに入った紅茶を眺める。
「飲んでみてよ」
「ふむ・・・」
 アウラネルクは紅茶を、一口飲んでみた。
「どう・・・かな?」
「なるほど美味じゃな」
「よかった口に合って」
「はむはむ・・・ごくごく。アウラさんも食べようよ〜、真奈さんのお菓子美味しいよ?」
「―・・・では1ついただく・・・。不思議な味じゃ・・・」
 食べたことがない彼女は目を丸くする。
「もしかして、あまり食べたことないんスっか?」
「わらわたち妖精や精霊は、ほとんど食事を必要としない体質じゃからな」
「普段はどういうの食べているんですぅ?」
 メイベルが首を傾げて問う。
「果物や木の実じゃな・・・」
「魔法草のことですが、ワルプルギス校長がとても感謝していましたよ」
「そうか・・・」
「―・・・それで私にも何かできることがあれば・・・。森を元気にするためにタネを蒔こうと考えているんですけど・・・」
「あれ?見つかったんだ、良かったねー」
 焼け落ちた木々を集めてタネを蒔いていた筐子たちが声をかけてきた。
「そうじゃな・・・あの者たちの手伝いをしてもらえるといいんじゃが・・・」
 血を飲んでいた魔法草が水色の花を咲かせ、花びらが散るとタネがこぼれ落ちた。
「これを蒔けばいいんですね」
「そうじゃ」
「一緒にやろうよ」
 筐子が手招きをして真言を呼ぶ。
「それじゃあ行ってきますね」
 大事そうに両手でタネを持って、彼女たちの方へ駆けていく。
「マンドラゴラはどうやって森に魔力を送るんですぅ?」
「その根から土へ魔力を送り、森の活力になっていくのじゃ。力を受けた木々や草花から出る気を受けて森の精霊や、わらわの生命と力の源となっていくのじゃ」
「だから土に埋まったまま移動するんですねぇ」
 土に埋まったまま元気に動き回るちっちゃな魔法草を見て、納得したように言う。



「どうやら無事だったようだな」
 アウラネルクを探しに来たリリたちが、守護者である彼女に声をかける。
「あっ!よろしければこれどうぞ」
 お土産用に作ってきたリンゴゼリーを皿に乗せ、ユリがアウラネルクに手渡す。
「―・・・普通にリンゴを食べるのとは、また違った感じじゃな」
 スプーンでつっついてみて、一口食べてみた。
「そういえば・・・この森に入った時、空気が淀んでいたようですけど・・・」
 ずっと疑問に感じていたことを和輝は守護者に問う。
「森が焼けて荒れてしまった影響じゃな・・・。魔力が衰えてしまい、ナラカの亡者どもが侵入しやすくなってしまったのじゃ」
「死者たちの侵入は以前からあったんですか?」
「気の乱れによって水場などの湿地帯がナラカへつながる道ができてしまうのじゃ。ここで亡くなる人間たちの怨念もあるんじゃが・・・」
「なるほど・・・そうだったんですか」
「姿が見えなかったのは・・・亡者たちに襲われていたからだったんだな」
「おぬしらだけ許したことが気に入らなかったようじゃ」
「できれば・・・俺はアウラネルクと仲良くなりたいんだが・・・」
 翔の言葉に守護者はしばらく考え込む。
「―・・・やっぱり無理か?」
「他者とあまり深く関わったことがないから・・・まだ良く分からないが・・・。おぬしらは信用できる人物だと思うておる」
「(少しは仲良くなれたのか・・・?)」
「どうやら助かったみたいですね」
 おだやかに会話する生徒たちの姿と、守護者の無事を確認し陽太は学園へ戻っていった。



「(よし・・・今度こそ!)」
 アウラネルクを口説こうと狙っていた隆光が、彼女の方へ近寄る。
「仲良くなれたんだね、ボク嬉しい♪」
 ヴァーナーはピョンッと飛び跳ねて、守護者に抱きつき頬にキスをした。
「(なんて羨ましいことを・・・!)」
 無邪気な行動に速人と隆光は、羨ましそうな顔をする。
「ああ、そうだ。ちょくちょく森の生態調査をしたいから許可が欲しいんだが・・・」
「あなたの手伝いになると思うし、私自身の修行にもなるから・・・これからもちょくちょくクリーチャー退治に来ようと思うんだけど・・・良いかな?」
「―・・・それはよいが・・・危険な場所にはあまり立ち入らないでもらいたい」
「了解した。それくらいは自分たちで気をつける」
 許可をもらえた綾香たちはコクリと頷いた。
「この森は海を離れて独りぼっちになっても守る価値があるのか?」
「―・・・亡者どもを人が住む場所に出すわけにはいかぬ・・・誰かがやらねばらないことなのじゃ。それに・・・やつらの領域が増えてしまうと、わらわが住んでいた場所にも影響がでるから、このまま放っておくわけにもいかなかったのじゃ」
「やつらは水場付近から出てくるのか?」
 顔を俯かせるアウラネルクに、速人は首を傾げる。
「主にそういった場所に霊道ができやすいのじゃ・・・」
「―・・・やっぱり霊が集まってくるとそうなるのかな?」
「そうじゃな・・・」
「たしかに・・・森の外から死者たちが出てきちゃうと大変なことになるもんね・・・」
「それだけではない。そやつらが外へ出してしまうと、人々を羨む怨念が呪いのように大病の病原体となって、体力が弱っているターゲットにふりかかるのじゃ」
「念が病気を生むなんて・・・」
「―・・・だから魔法草でないと治らなかったんですねぇ」
「だからって・・・1人でそんな・・・」
「わらわは苦に思うたことはない。皆が無事ならそれで良いのじゃ」
「(アウラネルクおねえちゃんは、やっぱり優しい妖精さんだったんですね)」
 1人で抱え込もうとする彼女に、ヴァーナーは悲しそうな顔をする。