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伝説のメイド服を探せ!

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伝説のメイド服を探せ!

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ラストバトルは突然に
 ことのはとゆずきが、倒れ伏したキマイラのもとに近付いていった。
「キマイラさん、わたくしの声、聞こえていらっしゃいますか?」
 ゆっくり、ていねいに、キマイラに話しかけた。
「わたくしたちは、あなたの住まいを奪おうというわけではありません」
「でも、騒がせてしまって、本当に悪かったですタイ」
 ぺこりと頭を下げる。
「お話しを聞いていただくために、仕方なくこうして戦いましたけど、お許し下さいね」
「すぐに怪我は治療するタイ。だから……もう襲わないでもらえるかな?」
 キマイラの瞳から、徐々に怒りの色が消えていった。
「わたくしたちはメイドです。あなたがたが守ってきた侍女さんと、同じ志を持っているのです」
「その志をもっと受け継ぐために、メイド服を託してくれるかな?」
 キマイラは、すっと立ち上がった。
 ことのはとゆずきが危ない……? 周囲に緊張が走る。
 だがキマイラは、二人に道をあけた。
「キマイラさん……!」
 壁際までふらふらと歩いていき、邪魔にならない場所に座り込んだ。
「どなたか、キマイラさんの手当を、お願いします!」

 遂に、侍女の部屋への道は開かれた。
「それでは、伝説のメイド服のもとへまいりましょう!」
「お待ち下さいませ!」
 再び、侍女の部屋の扉に立ちふさがる者が!
 それは、ジャタの森からずっと味方として一緒だった荒巻 さけ(あらまき・さけ)だった。
「さけ様、どうして……?」
「愛ゆえに人は苦しまねばならず、愛ゆえに人は悲しまねばならないのですわ……ともちゃん」
 ともは、一歩前に進み出て、さけと向かい合った。
「さけ様、最後まで一緒に行きましょうよ! ずっと協力してきたじゃないですか!」
「ごめんなさい。実はわたくし……一子相伝の南のフェニックス拳法の伝承者なのです!」
 もちろん自称である。
「わたくしは、ともちゃんと戦わなければならない運命だったのですわ……」
「そんな……! さけ様が南の伝承者だなんて……」
 自称・北の拳伝承者のともは、がっくりと肩を落とした。
「勝負ですわ。わたくしが勝ったら、その犬耳、思う存分さわらせていただきますの!」
「わかりました、さけ様。戦うのが運命だったのですね」
 しばらくの対峙。そして……。
 ひゅっひゅっ! ふいに、さけが小石をともに向けて投げつけた!
「キャッ!」
 ひとつめの石が飛んできた時、ともはとっさに懐をかばった。
 その様子を見ていたさけは、はっとあることに気が付いた。
 そしてふたつめの石が飛んでくる!
 カツン!
 ともの前に出てかばったのはナナ・ノルデン(なな・のるでん)だった。
「いけません、この戦いは、続けてはいけません!」
 ナナは、鋭くさけを睨んだ。
「私がなぜ、本来止めてはならない伝承者(自称)同志の戦いを止めたか、さけさんならもう分かるでしょう!」
「……」
「もしまだ続けるのでしたら、私もこのまま戦います。なんと言われてもかまいません!」
「ナナ様……」
「私が持つ最高の技を駆使して、さけさんを倒します!」
 ……さけはしばし考え……ふっと笑った。
「……やめましょう。ともちゃん、勝負はまだ今度にいたしましょう!」
「ど、どうして急に……?」
「さっき気が付いた……というか思い出しましたわ。あなたは今、もろい小型結界装置に守られているのでしょう。いくらなんでもハンデが大きすぎますわ」
「あ……」
 ともが無意識でかばったところ。そこは、結界装置がしまってあるところだった。
「今度、お互いが思う存分動ける時に、決着をつけましょう」
「……ありがとうございます、さけ様」
「ナナちゃん、どうもありがとうございました。危うく、伝承者としての誇りを失うような戦いをしてしまうところでしたわ」
「さけさん……分かってくれて嬉しいです!」
 ナナは、全身の力を抜いた。何があってもともを守るつもりでずっと緊張していたためか、手にはじっとりと汗をかいていた。
「……皆様、引き留めてごめんなさい。さあ、最後の部屋に参りましょう!」

伝説のメイド服
 侍女の部屋は、こじんまりとしたものだった。
 思ったほどの広さはない。
 その部屋の中央に、不自然なほどきれいな箱が置かれていた。
「きっとこれが、伝説のメイド服なのでしょう……」
 4人のメイドは、箱の蓋に手をかけ、全員で開けた。
「え?」
「うわぁ!
「すごい!」
「きれい……」
 伝説のメイド服は、5000年前からそこにあったとは思えないほど良い状態だった。
 新品のようだと言っても過言ではないかもしれない。
 それは、現在の百合園で着用されている制服に、もっとフリルを足したような、かわいらしいデザインだった。
「確かに百合園の制服にそっくり……」
「モデルになったって、本当だったんだ……」
 百合園の生徒たちが興奮して話している。
「シャンバラの技術ってすごいでしょ? こういう保管もできるんだよ! 全然痛んでないよね」
 どこからかまたピクシーが現れて教えてくれた。
「この衣装ケースがすごいの。シャンバラ古王国時代の超テクノロジーの結晶だよ」
 ゆずきが代表して、そのメイド服を手に取った。
 そして、全員に見えるようにかかげた。
「ご主人様、お嬢様! ありがとうございました! ここに、伝説のメイド服を手に入れました!」
 わあぁぁぁ!
 同行した全員から、拍手や歓声が沸き起こった!
「さあ、早く帰らないと、まゆみの誕生日を過ぎちゃうね」
「空京に帰りましょうか」
 一行は、来た道を戻り、ぴなふぉあ空京店に帰ることにした。
 途中、キマイラに挨拶をし、ピクシーと別れ、ハーピーとドリアードに木の実の手みやげを渡された。
 伝説のメイド服は一着だけだが、全員の心に最高の思い出が刻まれた。