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第6章 バルゴフとの決着
 
 遺跡内でも一際広いフロアでは、バルゴフたち馬賊と機晶姫の戦闘が繰り広げられてた。
 戦いの余波によって、機晶姫の入っていたカプセルや施設のほとんどは半壊している。
 積もった瓦礫と剣戟と跳弾の響き、すえた火薬の匂いから、その戦闘の激しさが伺えた。
 大量の機晶姫が眠っていたらしく、フロアにいる機晶姫の数は多い。
 そのせいで出口に向かう途中のバフゴフは足止めを食っていた。
 バルゴフにくっついて遺跡に入った馬賊たちも、その数を大きく減らしている。
 しかし、バルゴフ自身はかなりの強さを誇っていた。
 部下の数が減ったことなど気にもとめず、バフゴフは機晶姫たちにショットガンを撃ち込んでいる。
 バルゴフを見つけたラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)が、間にいる機晶姫に射撃を繰り返しながら叫んだ。
「おらぁバルゴフ! 俺と勝負しやがれ!」
「チッ、ライナスんとこのガキどもか! テメエら相手しろ!」
「バ、バルゴフ様!」
 部下を囮に逃げ出そうとしたバルゴフを追いかけ、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が突っこむ。
 小さい体を目一杯使い、掲げた光条兵器の大剣を振り下ろす。
「逃がしません!」
「チッ!」
 美羽の剣を受けとめ、バルゴフがショットガンで反撃。至近距離からの散弾が美羽を襲う。
「きゃあっ!」
「っと」
 衝撃で吹っ飛び、倒れそうになった美羽をラルクの巨体が支えた。続けて襲ってきた馬賊を、ラルクがドラゴアーツで殴り飛ばす。
「あ、ありがと!」
「気にすんなって。傷はどうだ?」
「大丈夫! なんてことないよ!」
 ヒールで回復しながら、美羽がまだまだ元気だと手を上げてみせる。 
「絶対にあきらめないから!」
 態勢を整えている間に、バルゴフとの距離が開いていた。
 空いた隙間に、暴走した機晶姫たちが殺到した。ふたりは周囲を取り囲まれ、その対処に追われる。
 だが、馬賊へも攻撃を加える機晶姫に、バルゴフもまた満足に動けないでいた。
「どきやがれ人形ども!」
 それを見て、後方でタイミングを計っていた緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)が、ラルクと美羽を追い越した。
「仕掛けます」
 バーストダッシュによる急接近の後、遙遠は前方の馬賊と機晶姫にサンダーブラストを放つ。
 その一撃で、バルゴフの手下のほとんどが戦闘不能に陥った。
「役立たずどもめ!」
 吐き捨て、バルゴフは脱兎の如くフロアの出口に向かう。部下がいなくなり、身軽になったと言わんばかりの動きだったが、
「お前がボスかい?」
 そのバルゴフの進路にカーマル・クロスフィールド(かーまる・くろすふぃーるど)が回りこんでいた。
 集団に紛れ込むようにして、敵の中をすり抜けてきたのだ。
「機晶姫軍団なんか作らせるわけにはいかないからね。ま、こんな状況じゃ今更だけど」
「黙れ!」
 カーマルの言葉に、バルゴフが激昂する。
 バルゴフのショットガンと同時、カーマルが轟雷閃を放った。
 お互いに直撃は避けるも、軽くないダメージを負う。
「ぐッ……やってくれる!」
「くそっ、こんなはずじゃなかったんだ! こんなはずじゃ!」
 再び火を吹いたショットガンを回避し、カーマルが鉄甲でバルゴフを殴りつけた。
 そしてすぐさま距離を取る。素早い動きのヒットアンドアウェイ。
 痛みのせいか、冷静さを欠いたバルゴフが、カーマルの動きに翻弄される。
 直後、機晶姫の群れを突破した遙遠がその戦いに飛びこんだ。
「これ以上、勝手な真似はさせませんよ!」
 跳躍し、体重を乗せたヘキサハンマーを全力でバルゴフに叩き込む。
「がっ!」
 遙遠の渾身の一撃ではあったが、それでもバルゴフは倒れない。
「くっ、今ので仕留めたかったのですが……」
「ボスだけあってタフだね」
「がああっ!」
 雄叫びをあげ、バルゴフはショットガンを乱射する。
 カーマルと遙遠は一旦距離を取るが、代わりに美羽とラルクが追撃をかけた。
「私より目立つなんて許さないんだからね! 轟雷閃!」
「燃えやがれ! ボルカニックバレット!!」
「くそがっ! こんなところで終われるか!」
 追い詰められていることを悟り、バルゴフはなりふり構わず、背を向けて逃走を始める。
 その行く手に、機晶姫たちが立ちはだかった。
「邪魔だ! どけっ!」
 バルゴフが強引に突破を図る。目の前の機晶姫を殴り倒し、さらにショットガンで別の機晶姫を吹き飛ばす。
 だが、たかが雑魚の機晶姫と侮ったのか、バルゴフはもう1体による死角からの攻撃に気付けなかった。
 錆付いた機晶姫の剣が、バルゴフの体を貫く。
「がっ!」
 致命傷を受け、バルゴフは口から血を吐いた。そのまま回復も反撃もできずに、遺跡の床に膝を突く。
 怒りに身を焦がした彼の瞳に、意志のない機晶姫たちが映っていた。
「こんな……、こんな……人形、どもに……」
 機晶姫を利用しようとした報いだろうか。
 それが、馬賊の頭目バルゴフの最期の言葉となった。