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リアクション
★ ★ ★
「多少は腕を上げたようだが……」
最初から、全力攻撃のラルク・クローディスに、シニストラ・ラウルスも手こずっていた。
「この拳見切れるか!?」(V)
出し惜しみは無しの、即天去私を繰り出す。さすがに、シニストラ・ラウルスが防戦一方になった。
「止めだ! これで……仕舞いにしようぜ!!」(V)
ナックル型の光条兵器を呼び出し、ラルク・クローディスが大きく拳を振りかぶった。
「構えが大きいと、隙ができるわよ」
そんな声とともに、ふいにデクステラ・サリクスがラルク・クローディスの眼前に現れた。
ぎょっとするラルク・クローディスに、軽く一撃を入れると、笑い声をあげながら後方にとんぼ返りしして間合いを開く。
「ごめんねえ、遅くなっちゃった」
「お前、酔ってるだろ!」
何をやってるんだとばかりに、シニストラ・ラウルスが叫ぶ。
「酔拳か?」
「いやだあ、そんなの知るわけないじゃない」
ケタケタとデクステラ・サリクスが腹をかかえて笑う。一瞬それに気をとられたラルク・クローディスの視界から、シニストラ・ラウルスが消えた。次の瞬間、ブラインドナイブスの強烈な一撃を受けてラルク・クローディスが吹っ飛ぶ。
「負けてられねぇのに……。くそう、二人がかりで……」(V)
ラルク・クローディスが呻いた。
「ありがとう、最高の褒め言葉だ」
微笑みながらだきついてくるデクステラ・サリクスの腰に手を回しながら、シニストラ・ラウルスが答えた。
「はい、ちょっとごめんなさい」
そんな言葉とともに駆け込んできたクロセル・ラインツァートが、馬上にラルク・クローディスを拾いあげてその場から逃げだしていった。
「後続がやってきたか。態勢を立てなおす。敵を廃墟に誘い込め!」
シニストラ・ラウルスが、配下の者たちにむかって叫んだ。
★ ★ ★
「うーん、やりおるのう。ゴチメイたちは派手にやっているようだな。悪いが、利用させてもらう。ジーナ、こっちだ」(V)ダメージボイス2
「はい」
ガイアス・ミスファーン(がいあす・みすふぁーん)に呼ばれて、ジーナ・ユキノシタ(じーな・ゆきのした)がビスマルクと名づけたゴーレムを前進させた。
「うわっ」
廃墟の壁ごと、守りに就いていた海賊たちが吹っ飛ばされた。あとには、地下への階段がむきだしになっている。
「よし、ここからアジトに入って、女王像の欠片を探すのだ」
「ビスマルクはついてこれそうにないですね」
悲しげにジーナ・ユキノシタが言った。ゴーレムの巨体では、床に開いた点検口のような穴から梯子を下りていくことはできない。体格のいいガイアス・ミスファーンでさえ、ぎりぎりといったところだ。
「ここで、脱出口を守ってもらえばいい。ヴァンガードエンブレムを持つ者だけを通すように命令しておけばいいだろう」
「それでは、ゴチメイの人たちが入れないのでは?」
ちょっと心配そうに、ジーナ・ユキノシタが訊ねた。
「こちらは死角のようであるからな。多分彼女たちは正面突破だろう。時がおしい、急ぐぞ」
「はい。では、ビスマルク、お願いしますね」
ジーナ・ユキノシタはゴーレムに命令すると、ガイアス・ミスファーンの後を追って下へとおりていった。
「話は聞かせてもらった。悪いが、利用させてもらおう」
わずかに遅れてやってきた闇咲 阿童(やみさき・あどう)が、ヴァンガードエンブレムを掲げた。すっと、ゴーレムが道をあける。
「行くぞ、理子」
「はいはい。ちゃんと案内してくれよ」
闇咲阿童にうながされて、大神 理子(おおかみ・りこ)が後に続いた。
「上むいたら、木刀でつつくからね」
「そんなことするか。とにかく、クイーン・ヴァンガードである以上、女王像の欠片は見つけて持って帰るぞ」
「はいはい。頑張って見つけだそうね」
のほほんとした会話が、梯子の下へと消えていく。
「では、私たちも便乗させてもらいましょう」
続いて現れたナナ・ノルデン(なな・のるでん)とズィーベン・ズューデン(ずぃーべん・ずゅーでん)が、そそくさと梯子に近づいた。接近者に、ジーナ・ユキノシタのゴーレムが反応する。
「クイーン・ヴァンガードですの」
ナナ・ノルデンが、ヴァンガードエンブレムを広げるようにしてゴーレムに示した。すぐに反応して、ゴーレムが道をあける。
「へーえ、石の塊なのに賢いもんだよね」
「何をしているんです。急ぎますよ」
感心してゴーレムを見あげるズィーベン・ズューデンを、ナナ・ノルデンが急かした。
★ ★ ★
「さてと、いったいどこに女王像の欠片があるのかしら」
先行した者たちと同様にヴァンガードエンブレムを使って中に入ってきた朝倉 千歳(あさくら・ちとせ)は、銃型ハンドヘルドコンピュータでマッピングを開始しながら周囲を見回した。
「おい、お前たちは何者……ぐっ」
「まあ、海賊を殲滅しつつ進んでいけば、いずれ見つかりますわ」
侵入者を見咎めた海賊を、丸めたパラミタがくしゅうちょうの一突きで気絶させながら、イルマ・レスト(いるま・れすと)が言った。無用な殺生をしないような攻撃というと、こんなものしか思いつかなかったらしい。
★ ★ ★
「こっちはだめだ。迂闊に近づくと落とし穴にはまる。迂回して進んでくれ」
先行していた百々目鬼迅が、大回りして密かに廃墟に近づいてきたココ・カンパーニュたちに穴の中から指示した。如月夜空の作った落とし穴に思いっきりはまってしまって、身動きがとれない状態だ。
「むこうで、芳樹たちが侵入口を見つけていますじゃ。守りが堅いので突入に手間取っていますがの」
「なら、手伝うから待っていてくださいと伝えてください」
ペコ・フラワリーが、玉兎に告げた。
百々目鬼迅の指示通り落とし穴を迂回すると、ココ・カンパーニュたちは、高月芳樹たちの見つけた進入路目指して進んだ。
「あ、来た来た、おーい、こっちこっち」
「おお、本当に来たのう」
「あのー、こちらですよー」
途中で、ヴェルチェ・クライウォルフたち三人がココ・カンパーニュたちを見つけて、廃墟の屋上から声をかけてきた。
「あれは、どう見ても敵ですね。罠かもしれません」
千石朱鷺が、ヴェルチェ・クライウォルフたちをさして言った。
「時間はとられたくない。一気に行こう。こい、エレメント・ブレーカー!!」
ココ・カンパーニュが、突き上げた右手をぐっと眼前に引き下ろした。力強い拳に、ナックルガード型の光条兵器が現れる。
「セット。――ペコ、マサラ!」
携帯電話を結晶体に収めてパートナーとの接続を開いたココ・カンパーニュが、同行するゴチメイ隊の二人に命じた。
「行きますよー」
「どうぞ、御存分に」
鋭く突き出されるエペと、大上段から振り下ろされるフランベルジュから、それぞれ爆炎波がココ・カンパーニュにむかって放たれる。
「アブソーブ!」
星拳エレメント・ブレーカーで二つの爆炎波を吸収したココ・カンパーニュが、拳を構えた。
「えっ!?」
ここにいたって、初めてターゲットが自分たちだと気づいたヴェルチェ・クライウォルフたちがあわててその場から逃げだしていく。
「フレイム・ドライバー!!」
ドラゴンアーツで打ち出された魔法炎が、渦を巻いてヴェルチェ・クライウォルフたちのいた場所を貫いた。壁を粉砕された建物が、崩れ落ちて地面を瓦礫で被う。本当はそこにも地下への入り口があったのだが、瓦礫に隠れて誰も気づかなかった。
「ふう、すっとした」
なんだか一気にストレスが解消したとばかりに、ココ・カンパーニュが気分よく言った。
「これで、敵に存在がばれてしまった気もするが……」
囮の意味がなくなったんじゃないかと土方歳三がつぶやいた。
「細けえことはいいんだよぉ」
「そういうことだ。こそこそしてないで、堂々と裏口突破行くぞ!」
パラ実らしいナガンの台詞にうなずいて、ココ・カンパーニュが叫んだ。裏口に堂々もないものだが。
「何をやっているんだ」
藤原優梨子のしかけたトラップを、ローグとして敏感に感じとって突入しかねている高月芳樹が、突然起こった爆発に呆れて言った。
「みなさんきましたよ」
わいわいとやってくる集団を指して、アメリア・ストークスが告げた。
「まあ、たくさんの人が。これなら、誰か一人ぐらい、細切れになってくれる人がいますよね」
「くっくっ、楽しみだぜ」
ココ・カンパーニュたちがやってきたのを見て、藤原優梨子と宙波蕪之進が楽しそうに言った。
「あそこに入り口があるのは確かなんだが、周囲にはダミー地雷が無数にある。本物が混じっているとも限らないので、迂闊には進めないし、進入路を特定されて、さっきから狙撃されているって状況だ」
「だったら、狙撃できないように援護しながら、建物の中に突入すればいいだけだろ。この人数がいれば楽勝だ」
考えることはないと、匿名某が言った。
「そういうことで、真正面からぶつかるのはお前の役目だ。しっかりな、康之」
トンと、パートナーの背中を押す。
「いや、待ってくれ。どうも、さっきから嫌な予感がして。僕なら、突っ込んでくるのを予想して、絶対罠をしかける」
「困ったですぅ。じゃ、どうすればいいんですぅ」(V)
高月芳樹の言葉に、困ったように神代明日香が訊ねた。
「あのさあ、敵のアジトというか、遺跡って、この真下にあるんだよな」
唐突に、ココ・カンパーニュが訊ねた。
「うん。ねーさまの情報では、廃墟よりも遺跡の方が規模が大きいって」
軽く唇に人差し指を当てて藍玉美海からの情報を思い出しながら、久世沙幸が答えた。
「なら決まりだ。みんな、下がってくれ」
藤原優梨子たちを無視して、ココ・カンパーニュは一同を下がらせた。
「お手伝いしますわ」
佐倉留美がバニッシュを、高村朗がペコ・フラワリーたちとともに轟雷閃をエレメント・ブレーカーに送り込んだ。
「砕け散れ、アース・クラッシュ!!」
ココ・カンパーニュが、自分の足下の大地にむかって、思いっきり拳を叩きつけた。一瞬の地響きとともに、大地に細かい亀裂が無数に走る。
そして、ココ・カンパーニュごと遺跡の天井が抜けた。
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