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リアクション
「まあ、本当に嬉しいわ。ここだとなかなか情報も入らなくて、サン・イ・サク様の次の作品『マリポサ・リリーの花』も、DVDが届くのがいつになるやら、と気を揉んでいたの。あのね、『マリポサ・リリーの花』は白血病のヒロインが実は血の繋がってはいるけれど生き別れた兄、これが、サン・イ・サク様なんだけれど、と、それとは知らず恋に落ちてしまうという悲恋ものなのよ~」
「あ、あの、それは素晴らしいストーリーですが…」
「でも、サン・イ・サク様も素敵だけど、あなた方もとても美男子ねえ、おきれいだわ~、そうだ、写真を一緒にとりましょう!」
「え、ええ!?」
「これでよしと、ささ、笑って、笑って」
中心に婆やを据えて引きつった笑いの美男子三人がピースをさせられている写真が撮れた。
「で、本題なのですが、婆や様…」
少々、毒気を抜かれたようなっている静麻が口を開く。
黒龍に漸麗は出されたお茶を飲み干し、おかわりを婆やが入れているところであった。
「俺たちは、赫夜と真珠…いや、赫夜さんと真珠さんのことについて聞きたいんだ」
そう静麻が切り出すと、婆やの顔色が少し暗くなる。
「真珠様の不登校の件と、『アッサシーナ・ネラ』とかいう、暗殺者のことを言う生徒さんがいらっしゃるようですね…」
「…そこまでご存じでしたか」
黒龍がつぶやく。
「…あなた方は、真珠様と赫夜様のお力になって下さる方、そう信じてお話しいたしましょう…真珠様は本当は次期当主であらせられました。ですが、真珠様のお母様、ルクレツィア様の面影が強い真珠様を現当主、真言様は愛せないのです。真言様はご子息の真一様をルクレツィア様に盗られたような気分でいらっしゃいます」
「そんなことが…」
「真一様とルクレツィア様は事故死され、真珠様が引き取られましたが、非常に体が弱く、剣を持つことさえ恐れ、わなないた真珠様に真言様は冷たく当たりました。そこに真言様のご旧友から、記憶のない赫夜様を紹介され、お気に召した真言様は赫夜様を鍛え上げ、次期当主とすることとしたのです」
「ずいぶんな、話ですね」
穏やかな漸麗が静かに怒りを表す。
「仕方ございません。真言様は藤野家を絶やす訳には参りません。また、正直、見た目が外国人の真珠様よりも、やまとなでしこを思わせる赫夜様のほうが、藤野家の跡取りとしてはふさわしいと判断されたのでしょう。真珠様は真言様に冷たくされていることに悲しみを感じていらっしゃいますし、ご両親と共に事故にあって一人生き残ったことに罪悪感を持ってもいらっしゃいます。そのため、子供の頃から自責の念が強く、そんな真珠様を赫夜様は人一倍、本当の姉のようにしてかばい、愛してこられたのです…ですから、真珠様が蒼空学園に通うことになったとき、私共もそれは喜びました。でも、今もあの通りで…私は真珠様がおかわいそうでたまりません」
「よろしければ、真珠ちゃんのお見舞いがしたいのですが」
漸麗が婆やに願いでる。
「ええ、ええ。ぜひ。もしかすると未だ寝ていらっしゃるかも知れませんが、ご案内します」
四人が揃って部屋をでたところで、アリアについてきていた天穹 虹七が駆け寄ってくる。
「虹七もことちゃんのとこ、いく!」
「虹七ちゃん、駄目よ、大人しくしなきゃ」
アリアが慌ててやってくる。
「漸麗おにいちゃん、虹七が手を引いてあげる!」
と、虹七がぱっと漸麗の手を取る。
「高漸麗、大丈夫か」
黒龍が心配そうに声をかけるが、
「ああ、大丈夫だよ、黒龍くん。虹七ちゃんと僕は『真珠ちゃんへの想い』で繋がっている。ねえ、虹七ちゃん」
「うん! そう、ことちゃんへのおもいでつながってるの!!」
「ごめんなさいね、漸麗さん」
「気にしないで、アリアさん」
「じゃあ、アリア、俺たちもついていくか」
静麻とアリアも婆やに案内されて、二階の真珠の部屋へと上がっていく。
☆ ☆ ☆
剣の対決でやってきた面々は、残る者あり、帰るものありで、ぼちぼち解散となってきた。
「菅野 葉月殿、教えを請いたいなら、またおいでくだされ」
「は、はい!」
葉月とミーナは爺やに挨拶して帰宅する。
爺やはエヴァルトにも「まだまだじゃが、良いものを持っている」と告げた。
クコ・赤嶺(くこ・あかみね)は霜月とともに赫夜を待っていた。稽古から帰ってくる赫夜の姿が見えた。
「お帰りなさい」
「…待っていてくれたのか?」
「ええ。聞きたいことがあって。ねえ、赫夜。ネラと戦ったときの感想を聞きたいんだけど…」
「ネラは、特殊だ。騎士道も武士道も持ち合わせていない」
そう、クコに告げる赫夜は近寄りがたさをかもし出していた。
そんな空気を打ち破ったのは、詩穂だった。
赫夜に詩穂がどーんと抱きついてきて
「アッサシーナ・ネラの仲間に爆発物の使い手がいる様ですが、心配しないで集中して!餅は餅屋に任せて、みんなを守りたいという仲間にソルジャーとかいるから☆ 守りたい者、妹さんのこと、詩穂に全部ぶつけてきて!!」
「あ、ありがとう…」
「すみません、赫夜様」
戸惑う赫夜にさりげなくセルフィーナがフォローを入れて、詩穂をべりっとはがす。
「それではごきげんよう」
セルフィーナがニコニコ笑いながら、詩穂を引きずって帰路についた。
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