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第11章 花見at士道科棟教室


「教室も開放されているそうだ、そちらに行かないか?
 おまえは少し陽射しを避けた方がいい」

 フォルクス・カーネリア(ふぉるくす・かーねりあ)からの申し出に、教室を訪れた和原 樹(なぎはら・いつき)
 窓越しの陽の光が、きらきらと輝いている。

「外でもよかったのに……まぁ、こっちの方が静かでいいけどさ。
 それにしても、葦原城の周りって、ホントに和風な城下町って感じになってるんだな……ところどころなんか違うけど」

 いま樹達は、葦原明倫館で最も高い建物にいる。
 士道科棟の離れには、葦原島の風景を一望できる、物見やぐらの実習棟があるのだ。

「お、桜茶だ♪」
「先日、お前の実家から送られてきた荷物に入っていた。飲むのは初めてだが、よい香りだな」
「ん、うちから荷物来てたのか……急に陽射しを避けろとか言い出したのは手紙で何か言われたからか?」
「いや、何も言われていない。
 うちの子をよろしく、とお前の体調を心配する言葉が添えられてはいたが」
「……言われてるんじゃないか、ついこないだまで忘れてたくせに。
 そんなに気にする必要ないんだけど、夏は少し気をつけないとかなぁ……」

 袋に書いてある淹れ方を参考にして、フォルクスは桜茶を杯へと注ぐ。
 しかし、樹の知らない間に、実家から荷物が届いていたとのこと。
 親の愛をありがたく思いつつ、樹は桜茶を口に含んだ。

「フォルクスは、マスターの親御さんと面識があるんですか?」
「んー親っていうか……家族全員とだな。
 地球で会って、しばらく家にいたからさ」
「そうですか……私はまだマスターの故郷を見たことはありませんけど、いつか行ってみたいです」
「去年の修学旅行で、日本には行ったけど……今年も行くんじゃないか?」
「修学旅行があるんですか……状況が許せば、ひと月くらい滞在したいものです」
「いや、さすがに修学旅行で1箇月は無理だろ。
 あ、でも夏休みならいけるかなー当面は難しいかもだけど」
「……早く情勢が落ち着くといいですね、地球のためにも、こちらのためにも」

 樹とフォルクスのやり取りを聞いていた、セーフェル・ラジエール(せーふぇる・らじえーる)
 好奇心からの質問には、樹が答える。
 返ってきた肯定に、少しだけ淋しくなったり。
 だがまだチャンスがあることを知って、セーフェルは笑顔を取り戻した。

「簡単に作れるものだけつめてきたけど、充分だな。
 あ、桜茶もう1杯くれ」
「今度は私が淹れましょうか……本当に、今日はいい日和ですねぇ」
「近頃は何かと物騒だが、こうやって静かに過ごせる日が続いてほしいものだ」

 弁当を食べ始めた3人は、何にも邪魔されないこののんびりした空間を満喫していた。
 樹のリクエストに、急須を握るセーフェル。
 つぶやいた言の葉には、フォルクスも同意するのであった。