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リアクション
雪だるま王国の面々が船内で捜索を始めた頃。遅れて船上に辿りついたガーディアンナイツたちは敵を船内に入れるまいと待ち構えていた空賊たちと戦闘を繰り広げていた。
「でりゃっ!!」
ガーディアンナイツの橘 恭司(たちばな・きょうじ)は片方に持った女王のソードブレイカーで敵の武器を受けて無効化し、もう片方の手に持った高周波ブレードを素早く振るって敵を斬り刻む。
「ふっ、待ち伏せておいてこの程度とは――」
「なにを!」
恭司の言葉を聞いて敵が躍りかかる。だがそれを簡単にかわし、恭司は敵の背中を蹴り飛ばす。
「ひとりを相手にだらしないですね」
恭司は口元に笑みを浮かべ、蹴り飛ばした空賊を挑発する。
「やろう! みんな袋にしちまえ!!」
そんな恭司の挑発に乗って、空賊たちは一斉に襲い掛かってきた。
それを見た恭司は足を使って、敵をひきつける。
「こっちですよ!」
と、敵のひとりが武器を振り上げて飛び掛ってきた。
「うかつな!」
恭司はそういうとソードブレイカーで敵の攻撃を受け流し、高周波ブレードで敵を斬る。
と、足が止まった恭司を4人の空賊が囲み込んだ。
「へへっ、捕まえたぜ!」
空賊がじりじりと恭司に近寄っていく。恭司は武器を構えて敵の隙を窺う。
と、
「――アチョーっ!!」
「なっ!? うっ、うわあああああッ!!」
怪鳥音が突然響き、空賊の一人が船外へと蹴り飛ばされて空の下へ落ちていった。
空賊たちが驚いて見れば、そこにはミニスカートを翻すポニーテールの女の子・霧雨 透乃(きりさめ・とうの)がポーズを決めて立っていた。
「戦いの最中によそ見はいけませんね!」
相手の隙を見た恭司は、床を蹴って前にいた2人の間まで一気に跳躍。空賊たちがそれに気づいて態勢を整えようとしたが、もう遅い。
恭司の繰り出した鋭い剣撃が2人の体の上を何度も走る。
「――終わりです」
そう言って恭司が剣の動きを止めると、斬り裂かれた2人はその身から鮮血を噴き出してドタドタとその場に倒れ込んだ。
「よし、捕まえたよ。陽子ちゃんと芽美ちゃん」
恭司を囲んでいた4人のうちのひとりを捕まえた透乃は、敵の腕を背中側にねじりあげ、足関節を蹴ってパートナーの緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)と月美 芽美(つきみ・めいみ)の前に跪かせる。
「あだだっ、なにをする気だ!?」
「はい、ブラッティローズさんの居場所をお尋ねしようかと思いまして」
そう言ったのは陽子。だが空賊は苦し紛れの笑みを浮かべて吐き捨てる。
「誰が教えるかよ、クソアマ!」
「そうですか……」
と、陽子の体からおぞましい気配が漂いはじめる。本能で危険を感じた空賊は顔を色を変えた。
畏怖を纏った陽子はじっと空賊の目を見つめる。
「もう一度聞きますよ。ブラッティローズさんはどこですか?」
そう言う陽子の姿が歪む。そして恐ろしい悪魔のような幻覚が空賊の視界の中に広がった。
「言わなければどうなるか……お判りになりますよね?」
地獄の底から響いてくるような陽子の声の問いかけに、空賊は自然とガチガチと奥歯を震わせた。
「わっ、わかった! 言うよ!! 言うって!?」
「あら、本当ですか? それはよかった」
陽子はニコリと笑う。そして空賊からブラッティローズは恐らく艦橋にいるだろうということを空賊から聞き出した。
それを聞いた透乃は空賊の手を放して、他のガーディアンナイツたちにこの事を伝える。
「これでもういいだろ。勘弁してくれ。投降する」
と、芽美が前に踏み出して笑顔を浮かべる。そしてそっとしゃがみ込み手を伸ばすと男の頬に触れた。
「そんなこと言うなんて、陽子ちゃんの尋問が相当怖かったのね? でも……私の方がもっと怖いのよ?」
芽美はそう言うと、頬に触れていた手を動かして男の視界を覆う。
そしてぐっと力を込めて男の目を潰しにかかった。
「うぎゃあああ!!」
空賊は激痛に叫び声を上げ、顔から赤い涙を流す。
「ふふふっ、いいわ。その声!」
芽美はそのまま男を持ち上げて無理矢理立ち上がらせると、拳を握った。
するとその拳から雷電が迸り、殺戮の狂気を纏った一撃が空賊の腹部を突き抜ける。
「ごふ――っ!!」
男は鮮血を吹きだして、がくりと崩れ落ちた。
血に染まった芽美はゾクゾクと背筋を震わせて笑みを浮かべるのだった。
「みんな、ブラッティローズは艦橋にいるみたいだよ!」
霧雨透乃が船上で戦うガーディアンナイツたちに向かって声を張り上げ、手に入れた情報を伝える。
「ボスは艦橋にいるのね、ありがとう!」
それを聞いた秋月 葵(あきづき・あおい)は透乃に向かってそう言った。
「葵さん、行くのですか?」
と、そう訊ねたのはパートナーのニーナ・ノイマン(にーな・のいまん)。
「もちろんだよニーナちゃん。悪いことする人は捕まえなきゃいけないよ」
「わかりました。ですが、艦橋とはどこにあるのでしょうね?」
「うーん、そうだよね。えっと、あたしのトレジャーセンスで相手が身に着けてる宝石を探してみるっていうのはどうかな? 相手はジャラジャラと宝石を身に着けてそうなイメージがあるから見つけられるかも」
「私は葵さんに従いますわ。それでいきましょう」
「うん!」
2人はそう言うと、船内に降りるための梯子に向かって走り出す。
「行かせるかよぉっ!」
と、武器を手にした空賊たちがそんな2人の前に立ち塞がった。
「そこをどいてください!」
ニーナはそう言いながら巨大な槍の光条兵器を生じさせ、敵の手にしていた武器を一斉になぎ払う。
「くっ、くそっ!」
「命までは取りません。ですから邪魔をしないでください」
「へっ、そういうわけにはいかねぇんだ――んっ!?」
武器を失くした空賊たちは素手で殴りかかろうとして足を動かそうと思った。
しかしなぜか足が思ったように動かない。
空賊たちが不思議に思って足元を見れば、自分たちの足が氷に覆われて動けなくなっていた。
「残念ですけど、そこで大人しくしていてください」
と、空賊の足を氷術で凍らせた風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)がそう言った。
「てめぇ! このやろう!?」
空賊たちはなんとか足を動かそうとジタバタ暴れるが、どうにもならない。
「さあ、今のうちに行きましょう!」
「うん!」
そんな空賊たちを後目に、葵、ニーナ、優斗の3人はタラップを降りていく。
「助けてくれてありがとう。あたしは秋月葵。あなたは?」
「僕は風祭優斗です。優斗と呼んで下さい。その、僕もブラッティローズを探しに行こうと思っていたので一緒に行ってもいいですか?」
「もちろんOKだよ、一緒に悪い奴を捕まえよう優斗くん」
「はい、必ずブラッティローズを捕えて美術品を守り抜きましょう」
2人は決意を胸にブラッティローズを探しに向かう。
「船内に3人侵入されちまった! 誰か追いかけてくれ!!」
と、足を凍らされて身動きの取れない空賊たちは仲間たちに向かって声をかけた。
その声に応えて、数人の空賊たちが梯子へ向かう。
だがそんな空賊たちの前に、闇咲 阿童(やみさき・あどう)が立ち塞がった。
「おっと、こっから先は行かせねぇぜ」
「ちっ、どきやがれ!!」
敵のひとりが武器を振りかざして阿童に躍りかかる。
だが阿童はその攻撃を避けようともしない。
「へっ、観念したの――ぐおっ!!」
と、突然攻め込んでいた男が仰向けに倒れた。
「あっ、やった! 当たったよ、お兄ぃ!!」
少し離れた場所から喜びの声をあげるのは、光条兵器から生み出した蒼く光る十字架のスナイパーライフルを手にした後光 葉月(ごこう・はづき)。
彼女が狙撃した弾で空賊は倒れたのだった。
「ふぅ、ちゃんと敵に当たってよかったぜ」
阿童はホッと胸を撫で下ろす。
「てめぇ、よくも!」
と、仲間をやられた敵は葉月に向かっていく。
「あわわっ!?」
葉月は慌ててスナイパーライフルを構えて、敵を迎え撃つ。だが動揺しているためか、弾は敵に当たらない。
「あーんっ! この銃じゃダメだよ! もっといい銃じゃないと敵に当たらないよーっ!!」
葉月が半べそをかきながらそう叫ぶと、阿童の怒声が聞こえてきた。
「バカヤロー、そうやってすぐに銃のせいにするんじゃねぇ!!」
「お兄ぃ!?」
葉月がその声に驚いて前を見れば、いつの間に阿童の背中がそこにあった。
「俺がいることも忘れるんじゃねぇぞ!」
葉月と敵の間に割って入った阿童は生じさせた光条兵器・紅く光る十字架の剣を振り上げる。
「うおおおっ! 食らえッ、爆炎波ァッ!!」
そして振り上げた剣を横一閃に振り下ろし、炎熱の衝撃波を放った。
「ぐわああっ!!」
襲い来た炎の波動に焼かれ、空賊たちは断末魔の叫びを上げてバタバタと倒れる。
「やった、お兄ぃ!」
「喜ぶのはまだ早いぜ葉月」
と、阿童は元々鋭い目つきをさらに鋭くしてそう言った。
そして周りへとその視線を向け、空賊たちがひとりふたりと自分たちの周りに集まってきているのを確認する。
「へっ、上等だ――誰からでも良い! かかってこい!! そのかわり、手加減は一切しないつもりだからな、覚悟しろよ!!!」
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