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空京放送局復旧作業・ダークサイズ新キャラの巻

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空京放送局復旧作業・ダークサイズ新キャラの巻

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 彼女らに復旧作業を手伝う気はあるのだろうか。キャノン姉妹は早速放送局地下にある、社員食堂に入り浸っている。

「社員食堂ですのに、なかなかどうして、居心地がよろしいですわ。局の支配が達成された暁には、ここをいただこうかしら」

 ネネは勝手な算段を立てている。

「さぁーてっ! みんなお仕事ご苦労様! 炊き出しですよ〜。カレーライスにハヤシもあるよっ」

 作業がひと段落した者たちは、続々と食堂に集まってくる。
 ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)イシュタン・ルンクァークォン(いしゅたん・るんかーこん)は、なべぶたとお玉を鳴らして、みんなの食欲を掻き立てる。

「お! カレーかぁ。鉄板だな!」
「あたしはハヤシちょうだい」

 ミルディアが無難に選んだメニューは、評判も上々のようだ。彼女がこしらえた料理をみんなに手渡すのはイシュタンの役割。

「はぁい、どうぞ! おにぃーちゃんっ」

 イシュタンはとびきりの笑顔でカレーを渡す。

(やれやれ、料理を渡すだけだから楽なもんだけど、何より媚を売るってのが大変だぜ。うわ、何だよこいつ。気持ち悪い目でこっち見るなよ)

 イシュタンは本音を隠しながら、にこにこカレーを渡してあげている。

「こりゃうまい! 元気が出るぜ」
「あ、おかわりいかがですかぁ?」
「え、もらえるの? ちょうだい!」

 何だかんだで非常に質の高いイシュタンの接客。くるくるとよく働くイシュタンを見て、ミルディアも嬉しそうな顔をしている。
 次々に食事を終えて、意気揚々と食器を下げに来る。

「ごちそうさま!」
「ありがとう。おいしかったよ」
「今度うちで作ってくんない?」

 復旧作業とはいえ、特別なイベントのときのカレーは格別に美味い。誰しも笑顔で二人に話しかけてくる。

「やったねいしゅたん! みんなの士気も思いっきりアップだよ」

 ここまで喜ばれると思っていなかったイシュタンも、

(こ、こういうのも悪くないな……結構楽しいかも)

 と、みんなの笑顔と自分の活躍に、まんざらでもない様子だ。

「そちらのカレーも上々のようですね」

 と、炊き出しに中華をと、チャーハンを用意した魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)。彼の契約者トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)がダークサイズに入るというので、ついてきた。

「魯粛さんのチャーハンもたくさんはけてたね!」

 ミルディアも彼への賛辞を惜しまない。

「私の本場の味は、一味違いますよ?」

 魯粛も胸を張る。

(トマスは……ダークサイズとかいうのには、無事に入団で来たんでしょうかねぇ……。まあ、見る限り危険ではなさそうな秘密結社のようですが……)

 彼はトマスがうろうろ情報収集しているのを遠目で見守っている。

「炊き出しチーム、お疲れ様でした」

 そこに温和な笑顔で近づいてくる、おにぎりが非常に好評のクロス・クロノス(くろす・くろのす)。彼女の料理の腕は一級である。シンプルなおにぎりと豚汁は、本当においしくするには高いスキルが必要だ。

「これで私も本来の仕事に移ることができます」
「本来の仕事ぉ?」

 ミルディアがきょとんとした眼でクロスを見るが、クロスは口元に手を添える。

「いえ、こちらの話」

(私たちダークサイズの本来の目的。それは取締役が隠し持っている、空京たからくじの当たり券。隠し持っているわけですから、念のためこの食堂をこっそり探ろうと思いましたが……こそこそする必要はないですね)

 今回も作業の参加者の多くはダークサイズメンバー。復旧作業のふりをして、空京たからくじを探しに来たものも多い。何より肝心のキャノン姉妹が、社員食堂に陣取っている。
 クロスはもはや堂々とした足取りで、ネネとモモの元へ向かい、

「秘書チームのクロノスです。やはりさすがに食堂には隠していないようですね」
「作業しながら一応ビル全体を見てみたが、それらしい感じはなかったぜ」

 トマスも話し合いに参加してきて、キャノン姉妹に報告をする。

「そうですわねぇ、やはりカギになるのは」

 ネネは目線をモモに振る。モモはそれに呼応し、

「ええ、お姉さま。あの取締役と秋野 向日葵(あきの・ひまわり)

 トマスは片肘をついて、思案しながら口を開く。

「まあそうだよな。作業には僕たちダークサイズが大量に潜り込んでるっていうのに、顔どころか口も出してこない……」
「すでに向こうは向こうで動いていると考えられますね」

 クロスも同意の意見を出す。トマスはさらに獲得した情報を示す。

「向日葵にも取締役にも、すでに何人かコンタクトを取ってる。そっちで何か動きがあるかもしれない。僕は情報操作ができるかもしれないから、もう少し探ってみよう」
「私も食堂以外も動き回ってみましょう」

(む、何だか今日はまともな打ち合わせなう)

 いつの間にかミヒャエルたちも参加しているが、彼らはあくまで実況に集中するようだ。
 トマスとクロスが席を立とうとしたのを、

「あ、待って待って、その前に」

 宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)が制する。

「これにケータイ番号とメアドね」
「え、なんで?」

 トマスの問いに、祥子が胸を張って答える。

「ダークサイズも大きくなってきた。これから組織的な動きが必要よ。特に今日は。いざって時に集まれないと意味がない! てなわけで、連絡網を作りたいのよ。連絡先が変わったら報告すること。構わないわよね、女子部長さん?」

 祥子はモモに顔を向ける。

「大丈夫だと思いますよ」

 モモはほほ笑む。祥子もにこりと笑って、

「ま、他のメンバーにはだいたい書いてもらったんだけどね」

 祥子はさらに提示する。

「連絡網だから上位者が必要よね。つまり班長的な? 『ダークサイズでやらない課』ってことで」
「勧誘チームみたいな名前だな」

 トマスが口をはさむ。

「ま、何だっていいのよ(組織の内情が把握できれば)。こういうの、デルゲラーが向いてるんじゃない?」

 やらない課の課長にミヒャエルを推す祥子。

「私は今日は実況係なう!」
「じゃあメニエス。『殺らない課』とか」
「面倒くさいわ」

 メニエス・レイン(めにえす・れいん)はメンバーのまとめ係は嫌らしい。

「ま、そんなことより」
「そんなことよりって何よ」

 食って掛かる祥子をよそに、メニエスはネネに進み出る。

「あのダイソウトウといい、あなたたちといい、どうもダークサイズは頼りないわ。せっかくあたしが参加してあげてるのに、こんな様子じゃ到底無理よ」

 メニエスは持参の縄をびしっと引き絞る。一瞬モモのSPたちが反応するが、ネネは彼らを制して乗り出す。

「まあ! あなたが噂の縄縛り教師ですのね」
「あたしをその名で呼ぶなぁっ!」

 メニエスはダークサイズに来ると、どうも調子を狂わされっぱなしだ。

「そういえばお姉さま。以前縛られ願望があると仰ってましたね」
「し、縛られ願望! 意外な性癖ッ」

 ロドリーゴがすかさず掲示板に書き込む。

「まあ、モモさん! 人前でばらさないでくださいな。恥ずかしいわ」

 ネネは頬を赤らめるが、あまり嫌そうな顔ではない。

「メニエスさん、暇そうですから、お姉さまを縛ってあげてください」
「いやよ! 別に暇してるわけじゃないし! 今日はその汚名を返上しに来たのよ」

 メニエスは縄を投げ捨てる。

「うふふふふ……それでしたら、その役目をわたくしめに……」

 と、不気味な笑いで近寄ってくるのは弥涼 総司(いすず・そうじ)
 さすがにネネのSPたちが、総司を制止にかかる。

「貴様! 怪しい奴めっ」
「その気持ち悪い奴、ネネさまから遠ざけろ!」

 SPたちは総司の両脇を固め、引き離そうとするが、

「何を言う無礼者! オレは名誉あるダークサイズ幹部『変態部隊』! オレの変態行動はすなわちダイソウトウの行動! それを押しとどめるって言うのか!」
「ううっ、ダイソウトウ閣下の……」

 真正の変態が発する言葉は、どんなむちゃくちゃな理論でも、SPをたじろがせる圧力がある。

「どうでもいいけど、何であなたたちSPなんかいるの? ダイソウトウなんて一人ぼっちなのに」

 祥子がモモに聞くが、

「彼らは私たちの私設ボディガードです。トウさんを護るのは仕事ではありませんから」

 モモはこともなげに答える。

「ダークサイズ貧乏なのに、何であんたたち金持なのよ。資金提供しなさいよ」
「それとこれとは別の話ですわ」

 メニエスもクレームをつけるが、ネネもそういうとこはドライだ。
 一方総司はにやにやしながらネネに近づく。

「さ、さあネネさん。今オレがこの縄で」
「男に縛られる趣味あありませんわ」

 ネネは食い気味で総司の行動を拒否する。

「で、ではデザートのあんみつを食べさせてあげましょう」
「まあ。あんみつは好きですわ」
「サクランボからいきましょう。こいつはレロレロしながら食うとうまいんです。はい、あーん……」

 総司はスプーンでサクランボをすくい、ネネの口に運ぶ直前で『不慮の事故』を起こす。

「あ、あーっと! サクランボを落としてしまった! サクランボが、いやチェリーがネネさんの胸元に! 完全なる『不慮の事故』だ! これは失礼女子部長様。オレがすぐさま取り除いて、あ、スプーンだと拾いづらい。これはドレスの中に入り込んでしまわぬように、両手でしっかりとすくい上げねば!」
「お色気イベント発生なう!」
「キャノン掲示板も盛り上がっているぞ」
「とりあえず音声だけは流れてるわ」
「エロさは120パーセントね」

 ミヒャエルチームは実況に余念がない。SPたちも、実にうらやましそうな目で見ている。
 総司はすっかりスイッチが入ったようで、

「女子部長という大幹部様に粗相をしたので、この上なく緊張してるぜ、オレ! 冷静にチェリーを取り除かないとネネさんのドレスを汚してしまう! 落ち着かないといけないぜ、オレ! ネネさん、オレは白くてかわいいおっぱいをほおずりすると、とぉ〜っても落ち着くんですフフフフフ」

 総司の目線にはとっくにサクランボはなく、ネネの見事な谷間をとらえている。肝心のネネは、何故か総司を拒否せず泳がせる。
 そこにモモが笑顔でストップをかける。

「変態さん、そろそろやりすぎですよ」
「オレのそばに近寄るなァーッ! 貧乳に用はねえんだぜッ!」

 総司はネネとは打って変わって、モモを指さして睨みつける。それを聞いて固まるネネとSPたち。

「お、おい、あいつ今何て言った……?」
「変態さん、あなたNGワードを仰いましたわね……」
「何がですか、ネネさん? そんなことよりおっぱ……」

がたっ

 と立ち上がるモモ。
 しかし総司は余裕の態度を崩さない。

「なんだぁ〜? やっぱそのワードで切れるタチかぁ? だがッ! 既に予想して対処してあるぜ。お前は磔刑だァーッ!」

 磔でも何でもないのだが、総司は隠し持っていた芋虫の粘液をモモに投げつける。それをまともに食らって、髪からとろとろの液体がしたたる。

「見ろ! お前ごときぺったんにローションをぶっかけても、エロくも何ともない! お前ごとき貧乳にはなァーッ!」
「オラァッ!!」

ドガァッ!!

 直後、一瞬にして吹き飛ばされる総司。
 祥子やメニエスはさすがに驚く。

「そ、総司が吹っ飛んだー!」
「今のは、もしかして『なんとなクラッシュ』!?」

 しかしモモは何もなかったように笑顔に戻り、

「いいえ。ただ単に殴っただけです」
「はは、ははは……」

 一瞬蒼白になる一同。
 離れたキッチンまで飛ばされた総司は、

「ウフウウウ〜……触ってやる……触ってやるぞぉ〜……」

 と、うわごとを繰り返し、変態部隊の活動を全うした。

「さて、時が来れば別働隊から合図が入るはず。お茶しながら待つことにしましょうか」

 モモはにこりとほほ笑んだ。