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空京放送局復旧作業・ダークサイズ新キャラの巻

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空京放送局復旧作業・ダークサイズ新キャラの巻

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「ビルのお掃除って大変だねー」

 放送局の四階を、掃除道具を抱えて歩く久世 沙幸(くぜ・さゆき)。彼女は他の人と行動をともにせず、一人で一階から隅々まで掃除をして回っていた。

「うーん、ないな〜……ここにもない」

 と、こっそり何かを探している様子の沙幸。

「ないなー」
「ないねー。当たり券〜」
「うん、当たり、はっ! 誰っ!」

 沙幸が声に驚いてその方を向くと、いつの間にか一緒になって鏡 氷雨(かがみ・ひさめ)もキョロキョロしている。

「び、びっくりしたぁ!」

 沙幸が目を白黒させていると、氷雨がさらに尋ねる。

「ねえねえ、お姉ちゃんも当たり券探してるのぉ?」

 ぎくりとする沙幸。

「え、ええ〜っと、べ、別に探してないよ。私はあくまでお掃除係で、別に当たり券なんて」
「ボクね、当たり券探してるんだよぉ。みんなと一緒に探してたら、はぐれちゃったの……」

 氷雨は一人きりになった寂しさを思い出し、涙目になってくる。

「わ! ほら、よしよし。あ、じゃ、じゃあ! 私も一緒に探してあげる!」

 沙幸は氷雨のおかげで、当たり券を探す大義名分を得る。

「えー! ほんとぉ? やったぁ〜。当たり券見つけたら、ダイソウトウさんに褒めてもらえるかなぁ」
「え? 君はダークサイズ?」

 氷雨は胸を張り、

「えへん! ボク、ダークサイズの幹部なんだよぉ」
「へ、へえ〜。じゃあ当たり券見つけたら、ダイソウトウにあげるの?」
「もっちろん! えらいえらいって褒めてもらうの」

(やったー! この子がいれば、ダークサイズにくじが渡って、ダークサイドもなくならないで済むっ)

 嬉しそうな顔をする沙幸を見て、氷雨は、

「おねーちゃんもダークサイズ入るぅ?」
「え、え? わ、私はそんな悪の秘密結社なんて入らないもん! 私は正義の味方だからっ!」

 沙幸は慌てて否定する。
 氷雨は人差し指を口に当て、

「ん〜、じゃあ『ごえつどうしゅう』だねー」
「あ、そうだね。難しい言葉知ってるんだね」
「えへん! だって、『じゅーきゅーさい』だもん」

(と、年上だったー!)

 てっきり氷雨を子供だと思っていて、ショックな沙幸。

「ねえねえ、おねーちゃんも一緒に『だーくさいっ!』ってやるー?」
「や、やらないわよっ、そんなのっ」

 氷雨の唐突なフリに、反射的に拒否してしまった沙幸。

「そっかー。じゃあボク一人でやろっと。じーくだーくさいっ!」

(し、しまったー! やってみたかったー!)

 今更やっぱりやってみたいとは言えず、落ち込む沙幸。

「むっ! ダークサイズがいるのですかっ!?」

 氷雨のダークサイズコールを聞きつけて、クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)がダッシュで走ってくる。

「ふっふっふ! 空京たからくじの『俺の』当たり券は、あなたたちには渡しませんよ!」

 クロセルは氷雨と沙幸に胸を張って偉そうに対峙する。

「おじちゃんも当たり券探してるの?」

 という氷雨の質問に、さっと顔が青ざめるクロセル。

「お、お、おじちゃんですって! 失敬な! お茶の間の仮面ヒーロー、クロセルに向かって!」
「クロセルも当たり券探しに来たの?」

 秋野向日葵誘拐事件の際、同じ向日葵救出組として、彼をぼんやり覚えていた沙幸は、クロセルに歩み寄る。

「まあそういうことです。空京たからくじが裏で操作されていたとは、どーりでいつも当たらないと思っ、いや、人々の夢を食い物にするとは! ヒーローとして断じて許せないことです。俺が当たり券を見つけて、取締役を摘発してやるのです!」
「じゃあ一緒にさがそー。『ごえつどうしゅう』だよ」

 と、何かの縁で一緒に行動することにした三人。
 もちろん三人とも本気で当たり券を探しているのだが、悲しいかな単独行動をとってしまったため、別の階の動きを知る由もないのであった。
 そのまま三人で四階をうろうろしていると、放送局の番組が製作される、スタジオの前を通りかかる。

「あ、わあ! スタジオだー!」

 まず食いつくのは沙幸。
 彼女はガラス越しに中の様子を窺うが、

「ちぇ、いないや……」

 と呟いてガラスから離れる。

「ほほう、ここであのダークサイズの暗黒電波が発信されるわけですね」
「わぁ。ひろーい」

 と、クロセルと氷雨はすんなりスタジオに入って中を見渡す。

「え、ええー! 入って大丈夫なの!?」
「さあ」
「お、怒られるよー」

 と、沙幸がわたわたしているところに、

「おはようござ、あれ、どなた?」

 番組の収録にやってきた、ハッチャンとクマチャンが現れる。

(ほ、本物だー!)

 突然ドキドキしてくる沙幸。
 それに対してハッチャンが、

「あ、ええと、見学か何かの方?」

 と聞くが、沙幸は反射的に、

「ち、違うもん! 誰がダークサイズの見学なんか!」
「あ、そうですか」

 と、二人はスタジオに入っていく。

(見学してみたかったー……)

 沙幸はガクリと膝をつく。しかし沙幸はふと言い訳を閃いて立ち上がり、スタジオに入ってくる。

「やっぱり見学の方?」

 と聞くハッチャンに、

「も、もしかしたらここに当たり券があるかもしれないからね……」
「当たり券?」

 言い訳する沙幸だが、

(何か今日の私、ツンデレみたいになってるなー……)

 と腕を組む。
 ハッチャンクマチャンが収録の準備をしていると、ブースのドアが開き、中から騎沙良 詩穂(きさら・しほ)が出てくる。

「あーっ! どうもどうもー!」

 と、詩穂はつかつかと二人に歩み寄り、強引に握手をする。

「今日は練習を兼ねて、お仕事ご一緒させていただきますね!」
「は、はい?」

 ダークサイズの二人は目を丸くし、直後、こないだいじられまくった悪夢を思い出す。

「ええええ! ちょっと待って! マジで聞いてないから!」
「言ってませんもん」
「これってこないだみたいにひどい目に会うパターン!?」
「ひどい目? あはは、まさか! 詩穂も今日から『芸能人結社』ダークサイズの一員です。」
「げ、芸能人結社?」

 詩穂はどうも、ダークサイズを間違って認識しているようだ。

「詩穂だって芸能人のはしくれです。今日は芸人部門のお二人から、エンターテイメントを学びに来ました」
「いや、芸人じゃねえよ!」

 ハッチャンの反論に、詩穂はさらに目をキラキラさせて、

「ほら、今のツッコミ! 芸人じゃなくて何なんですかぁ。今日はコラボして番組を……」

 と、詩穂が話を進めようとすると、

がちゃり

 と、別のブースから小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が出てくる。

「あ! 来たわね、ダークサイズッ!」

 と二人を指さす美羽を見て、

「ぎゃー! 出たー!!」

 と以前タコ殴りにされたトラウマを思い出し、悲鳴を上げるハッチャンクマチャン。

「ちょっと! 人をお化けみたいに言わないでよね!」
「へえ、彼らがダークサイズか……」

 二人にずんずん近寄る美羽と、興味深げに見ているコハク。

「何だよ! 殴るだけで飽き足らず、ついに俺たちを殺しに来たのかっ」

 震えながら後ずさるハッチャンクマチャン。

「な、何よ、失礼ね! こないだブースを壊したのは、私の責任もあるから、わざわざ復旧の手伝いに来てあげたのよ! ほら、ちゃんと全てのブースを直してあげたんだからね」
「へ、あ、そうなの?」
「そうよ。ほら、配線もすべて済ませてあるから、パラボラが復旧すれば、すぐにでも放送できるはずよ」
「は、はあ。そりゃどうも……」

 と、二人はブースに入ろうとする。

「あ、ちょっと待ちなさい!」

 美羽は慌てて二人を止める。

「え、今度は何?」

 コハクが別ブースのドアを開け、

「ダークサイドのブースはこっち」

 と、二人を促す。
 言われるがままそのブースに入ってみると、中はミカン箱の椅子に段ボールのテーブル。さらにマイクは旧式の、廃棄直前のもの。

「なんじゃこりゃー!」
「さ、さすがに可哀そうだから、椅子はちゃんと用意してあげたわ」
「全然ちゃんとじゃねえ!」
「しかたないじゃない。これしかなかったんだから」
「そんなわけないだろ! こっちのブース、超豪華じゃん!」

 と、ハッチャンはもう一つのブースを指さす。

「そっちはりかまる用なの! あんたたちのそこそこ面白いトークなんてどうでもいいのよ! エースはりかまるなのっ!」
「段ボールかよ……」
「逆にミカン箱なんてよく見つけてきたな……」
「じゃあ、はい」

 と、コハクが二人に厚めの座布団を手渡す。
 さらに詩穂も乗り出してきて、緊張気味に言う。

「じ、じゃあ、もうすぐパラボラも復旧するらしいし、今日はダークサイズと秋葉原四十八星華のコラボ番組ってことで」
「うーん、まあうちもゲストトーク番組だからいいけど、番組台本は?」
「……え?」
「いや、番組の内容、どうするの?」
「え、え〜っと……」

……。

「決めとけよっ!!」