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KICK THE CAN2! ~In Summer~

リアクション公開中!

KICK THE CAN2! ~In Summer~
KICK THE CAN2! ~In Summer~ KICK THE CAN2! ~In Summer~

リアクション


・そういうゲームじゃねーから、これ!


 缶が一つ蹴られたが、それで攻撃側が有利になるわけではない。
 エリアが一つ減るわけだから、守りの人数が増えるのである。しかも自由に動ける人員が。
 だからこそ、その守備をいかに封じるかも重要となってくる。
(缶はどこですかね〜?)
 神代 明日香(かみしろ・あすか)は西と南の境目付近で缶を探しに行こうとしていた。
 だが、彼女の目の前飛び込んできたのはカニの甲羅だった。しかも物凄い勢いで飛んでくる。
 その正体はバルト・ロドリクス(ばると・ろどりくす)である。
 彼は加速ブースターを吹かし、前に躍り出るものを全て轢こうとしているらしい。
 とはいえ、なぜカニなのか、その理由は分からない。本人も、もう考えることを放棄しているようだが何があったのだろうか。
「突っ込んできても無駄ですぅ」
 空飛ぶ魔法で、軽く舞い上がり、あっさりと避ける。
 そして上空からサンダーブラストを放った。
「!!!」
 モロに電撃を喰らい、感電する。
 明日香から見たらなんだかよく分からないカニであったが、動かなくなったのを確認し移動を開始する。

            * * *

「お、敵さんあっちにいるみたいだぜ!」
 魄喰 迫(はくはみの・はく)が攻撃側の気配を察知した。
 ちょうど西エリアの缶が倒されたため、移動してくるものは多い。ここで、西の守備と協力して挟み撃ちにしようと動く。
「お出ましですか」
 気配の主は牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)だ。
 迫の連絡を受け、マッシュ・ザ・ペトリファイアー(まっしゅ・ざぺとりふぁいあー)がアルコリアの足止めをしようとする。
 そして、魔法少女三人が彼女の前に出て、前口上を叫ぶ。そして、
「この世の悪を守る為、地底のザナドゥからはるばるやって来た魔界の天使! 悪を虐める正義の味方は私が絶対許さない!」
 ばっちり決めるシャノン。だが、その内は羞恥心の塊だろう。
 しかも、背後からは東園寺 雄軒(とうえんじ・ゆうけん)ミスティーア・シャルレント(みすてぃーあ・しゃるれんと)の二人がカメラを構えている。前に攻撃側がいるから振り返らないが、見えない以上間違いなく撮られていることだろう。
「あら、随分かわいらしいですね」
 至って冷静なアルコリア。別に魔法少女が現れたからといって動じる要素はなかった。
「さーて、たくさん吸い込んで動けなくなってもらうにゃん!」
 しびれ粉をサイコキネシスで操作し、直接彼女に吸わせようとする。しかし、どうやら吸い込みはしなかったようだ。
 もっとも、多少動きが鈍くなったところで、あまり変わらない。
 地獄の天使でアルコリアが空を飛ぶ。
「逃がしはしない!」
 今度はシャノンが飛ぶ彼女に対し、シューティングスターを放つ。
「ふふ……」
 三体一、常に魔法少女達の側にいる二人を合わせれば五体一の状況にも関わらず、三人は相手のアボミネーションのせいで一瞬躊躇う。
 だが、このままみすみす逃がすわけにはいかない。
 空飛ぶ魔法持ちのシャノンが黒壇の砂時計を使い、一気にタッチしようと近付く。それをブリザードが阻んだ。
 ナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)によるものだ。
 実質五体二となる。
「逃がさん!」
 それでも、向かってるシャノンに対してペトリファイを使うが、石化は失敗する。そのため、アシッドミストを繰り出した。
 その直後、彼女は攻撃の気配を察知して一歩だけ引いた。それ以上はいけないようにと、雄軒とミスティーアが氷術で壁を作ろうとするが、
「お姉さま!」
 攻撃の気配を察知したミスティーアが咄嗟にシャノンを庇う。
 霧の中にサンダーブラストが繰り出され、それをまともに浴びてしまう。
「誰です!?」
 雄軒が周囲を見渡す。真上を見上げた瞬間、
「――ッ!!」
 またもやサンダーブラスト。そこには明日香がいた。
 直撃は避けたが、それでもダメージは追っている。
「雷ですか……ですが、この身が例え焼かれようとも、このカメラだけは絶対!」
 と、考えている隙にまたもや雷が降り注ぐ。
「マイロード、今のうちですわ」
 その間に、守備から距離を取ろうとするアルコリアとナコト。
「逃がさないにゃん!」
 マッシュがその身を蝕む妄執で幻覚を見せようとする。
 しかし、
「残念でした」
 と、効かなかった。彼女は博識、肉体の完成、そしてユニフォームの下にリーブラランジェリーと、三段構えで状態異常対策をしていたのだ。
「にゃん、身体が……!」
 今度はマッシュの身体が石化していく。逆に相手から妄執を食らったかと思いきや……
「現実でしたー」
「にゃ、そんにゃあああああ!!!」
 まさか自分が石にされるなどとは夢にも思わなかっただろう。状態異常対策を彼はしていなかったのだ。
「マッシュ!」
 これで三対三である。
 なぜか缶蹴りのはずが、ここにいる攻撃側の三人の狙いが缶ではなく守備の殲滅なように見えるが、おそらく気のせいだろう。
 逃げるのに「やむをえず」魔法を使ってしまったのだ。武器の直接攻撃ではないし、結界の力もあるから命に別状はない……はずである。
 その時、雷を避け続けていた雄軒が、手に持っているデジカメを手からこぼしてしまう。
「しまった!」
 中のメモリーカードが無事なら問題はない。しかし、それ以上にそのカメラをどうにかしたい者が一人いる。
「チャンスだ!!」
 自分の恥ずかしい姿が収められたそれを取り上げようと、シャノンもまた手を伸ばす。
「もう、埒が明かないですぅ!」
 なかなかサンダーブラストが当たらないためか、明日香が禁じられた言葉で魔力をブーストし、さらに持ち込み武器である転経杖を回して、

 さーちあんどですとろい

 もう見つけてはいるが、一気に炎で焼き上げる。もはや威力的にはきるぜむおーる出来そうなものだが、武器で攻撃したわけではないので反則にはならないようだ。

「缶蹴りでここまでするか、普通? って姉さんもマッシュも置いてきちった」
 なんとか唯一離脱した迫であったが、自分に問いかけずにはいられなかった。
「……なんであたしが逃げてんだ? 逆じゃね?」